FOMCで0.25%の利下げ決定も、市場は疑心暗鬼
先週7/30-31のFOMCで、FRBは市場予想通り2015年12月以来10年半ぶりに0.25%利下げを決定しました。
しかし、パウエルFRB議長は利下げについて「長期的な利下げサイクルの始まりではない」と発言。これに一部記者から「市場は利下げ局面入りと捉えているが、こうした見方を否定するのか」との質問が飛ぶと、「利下げが1回限りとは言っていない」と株式市場の下落に配慮したとも受け止められる発言を行うなど、軸が定まっていない印象が残る会見となりました。
さらに、今回の利下げに対し、ボストン連銀総裁やカンザスシティー連銀総裁が利下げに反対票を投じるなど全会一致の決定ではありませんでした。
こうした一連の動きを見ると、今回の利下げ決定はトランプ大統領に催促された感が否めないものになったと思われます。
さらに、今回の緩和策が果たして低インフレ、もしくは貿易問題および世界経済の減速懸念に本当に有効かつ最適な政策なのか、市場の疑心暗鬼を払拭できないものとなったようにも思われます。
そのため、9/17-18にFOMCで0.25%の追加緩和が実施される確率は96%へ再上昇、結果的にパウエルFRB議長の「長期的な利下げサイクルの始まりではない」との発言を市場が無視した格好となり、先週末8/2の米10年債利回りは2016年11月以来の1.84%台へ低下しました。
さらに、FOMCの0.25%の利下げを経た先週1週間のNY株式市場は、NYダウが2.60%安、ナスダックが3.92%安、さらにS&P500指数は昨年12月以来の下落率となる3.1%安で取引を終えており、追加利下げ観測を背景にしたNY株式市場の上昇にも調整の動きが見られます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
対中制裁関税の発動で、各国は緩和策を迫られる?
先週発表されたユーロ圏4-6月期GDPは、前期比+0.2%と前期(+0.4%)から減速、年率換算でも+0.8%と前期(+1.8%)から大きく減速しました。
さらに、8/1のユーロ圏製造業PMI改定値も速報値(46.4)から46.5へ上方修正されたものの、2012年12月以来の低水準に低下しました。
こうした中で、トランプ大統領が先週発表した3,000億ドル相当の中国からの輸入製品に対する10%の制裁関税を、9/1付で発動することを表明しました。
ドイツの主要輸出国である中国経済の減速懸念は、ドイツからの輸出関連企業の業績下振れ懸念につながるだけに、来週8/14に発表される独4-6月期GDPはマイナス成長になるとの観測も一部から聞かれています。
先週末の独10年債利回りは一時-0.502%へ低下するなど、史上最低水準を3営業日連続で低下したほか、30年債利回りもマイナスに転じています。
トランプ大統領が9/1に予定通り対中制裁関税を発動すれば、9/12のECB理事会でも緩和に動くと見られています。
また、9/17-18のFOMCでFRBが追加緩和に踏み切るとすれば、9/18-19の日銀政策会合でも何らかの具体的な緩和策を迫られる可能性があります。
緩和競争・通貨安競争の加速に注意
先週末発表の米7月雇用統計では、堅調な労働市場の継続が確認されたものの、反応は限られ、経済指標よりも貿易問題の行方と世界経済への影響が金融市場の焦点となっています。
ドル円は105円割れを単なる通過点として一段と円高が加速するのでしょうか。9月に向けた主要各国間での緩和競争・通貨安競争が加速する恐れがあり、注意が必要です。
非農業部門雇用者数(万人)の推移
- ※出所:米労務省