相次ぐ利下げ観測
先週1/16に、トルコ中銀は12.0%の政策金利を0.75%引下げ11.25%としたほか、南ア中銀政策委員会でも、国営電力会社による計画停電の影響による経済の下振れが懸念される中、6.50%の政策金利を0.25%引下げ6.25%としました。
今週は、1/21に日銀政策会合、翌1/22にカナダ中銀、1/23にECB理事会やノルウェー中銀政策委員会と続きます。翌週1/29にはFOMC、1/30に英中銀政策委員会が控えているほか、2/4には豪中銀政策委員会が控えており、今週1/23に発表される豪12月雇用統計が豪中銀の追加利下げを決定的なものにするか注目されます。
1/22のカナダ中銀政策委員会では、一昨年10月から続く1.75%の政策金利を据え置くと見られています。昨年12月の委員会では、貿易問題が最大のリスクであるとの認識を示した一方、7−9月期のカナダ経済は個人消費の緩やかな拡大や住宅投資の堅調に支えられ緩やかな成長を確認しており、今年末まで政策金利を据え置くと見られています。
さらに、1/23のECB理事会に関しては、昨年12月にラガルドECB総裁がECBの物価目標の枠組みを見直す意向を明らかにしたこともあり、インフレ率の低下にどのように対処するのか、さらにはインフレ目標の達成を厳密にせず、敢えて「のりしろ」を持たせるかを検討課題としており、こうした点について発言があるか注目されます。
来週1/29のFOMCでは、現状の金融政策を当面維持すると見られる一方、1/30の英中銀政策委員会の利下げ確率が70%近くまで上昇するなど、既に利下げはほぼ確実視される状況です。1/13に発表された英11月GDPが前年比+0.6%と7年ぶりの低成長となったほか、1/15に発表された英12月消費者物価指数は前年比+1.3%と市場予想(+1.5%)を下回ったほか、コア指数も前年比+1.4%と市場予想(+1.7%)を下回り、2016年11月以来、およそ3年ぶりの低水準まで低下しました。さらに、1/17に発表された英12月小売売上高も3ヵ月連続で前月比マイナスとなるなど冴えない結果となりました。
また、英中銀カーニー総裁や一部の英中銀政策委員が利下げの可能性に言及したほか、英中銀政策委員の一人であるブリハ委員が英経済の成長に関する指標に早期かつ著しい改善が見られなければ、1/30の政策会合で利下げ票を投じる意向を明らかにしており、利下げが織り込まれつつあります。1/15には前回の政策委員会で利下げに票を投じたソーンダース委員が、目標を下回る低インフレの長期化を避ける為の景気刺激策が必要と利下げの必要性に言及しました。今週から来週にかけて、各国の政策委員会の動向、為替市場にも大きな動きが見られる可能性があり注目されます。
こうした中で、1/17に発表された中国10-12月期GDP成長率は前年比+6.0%、2019年通年では6.1%と29年ぶりの低水準となりました。一方、12月鉱工業生産は前年比+6.9%、12月小売売上高は前年比+8.0%と、市場予想の+5.9%、+7.9%をそれぞれ上回った安心感を背景に豪ドルが買われる場面が見られ、76円16銭まで反発したものの、1/16の高値(76円24銭)を更新するには至らず、76円台前半での利益確定売りに押され反落しました。
注目は豪12月雇用統計
現状0.75%の豪政策金利について、昨年11月以降、本格化した大規模な森林火災による豪経済の下振れが懸念されています。先週末時点での金利先物市場では2/4の豪中銀政策委員会での利下げを50%超織り込んでおり、豪ドルを積極的に買える状況とは言い難く、先週末のNY市場では75円70銭まで下落するなど、あらためて76円台前半からの上値の重い値動きを確認しています。
こうした中で、1/23に発表される豪12月雇用統計は、2/4の利下げの可能性を決定付けることになるかを見極める重要な指標となることから注目されます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
豪12月雇用統計、失業率は5.2%と前月と変わらない予想となっている一方、就業者数は前月の3.99万人増から1.5人増へと鈍化する予想となっています。
また、前月3.99万人増となった内訳では、フルタイム就業者数が0.42万人増、パートタイマーが3.57万人増とフルタイム就業者数が伸び悩んだこともあり、今回の雇用統計では大規模な森林火災の労働市場への影響がどの程度見られるかが注目されます。予想以上の鈍化となれば、2月の追加利下げ観測が高まり、豪ドル円は1/13の安値(75円49銭)や1/10の安値(75円01銭)、さらには日足・転換線(75円00銭)が下値メドとして意識される水準への下落に注意する必要があるかもしれません。
ドル円が110円台を固めつつある中、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などクロス円の動向次第では、ドル円の110円割れ、もしくは110円台半ばを上抜ける可能性もあり、各国中銀の政策委員会による主要通貨の対ドル、対円の動向が注目されます。