10月雇用統計結果
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
非農業部門 雇用者数(万人) | 6.2 | 17.8 | 16.6 | 21.9 | 18.0 | 12.8 |
失業率(%) | 3.6 | 3.7 | 3.7 | 3.7 | 3.5 | 3.6 |
時間給賃金 前月比(%) | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.0 | 0.3 |
時間給賃金 前年比(%) | 3.1 | 3.1 | 3.3 | 3.2 | 3.0 | 3.0 |
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
先週のFOMCでは、市場予想通り政策金利を7月、9月に続き今年3度目となる0.25%の引き下げを決定、政策金利の誘導目標を1.50%〜1.75%としました。
さらに、声明文からは従来から見られた「適切に行動する」との文言が削除され、「適切な政策金利の道筋を精査する」との文言が新たに加わりました。
こうした文言からは、かなり明確な景気後退などのサプライズがない限り、一時的にせよ利下げは休止される可能性を示唆したとの解釈も聞かれています。
パウエルFRB議長の会見からも、現状の金利水準に満足していることが示唆され、9月FOMCで追加利下げを決定した際以上にタカ派的な内容との見方が大勢となりました。
また、パウエルFRB議長は会見で、
・現行の政策は緩和的であるとの考えを明らかに
・労働市場の変調、金融市場への変調の兆しが顕在化しない限り、追加緩和検討はない
・インフレ率やインフレ期待の上昇を確認するまで、一連の利下げの巻戻しもない
と発言、FOMCの会見時点で既に雇用統計の発表を前に統計データを確認していたかと思われるほど好調な雇用統計となりました。
元々、雇用統計の前に発表されるADP雇用統計は、10月全体の民間の数値を集計するのに対し、雇用統計は毎月12日を起点とした1週間の数値を集計して算出されるだけに、両者の数値には多少の振れがある中、ADP雇用統計では12.5万人増と予想を上回りました。一方、9月分は速報値の13.5万人増から9.3万人増へ下方修正されていました。
加えて、大手自動車ゼネラルモーターズのストライキ参加による減少が4.6万人〜4.9万人ほど見込まれていた(実際は4.2万人)ほか、国勢調査などに携わっていた政府系の臨時雇用分の減少も予想されていたことから、警戒感をもって雇用統計を待つことになりました。
しかし、結果は予想を上回る12.8万人増、さらに、9月分が速報値から4.4万人増、8月分も5.1万人増と2ヵ月間で9.5万人もの上方修正となりました。失業率も、前月におよそ50年ぶりの低水準となった3.5%から3.6%へ小幅に上昇したものの、労働参加率が2013年8月以来の高水準となる63.3%を記録、失業率は引き続き低水準を維持、好調な米労働市場を改めて確認することとなりました。米国経済は、FRBによる緩和政策に頼らなくとも、好調な労働市場や個人消費にサポートされ、当面の間、FRBの金融政策は現状の水準で維持されるだろうとの見方が大勢となりました。
利下げもなければ利上げもない、加えて、米中通商交渉を巡る閣僚級による電話会談での進展期待に加え、11/4にはロス米商務長官が中国通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置緩和を示唆する発言も聞かれるなど、トランプ政権による12月の対中制裁関税の先送り、もしくは凍結の可能性も踏まえ、NY株式市場はリスク選好の中、ダウ、ナスダック、S&Pは揃って市場最高値を更新して11/4の取引を終了しました。
非農業部門雇用者数(万人)の推移
- ※出所:米労働局
主要三指数は揃って史上最高値を更新
これまで、米雇用統計が堅調であった場合に、FRBの緩和観測の後退につながり、NY株式市場は低下、もしくは伸び悩むという傾向が続いていましたが、雇用統計結果を受けた11/1のNY株式市場では、ナスダックとS&Pが史上最高値を更新しました。さらに、堅調な流れは週明け11/4も継続、ダウも併せて主要三指数は揃って史上最高値を更新しました。トランプ大統領による利下げ催促発言もトーンダウンしています。さらに、2年債利回りも1.58%へ上昇、政策金利の誘導目標である1.50%〜1.75%の中に納まる水準となりました。
極端な見方をすれば、今後2年間、FRBの政策金利は大きく動くことはないということを示したといえるかもしれません。それだけに、利下げもなければ利上げもない中で、株式市場の堅調が続くのであれば、個人消費の支援材料につながることから、好循環が期待されると見方も株式市場の支援要因の一つになったと思われます。
しかし、トランプ政権による減税などの政策効果の息切れなど懸念材料がないわけでなく、今後の経済指標次第では状況が一変するリスクを払拭できていない状況です。
11/1に発表された米10月ISM製造業景況指数は、8月以降3ヵ月連続で好不況の節目とされる50.0割れとなりました。市場では底打ちが近いとの楽観的な見方によって、一時的な反応に留まったものの、今後は米ISM非製造業景況指数や11月ミシガン大消費者景況指数などの発表を控えており、引き続き注意が必要かもしれません。