米2月雇用統計は、就業者数が予想を大きく下回る
3/5に開幕された中国全人代では、今年の成長率目標が昨年の6.5%前後から6.0%〜6.5%へ下方修正されたほか、3/8発表の中国2月貿易収支では、輸出入ともに前年比大幅な減少となりました。
3/6に発表された豪10-12月期GDPも前期から減速、こうした動きを受けて、豪金利先物市場でも今年8月までの利下げ確率は62%、年内利下げ確率は75 %となっています。
また、日本の1月景気一致、先行指数が2ヵ月連続で低下するなど、既に景気後退局面入りが懸念され、日経平均株価も先週2.67%下落、今年初の4日続落を記録しました。
ECB理事会でも成長率見通しが大きく下方修正、さらには年内の利上げが見送られ、新たな資金供給策の導入が決定するなど、欧州でも景気減速懸念が高まりました。
唯一、先進国での成長の牽引役として期待される米国でも、3/8発表の米2月雇用統計で、就業者数が予想を大きく下回る2.0万人増に留まり、2017年9月(1.8万人増)以来の僅かな増加に留まりました。
2月雇用統計結果のポイント
9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 10.8 | 27.7 | 19.6 | 22.7 | 31.1 | 2.0 |
失業率(%) | 3.7 | 3.8 | 3.7 | 3.9 | 4.0 | 3.8 |
時間給賃金 前月比(%) | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.1 | 0.4 |
時間給賃金 前年比(%) | 3.0 | 3.3 | 3.3 | 3.3 | 3.1 | 3.4 |
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
・就業者数は2017年9月の1.8万人増以来の低水準となる2.0万人増
・直近3ヵ月の就業者数は月平均18.6万人増と堅調を継続
・建設業が3.1万人減、レジャー産業が0.0万人と、厳冬下などの悪天候が影響との観測も
・失業率は、労働参加率が前月と変わらずの63.2%の中、前月の4.0%から3.8%へ改善
・時間給賃金(対前年比)は、2009年4月以来の3.4%と高い伸びを記録
失業率は1969年以来の低水準
2018年の失業率は、4月に4.0%を下回る3.9%へ改善、9月には3.7%へ改善が進み、1年間の平均失業率は3.89%と4.0%を下回り、1969年の3.5%以来の低水準となりました。今年1月には4.0%へ上昇したものの、2月には再び3.8%へ改善、今後も低失業率が続き、昨年に続き2年連続で4.0%を下回ることになるか注目されます。
一部調査機関では、米失業率は今年第4四半期までに3.6%へ改善、その後、来年末までに3.8%へ悪化すると見られています。過去の経験則からは、失業率が四半期平均0.25%上昇すると景気後退に陥ると言われており、単に失業率の改善が手放しで喜べない一因があります。さらに、4.0%を下回る失業率という労働市場の堅調さにもかかわらず、個人消費の拡大につながっていない点も懸念されています。
昨年の小型自動車販売台数が伸び悩んだほか、住宅販売も低調な結果となっており、インフレ期待上昇の気配が見られません。こうした中で、FRBの金融政策は、利上げに忍耐強い姿勢を示すなど、ハト派色を強めており、本来であれば低失業率に加え、時間給賃金の上昇が見られる中、個人消費の拡大につながり、好景気の下での低金利という「適温相場」を背景に、NY株式市場は昨年10月の史上最高値の更新を目指すことも可能なはずです。
しかし、NYダウは3/8まで5日続落、週間で2.21%下落しました。今回の雇用統計での時間給賃金が対前年比3.4%と2009年4月以来の高い上昇率となったとはいえ、消費拡大に結び付くことがなければ、NY株式市場の本格的な上昇への期待が後退、世界的な景気減速を背景にリスク回避の動きを強めることになるかもしれません。
非農業部門雇用者数(万人)の推移
- ※出所:米労働省
米失業率(%)の推移
- ※出所:米労働省