金融市場の混乱に終止符が打たれるのはいつか?
米中貿易戦争への懸念
トランプ政権は、3/22に600億ドル規模の高関税を課す対中制裁を決定したほか、3/23(日本時間午後1時)には鉄鋼やアルミニウムの輸入制限を発動しました。
こうした動きに対し、中国が対抗措置の準備に入ったと明らかにしたことから、米中の貿易不均衡問題が貿易戦争への懸念へと発展、今後の世界経済の減速につながりかねないとの不安が広がりました。
3/22のNY株式市場では、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置によって米製造業の原材料確保が難しくなれば、大きな打撃につながるとして、今年3番目の下げ幅(724ドル安)を記録。3/23も424ドル安で取引を終え、年初来安値を更新しました。さらに、週間でも1,413ドル安(-5.7%)とリーマンショック後の2008年10月以来の大きさとなりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
3/23の日経平均株価も、一時1,000円超の下落となり、終値でも974円安の20,671円と昨年10月以来5ヵ月ぶりの安値で取引を終えました。週間の下落幅も1,058円(4.9%)に達したほか、中国・上海総合株価指数も週間で3.6%安となるなど、投資家のリスク回避が鮮明になっています。
また、トランプ大統領の経済顧問トップであるコーン米国家経済会議(NEC)委員長が3/6に辞任したほか、3/13にはティラーソン国務長官を解任、さらに3/22にはマクマスター大統領補佐官の事実上の解任を決め、後任に対イラン、対北朝鮮に強硬姿勢を示してきたボルトン元国連大使を指名。
トランプ政権の外交姿勢への懸念も含め、新たな火種が増した状況も株式市場の下落につながっているようです。
株式市場の一段安の可能性も
リスク回避姿勢が強まる中で、ドル円は先週末の104円64銭まで下落したほか、週明け3/26のシドニー市場では一時104円56銭まで円高が進む場面も見られました。
トランプ政権は、今週中にも中国の関税対象品目リストを公表する見通しであり、USTR(米通商代表部)は15日以内に制裁関税を課す中国製品リストを作成し、産業界からの意見聴取を募り、最終的には制裁発動まで2ヵ月近く時間を要する見込みです。現状では、工作機械やロボット、航空分野などが含まれるとされています。
一方の中国については、米債購入の減額に踏み込むのではとの観測記事が報じられており、本格的な報復に出れば株式市場の一段安の懸念が高まるかもしれません。
通商政策を巡る米中対立激化、トランプ大統領の政権運営を巡る不透明感、世界経済の先行き懸念、株価下落、リスク回避の円買い・・・といった負の連鎖が続くことになるほか、森友問題を巡る安倍政権の支持率低下も日本株の下落要因となっています。
過去1年間のドル円日足チャート
- ※出所:Quants Research inc.
負の連鎖を断ち切れるか・・・
昨年12/15に発表された日銀短観の大企業製造業2017年度下期の想定為替レートは、109円66銭(上期:110円69銭、2017年度:110円18銭)となっています。
4月下旬から本格化する企業決算の来期想定レートは、100円まで大幅に下方修正されると見られており、来期減益との見通しとなれば負の連鎖の収束が遅れることになりかねません。
円高・株安の負の連鎖がいつまで続くのか、平昌冬季オリンピック以降の北朝鮮情勢の緊張緩和が具体的にどの程度まで進展するか。市場関係者は藁をもつかむ思いで、何か一つでもと明るいニュースを期待しています。市場が総悲観に陥る前に何らかの起爆剤が待たれるところです。