離脱交渉を巡る楽観的な見方が後退
11/9にメイ政権を支援している北アイルランドの民主統一党が、ブレグジット交渉を巡り英国を分断する合意を支持しないと表明したほか、前外相の弟で運輸副大臣を務めたことのあるジョー・ジョンソンが英EU離脱最終案に反対し、国民投票の再実施を求め辞任するなど、離脱交渉を巡る楽観的な見方が後退したことで、ポンドは1.2957ドルへ下落しました。
11/12以降もこうした動きが尾を引き、EU離脱合意への期待感が後退したほか、イタリアの財政問題への懸念もあり、ドルはポンドやユーロなど対欧州通貨で上昇、ポンドは1.2827ドルまで下落しました。
しかし、11/13の海外市場でEU離脱交渉を巡り、(1)英国のEU離脱に伴う「違約金」の支払い(2)在EU・在英国双方の市民権の保証(3)2020年末までの移行期間の設置などが盛り込まれた協定草案の中で、最大の懸案とされた「北アイルランドの国境問題」について決裂回避を最優先にしたことで、最終的に解決方法が見つかるまで英国全体が離脱後もEUの関税同盟に事実上残留する妥協案で決着。
こうした報道を受けて、EU離脱への進展期待を背景に、ポンドは1.3046ドルまで上昇。さらに、日本時間11/14の23:00から5時間にも及ぶ臨時閣議で承認されたことで、1.3071ドルまで上昇しました。
しかし、議会承認という高いハードルへの懸念が聞かれるなど、閣議決定が全会一致からはかけ離れ、新たな閣僚の辞任が囁かれたこともあり、情勢を見極めたいとして1.30ドル付近での小動きとなりました。
11/15には、これまでEU側との交渉窓口となっていたラーブ離脱交渉担当相の辞任が最も大きなサプライズとなったほか、マクベイ雇用・年金相、バラ北アイルランド担当閣外相、ブレーバーマン離脱担当閣外相の4人が辞任を表明し、閣僚から外れることとなりました。
加えて、離脱強硬派をまとめるリースモグ保守党議員が、メイ首相に対する不信任投票を求める書簡を提出したことも嫌気され、ポンドは1.2724ドルまで下落。英債券市場でも10年債利回りが前日の1.508%から1.370%へ、2016/8以来の大幅な低下幅を記録するなど、象徴的な動きとなりました。
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
今後の展開は?
11/25に開催予定の臨時のEU首脳会議でEU側も承認され、EU加盟各国のそれぞれの議会の承認を得て、来年3月末のEU離脱協定の批准を完了する予定となりました。
しかし、週明け既に与党・保守党議員42人が書簡でメイ首相を支持しないと表明したとの英紙報道もあり、EU離脱での議会承認が厳しくなりつつあるとの見方が聞かれています。
与党保守党内にも反対派が多く見られる状況で、メイ首相が議会承認に向けてどのように賛成派を増やしていくのか注目されます。
※出所:SBIリクイディティ・マーケット