パウエルFRB議長は、1月の講演でハト派へ転換?
今週は、3/21早朝のFOMC、及びパウエルFRB議長の会見を受けて、米債券市場および為替市場がどのように反応するかが注目されます。
12月のFOMCでは、政策金利を0.25%引上げましたが、その後、1月のパウエルFRB議長の講演では、利上げに忍耐強い姿勢を取るハト派の発言へと大きく転換していました。
1/29-30(日本時間1/30-31)のFOMC声明文では、12月まで見られた「更なる漸進的利上げ」との文言が削除され、将来の金利調整に対し「辛抱強い」スタンスで臨む姿勢が示されました。
さらに、経済見通しが概ね均衡しているとの文言も削除されるなど、単に利上げに対し辛抱強く対応するのみならず、景気の先行きに対し、慎重な見方が示されました。また、パウエルFRB議長の会見では、中国や欧州経済の減速懸念の影響や、原油価格の低下もインフレ抑制につながっているとの指摘が見られました。
一方、米国経済は底堅いとの認識が示されたほか、政府系機関閉鎖の影響は、GDPでみれば4-6月期に取り戻せると自信を示しています。
しかし、米中通商問題については、現状では大きな悪影響はないとしながらも、懸念を表明しました。さらに、英EU離脱が合意無き離脱となれば、金融市場の混乱が米国にも影響が及ぶとの考えを示していました。
3/8に発表された米2月雇用統計では、就業者数が2.0万人増と2017年9月(1.8万人増)以来の低水準に鈍化した一方、時間給賃金は前年比+3.4%と2009年4月以来の高い上昇率を記録しました。前月比の時間給賃金も前月の+0.1%から+0.4%へ上昇しています。
昨年までのタカ派志向の強さが目立ったパウエルFRB議長であれば、時間給賃金の記録的な上昇を踏まえ、インフレ期待上昇への警戒感を示していたかもしれません。
米消費者物価指数 コア・米時間給賃金(前年比 %)
- ※出所:米労働省
政策金利は当面据え置きか
しかし、3/12に発表された米2月消費者物価指数は予想を下回り、前年比+1.5% 食料品とエネルギー価格を除いたコア指数は前年比+2.1%といずれも前月から低下しました。
すなわち、雇用統計での時間給賃金の上昇が物価上昇につながっていないことが明らかになったことで、米FRBの金融政策はインフレ防止など、利上げする正当な理由を失ったことになり、当面の間、政策金利は据え置かれるとの見通しを強めることになりそうです。
こうした中でのFOMCでは、政策金利見通し(ドットチャート)をはじめ、成長率、インフレ見通しが12月時点からどの程度修正されるか注目されます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
年内利下げ観測が高まる!?
先々週3/7にブレイナードFRB理事は、従来の政策スタンスから若干の下方修正があるだろうと発言しており、政策金利見通しや成長率見通しが下方修正されることを仄めかしているだけに、どの程度の下方修正となるかが注目されます。
成長率見通しだけが下方修正され、失業率やインフレ見通しが据え置かれる場合や、同時に政策金利見通しも据え置かれる場合など、状況によって市場の反応が異なるだけに注目されます。
また、時間給賃金が前年比+3.4%と上昇の一方で、消費者物価指数が伸び悩む状況について、パウエルFRB議長の会見内容も注目です。
米国の経済指標は強弱交錯するものが目につき、これが1月の悪天候や12月から1月に続いた政府系機関閉鎖による影響がどの程度なのか見極める必要があります。
3/7のベージュブック(地区連銀経済報告)では、多くの地区で緩やか、もしくは僅かな景気拡大との指摘の一方、2地区で横這いとの認識が示されるなど、先行きへの懸念も徐々に広がりつつあります。また、3/15に発表されたミシガン大の3月インフレ見通しも、2月時点の2.6%から2.4%へ下振れたほか、FF金利先物が織込むFRBの年内利下げ確率が29%と前週3/8の17%から上昇しており、今週のFOMCを終えてこうした年内利下げ観測が高まるかが注目されます。
また、英議会で3/21-22のEU首脳会議を前に、3/20までにEU離脱修正案を承認することを条件に離脱期日を6/30まで延長しました。議会で修正案が承認されなければ長期の離脱延期につながる可能性も聞かれるだけに、FOMCに対する反応と併せ、英議会でのEU離脱を巡る動向が注目されます。