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世界経済の減速懸念・・・米国経済の先行きを示すベンチマークとは?

2020/3/10
提供:SBIリクイディティ・マーケット社

2月雇用統計結果

  9 10 11 12 1 2
非農業部門 雇用者数(万人) 19.3 15.2 26.1 18.4 27.3 27.3
失業率(%) 3.5 3.6 3.5 3.5 3.6 3.5
時間給賃金 前月比(%) 0.0 0.4 0.3 0.1 0.2 0.3
時間給賃金 前年比(%) 3.0 3.2 3.1 3.0 3.1 3.0
  • ※出所:SBIリクイディティ・マーケット

先行きの不透明感が不安心理を増幅

3/6に発表された米2月雇用統計は、市場予想を上回り、米労働市場の堅調地合いが継続していることを確認する結果となりました。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響が現れる前の数値ということで、予想を上回る良好な数値でもドルの買い戻しの起爆剤とはならず、NY株式市場の反発につながることもありませんでした。

また、大手米系証券が4-6月期にブレント原油価格予想を30ドルに引き下げ、一時的に1バレル=20ドル近くまで急落の可能性を指摘するレポートを配信したことも、ウイルス感染拡大による世界経済の減速懸念を高めることとなりました。

さらに、NY株式先物の下落や米債券先物市場での長期金利の低下が嫌気されたことも円高の加速につながりました。先週末には、NY州がカリフォルニア州やメリーランド州に次いで非常事態宣言を発令、感染者の拡大が欧米を中心に続いていることも嫌気されています。

週明けの早朝から非OPEC諸国との減産協調が決まらないほか、サウジアラビアの報復もあり、原油価格が暴落していることもリスク回避の動きに拍車を掛けた要因となる中、日経平均株価も一時1,000円を上回る水準まで下落し、昨年1/7以来1年2ヵ月ぶりの2万円割れまで下落しました。

米国や欧州各国でのウイルス感染拡大に歯止めが掛かるか、米経済の影響がどの程度まで深刻化するのか、先行きの不透明感が不安心理を増幅しています。

危機対応に対する協調姿勢が見られるか!?

こうした中、3/2に発表された米2月ISM製造業景況指数も昨年7月以来、6ヵ月ぶりに好不況の節目とされる50.0を回復した前月1月に続き、2ヵ月連続で50.0を上回りました。しかし、内訳を見ると、2月の数値が集計された時点で既に米国経済への悪影響を示すいくつかの警戒すべき実情が内訳の数値から見てとることができます。

まず、雇用統計でも明らかなように内訳の雇用指数は上昇した一方、生産、新規受注、在庫の低下が明らかになりました。

さらに、50.0を上回ると入荷が遅れていることを示す入荷遅延指数が57.3に上昇(前月52.9)し、2018年以来の高水準となり、新型ウイルスよる中国サプライチェーンの混乱している影響がこうした数値に表れているようです。

こうした中国からの部品供給の影響により、輸入指数は2009年以来11年ぶりの低水準となる42.6 へ低下、前月からの落ち込み幅は過去最大となりました。

  • ※出所:SBIリクイディティ・マーケット

今後4月に発表される3月IMS製造業景況指数がどこまで落ち込むのか、さらに、輸入指数や入荷遅延指数と合わせて4月、5月の数値で底入れが確認できるのかが、米国経済の先行きを示すベンチマークの一つとして注目されます。

こうした中、市場ではFRBが来週のFOMCで0.50%の利下げを決定すると見られています。先週末の米債券市場では10年債利回りが一時0.66%台へ低下し、政策金利と10年債利回りが逆ザヤの状況が深堀りされたこともNY株式市場の下落が続いている一因との見方もあり、少なくとも逆ザヤ解消まではNY株式市場の軟調が続くと見られ、ドル円は一段と下押しを強める可能性があると見られています。

さらに、FOMCでは、利下げのほかFRBが社債の買い入れに踏み込むか否かが、焦点の一つとして注目する声も聞かれます。ウイルス感染拡大の影響で米企業の資金繰りが問題視される前に、FRBが先手を打ち社債購入に踏み込めばNY株式市場の反発につながる可能性もあるかもしれません。

FRBをはじめ、今週のECB理事会、来週の日銀政策会合、主要各国の中央銀行および政府による財政刺激策も含め、各国で今回の危機対応に対する協調姿勢が見られるか注目されます。

非農業部門雇用者数(万人)の推移

  • ※出所:米労働局

米時間給賃金(%)の推移

  • ※出所:米労働局

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