難航する米中通商交渉
一部報道によると、米中通商交渉はファーウェイの技術問題を巡り、行き詰まりの状況にあると伝えられています。
6/29の大阪G20サミットでの米中首脳会談により、米中通商交渉の再開が期待され、7/15にはムニューシン財務長官の「今週中の米中電話協議が生産的であれば訪中の可能性もある」との発言が報じられていただけに、ここに来ての交渉頓挫の懸念は、リスク回避の動きを強める一因につながりかねません。米中通商交渉の進展が難しい状況が明らかになれば、交渉の長期化懸念が米国経済の下振れにつながるとの思惑も聞かれます。
NY株式市場も、先々週に主要三指数が揃って史上最高値を更新したものの、先週のNYダウが0.66%安、ナスダックも1.18%安と反落しました。
中国は来年の大統領選に向けたトランプ支持の動向を睨みながら、時間を掛けても中国側が優位に交渉を進められる環境が整うのを待つ可能性があり、安易に妥協しない姿勢を貫くなど、持久戦に持ち込もうとしているとの見方も聞かれます。
中国GDP成長率 前年比(%)
※出所:中国国家統計局
中国は持久戦を展開か?
7/15に発表された中国4-6月期GDPは、前年比+6.2%とリーマンショックの影響により減速した2009年1-3月期(前年比+6.4%)を下回り、1992年以降の最低の伸びに留まりました。中国も決して楽観できる状況ではないものの、安易に米国の主張を受け入れることは避けたい強い意向があるのも事実です。
しかし、トランプ大統領がちらつかせる約3,000億ドルにのぼる第4弾の追加関税を避けることが重要で、そのためにも安易な直接交渉を避けているように思われます。
一方で、米国も第4弾の追加関税措置に踏み切れば、スマートフォンをはじめとする米国内の主要製品に対する物価上昇の影響が強くなる恐れがあります。大統領選の優位が揺らぐ可能性があるだけに、追加関税を早期に打ち出せない事情があると言われています。
中国はそうした米国の事情を理解した上で、巧みに持久戦を展開していると見られています。
利下げ検討の背景にあるものとは?
米製造業を中心にした貿易問題の影響がくすぶるだけに、クラリダFRB副議長がTVインタビューの中で「米経済は堅調だが、不透明感が増しており、インフレも弱含んでいる、理想的な金融政策において、景気を安定維持するために金利を調整する、可能であればデータが明らかに悪化するまで待ちたくはない」との考えを明確に示しています。
先週、トランプ大統領が「米中通商交渉の合意まで時間が掛る可能性がある、さらに対中追加関税の可能性がある」と言及。さらに、ムニューシン財務長官が「米中通商協議を巡る電話会談が生産的であれば訪中の可能性もある」との発言をしていました。
しかし、7/18にムニューシン財務長官やライトハイザー通商代表部代表が中国との通商問題に関して電話会談を行ったものの、具体的な進展についてのコメントは聞かれませんでした。
トランプ大統領とパウエルFRB議長は、これまで何度となく電話での会談が確認されており、「米中通商問題の長期化を見据えて対処せよ」といった発言が伝えられていたとしたら・・・
クラリダFRB議長による発言の「不透明感が増す」=「米中通商問題の長期化」と解釈すれば、FRBの利下げが十分に正当化されるのかもしれません。
実際、FRB が政策金利の引き上げに転じた際も、インフレの加速が続き、それを抑制するとの明確な理由付けがなされていないことからすれば、低インフレは表向きで、実際には米中通商問題の長期化への警戒感、それも数ヵ月以上の長期化の懸念があるのかもしれません。