105円割れは単なる通過点?
8/12の欧州市場で、ドル円は今年1/3以来の円高水準となる105円05銭まで下落し、節目とされる105円00銭割れが意識される値動きとなりました。
米中通商問題を巡る対立の激化や長期化懸念を背景に、世界経済の減速リスクが高まっています。
さらに、米FRBの緩和政策や各国の景気減速、低インフレに対する警戒を背景に、緩和競争、通貨安競争に転じる中で、円高が加速するとの見方もあり、105円割れが単なる通過点に過ぎないとの見方が高まっています。
米中通商協議を巡る発言に注意
9/1にトランプ政権が発動予定の中国に対する制裁関税の内訳をみると、スマートフォンやPC・タブレット、ゲーム機器など、3,000億ドルの43%にあたる1,300億ドル相当がハイテク企業の業績下振れに影響を及ぼすと見られています。
先週一週間で、ダウは0.75% ナスダックは0.56%の下落(7/29からの一週間ではダウは2.60% ナスダックは3.92%)と、長期金利の低下とは無関係にNY株式市場は調整ムードが高まっている状況です。
8/9に、トランプ大統領はFRBは1.0% 或いはそれ以上の利下げが望ましいと発言するなど、更なる利下げ圧力をかけています。
8/12の米10年債利回りは一時1.628%へ低下、1.64%台で取引を終えましたが、既に米2年債(1.58%)と5年債(1.49%)との長短金利差が逆転している中で、2年債と10年債の長短金利差の逆転が意識される展開となっています。
9/1にトランプ政権が予定どおり3,000億ドル相当の中国からの輸入品に10%の制裁関税を課すことになれば、9/17‐18のFOMCで0.25%もしくは0.50%の利下げが行われると見られています。
これに対し、9/18-19の日銀政策会合で「状況に応じて緩和策を講じる用意」といった口先の対応だけでは、市場は失望し円高が加速するきっかけとなるかもしれません。
もちろん、NY株式市場の下落基調が続く中、来秋の大統領選に向けて、トランプ大統領が9/1からの対中制裁関税の発動を見送る可能性も僅かながら残されています。
そうした状況になれば、市場の緊張は緩和されドル円は大きく反発する可能性もあり、9/1の発動ギリギリまで米中通商協議を巡る発言には注意が必要です。
英EU離脱問題に漂う先行き不透明感
英4−6月期GDPは前期比‐0.2%と2012年以来のマイナス成長に陥りました。
ジョンソン首相はEU離脱協定案やアイルランド国境を巡るバックストップ条項に関し、EU側が修正・撤廃に応じなければ『合意なき離脱』も辞さない構えを示しています。
こうした先行き不透明感がポンド安につながる中、外国資本の撤退が英経済に影を落としており、仮に秩序ある離脱となった場合でも、今年・来年の英成長率は1.0%程度に留まるとの試算も示されています。
こうした中で、8/12のポンドは対ドルで2017年1月以来となる1.2015ドルへ下落したほか、ユーロも先週発表の独鉱工業生産の下振れなどで8/14発表の独4−6月期GDPがマイナス成長に陥る可能性もあり、ユーロも対ドルで上値の重い値動きを続けています。
英GDP前期比(%)
- ※出所:米労務省
9月以降のイベントに要注意!
9/1の対中制裁発動を控え、日米欧各国の金融政策を巡る思惑が交錯するなか、10/1に中国が建国70周年を迎えます。
今後、米中通商交渉を巡る対立が一段と激化し、政治的対立を深めることになるのでしょうか。
さらには、10月末にEU離脱期限を迎える英ジョンソン首相の対応など不透明要因が燻る中で、今後も円高が進行するのでしょうか。引き続き、トランプ政権の対中戦略の行方ともに注意が必要です。