冴えないユーロ圏の経済指標
11/22に発表されたドイツやユーロ圏の11月製造業PMIはいずれも予想を上回った一方、サービス業PMIはドイツ、ユーロ圏ともに予想を下回り、冴えない結果となりました。
さらに、ユーロ圏総合PMIが50.3へ低下するなど、前月に見られた底打ちへの期待感から再び先行きへの減速懸念が再燃したことも、ユーロ売りにつながる一因となりました。
ユーロ圏総合PMIの悪化は、スペイン総選挙を受けて政治的な不透明感による影響などドイツやフランスなどの主要国以上に周辺国の悪化が影響している可能性もあり、今後発表される指標にも注意する必要があるかもしれません。
こうした結果を受けて、市場の一部からはユーロ圏の2020年の成長率が過去の平均である1.0%〜1.1%を下回る可能性があり、年間を通じて0.9%もしくは、更なる低成長に陥るかもしれないといった見方も聞かれています。
今回の製造業PMIでも、フランスの製造業PMIは51.6、これに対し、ドイツ製造業PMIは43.8と大きく差が広がっていることが明らかとなりました。これは、ドイツのGDPに占める輸出比率が高いこと、中でも中国向けの自動車関連輸出が多いことが影響したと見られます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
ユーロの下振れリスクに警戒
ラガルドECB総裁は講演の中で、内需主導の景気回復にとって金融緩和政策は有効であると発言し、前ドラギ総裁の考えを継承するハト派路線が明らかとなりました。
一方、ドラギ前ECB総裁との対比で目についたのが、緩和政策への副作用について言及した点や、新たなポリシーミックスの可能性を示唆したことです。
ドイツ連銀のバイトマン総裁も、金融政策のレビューの必要性について発言したほか、ドイツのシュルツ財務相からも、2020年に100億ユーロのグリーンボンド(環境問題に関する事業に使用使途を限定した資金調達する債券)発行への言及がありました。
しかし、ドイツの労働市場は堅調に推移していることもあり、ドイツ国内で財政出動を求める声はさほど大きくないと見られています。加えて、債務増加分をGDP比で抑制する取り決めのほか、地方政府との調整が必要なため、財政出動は容易ではないとの見方も聞かれます。
むしろ、ドイツの製造業の中心である自動車産業の環境規制や新たな技術開発などの構造改革の必要性が強調される可能性もあるかもしれません。構造転換を図っていくことができるか、今後のドイツ経済の行方を左右する大きな課題かもしれません。
先週末に、ラガルドECB理事が緩和政策の副作用や新たなポリシーミックスに言及したことを受けて、12月ECB理事会での追加緩和は見送られると見られています。
一方で、緩和政策による景気回復が最も有効との見方もあり、今後発表されるドイツ11月IFO企業景況感指数(11/25)、ドイツ11月消費者物価指数(11/28)、ドイツ10月小売売上高、11月失業率(11/29)、ユーロ圏10月失業率や11月消費者物価指数(11/29)、さらには12/5に発表されるユーロ圏7-9月期GDP確報値や12/6に発表されるドイツ10月鉱工業生産など、12/12のECB理事会に向けた今後の経済指標が注目されます。
ユーロは、対ドルで10/1の安値(1.0879ドル)を下値に、10/21に1.1180ドルへ反発後の調整を経て、10/31に1.1175ドルへ再度反発したものの、10/21の高値を更新することができなかったことでダブル・トップの形状となり、11/14には1.0989ドルへ下落しました。
その後、11/21には1.1097ドルへ反発したものの、1.1100ドル台へは回復しないまま、日足・基準線(1.1084ドル)を上値抵抗線とする上値の重い値動きを経て、11/22には1.1015ドル、さらに11/25の東京市場では1.1013ドルへ下落し、一目均衡・日足・雲下限(1.1047ドル)や日足・転換線(1.1043ドル)を下回る値動きとなっています。
11/14の安値1.0989ドルを下回り、一段と下げ足を加速するのか、今後のドイツやユーロ圏の経済指標のほか、12/12のECB理事会に向けたユーロの下振れリスクには注意が必要かもしれません。