数値にも表れる景気減速懸念
米中通商問題の先行き不透明感により世界経済の減速懸念が高まる中、米債券市場で8/14に一時10年債利回りが2年債利回りを下回るなど長短金利が逆転し、同様の現象が英債券市場やカナダの債券市場でも生じる事態となりました。
さらに、ドイツでは10年債利回りが-0.73%台へ低下したほか、ドイツやオランダでは8月以降、30年債利回りがマイナス金利へ低下する状況が続いています。
米中貿易問題の影響を背景に、中国では7月鉱工業生産が2002年2月以来の低水準となる前年比+4.8%へ低下、景気減速懸念が数値の上からの確認される状況になっています。
また、8/9に発表された英4-6月期GDPは、当初のEU離脱期限である今年3月末に向けた在庫積上げの反動が大きく影響し、2012年10-12月期以来のマイナス成長となる-0.2%に減速しました。
- ※出所:中国国家統計局
- ※出所:英統計局
注目イベントが目白押し!
昨年のドイツのGDPに占める輸出の割合は47%に達しており、中国向け自動車輸出の減少も影響しています。
中国では、7月までの自動車販売台数が12ヵ月連続で減少する中、今年1月から7月までの販売台数は前年同期比-11.4%減、乗用車に限ると-12.8%減と落ち込んでいます。また、中国国内の自動車生産も前年同期比-13.5%と減少しており、ドイツからの部品供給にも影響が及んでいます。
ドイツでは、8/13に発表された8月ZEW景況感指数(期待指数)が2011年12月以来の低水準である-44.1となりました。
4-6月期のマイナス成長に続き、7-9月期の成長率も現状予想でゼロ成長、もしくはマイナスに陥る可能性が懸念されるなど、依然として底入れが見えない状況が続いています。
- ※出所:独統計局
次回9/12のECB理事会に向けての追加緩和観測を象徴するように、独10年債利回り(-0.7%台)、独2年債利回り(-0.9%台)と長短金利差が縮小しているほか、いずれも民間銀行がECBに預け入れる際の金利(-0.4%)を下回っています。
9/1には、トランプ政権が発動予定の対中制裁関税第4弾が控えており、9/3には、再開される英議会で、EU離脱を巡り合意なき離脱も辞さないジョンソン英首相に対する超党派議員による離脱期限(10月末)の延長や、内閣不信任案などを巡る攻防が本格化します。
その他にも、9/12のECB理事会、9/17-18のFOMC、さらに、9/18-19の日銀政策会合と、大きく相場が変動するイベントが集中しておいます。
ドル円も、8/12の105円05銭を下値に105円割れを回避しているものの、今後の動向次第では105円割れに向けた円高が加速する可能性を払拭したとは言い切れない状況が続いています。
こうした中で、8/22-24にかけて米ワイオミング州ジャクソンホールにて世界の主要各国の中央銀行総裁らが出席するシンポジウムが開催され、8/23にはパウエルFRB議長の講演が予定されています。
米中通商問題、英EU離脱問題、アルゼンチンの政局懸念などの世界的な懸念材料を前に、主要各国による緩和競争が一段と進むのか、またパウエルFRB議長が米国経済や金融政策の先行きに対し、どのような認識を示すのか注目されます。
また、8/24-26には仏・ビアリッツでG7首脳会議が開催されます。
ジャクソンホールでのシンポジウムでの金融政策を巡る議論に続き、政治がどのような対策を講じることができるのか、自由貿易の重要性をトランプ大統領に訴え、どの程度の譲歩を引き出すことができるのか注目されます。