ドル安は止まる!?パウエル新FRB議長は何を語るか・・・
先々への懸念からNYダウが調整
週明けのドル円は早朝のシドニー市場で107円29銭まで上昇後、あらためて上値の重さを確認して106円58銭まで反落、2/27にパウエル新FRB議長の議会証言を控えて106円から107円付近での小動きとなっています。
米10年債利回りは先週一時2.95%と2014年1月以来の高水準まで上昇、先週末こそ2.86%へ小幅に低下したものの、米長期金利の趨勢は明らかに上向きに転じています。
それでもドル円は2/16に105円55銭まで下落、その後の反発も107円90銭までに留まっており、米国の長期金利上昇を背景にした円安支援効果はほとんど見られていないのが現状です。
NYダウを筆頭に「適温相場=緩やかな経済成長下での緩やかな金利上昇」が税制改革によって景気過熱へ繋がる懸念が表面化、財政赤字拡大の思惑による国債増発懸念から急速に金利上昇が進むことになれば・・・
こうした先々への懸念を「AI」や「システムトレード」が察知した大量のプログラム売買を通じて、NYダウの調整が強まったとされています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
ドル安の要因は?
米長期金利上昇の一方で、緩和政策の継続を主張する黒田日銀総裁の再任も事実上決定済みです。
日米金利差拡大への思惑から、金利スワップ収益を当て込んだ個人投資家のFX取引でも、『ドル円が下落したらドル買い』といった状況だったのかもしれません。そのため、106円割れまで想定以上に円高が進んだことが損失確定売りにつながって、円高を助長させた可能性もありそうです。
しかし、米国の長期金利が2.2%から2.5%の間で小幅に推移していた昨年12月半ばのドル円は113円75銭。今年1/8に113円38銭の高値を付けた後も、1/24までは110円00銭を割れることはなく底堅い推移となっていただけに、「ここに来て高まった円高リスクが再燃するのでは?」といった不安がドルの戻り売りにつながり、ドル円の上値を抑えているのかもしれません。
要因は、
- 米国の大規模な財政出動や税制改革が財政赤字を拡大するとの懸念⇒ドル売り
- 2/4〜17に国内投資家の海外証券の売り越しは2兆円規模と過去最高を記録
- 先週のトランプ大統領の経済報告で米貿易赤字拡大に為替調整の重要性に言及
- 海外の短期投機筋を中心にドル安シナリオに向けてのポジション構築
など考えられますが、それ以前から兆候はあったのではないかとの話も聞こえています。
今年1月には『中国が米国債購入の縮小や停止を検討』といった一部報道がありました。これに対し、中国当局はこの報道を否定していますが、「外貨準備の多様化」との政策は当時の文書に残されています。
中国が米国債を売っているとすれば、米長期金利は上昇。一方で、外貨準備の多様化という観点からドル売り・ユーロ買い、ドル売り・円買いに動いたといったことなのかもしれません。
今秋の中間選挙に向けてのドル安政策は、トランプ政権にとって有効的な政策の選択肢の一つであり、中国との思惑が一致していると市場が捉えれば、ドル安の進行は想像以上に根強いかもしれません。
昨年末からのドル円日足チャート
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット社
パウエル新FRB議長の議会証言に注目!
こうした中で、2/27のパウエル新FRB議長の議会証言が今週最大の注目となります。市場との対話を重視してきたイエレン前議長の政策スタンスが継続されるか、目先の方向感を左右する判断材料として重要です。
米国労働市場では、低失業率に加え、賃金の上昇が本格化する可能性もあり、物価上昇圧力の高まりが意識されつつあります。市場の一部からは税制改革による企業収益の上振れ期待や賃金上昇、さらに米財政赤字拡大による国債増発などインフレ加速が懸念されはじめている中で、FRBが年4回の利上げを実施するのではないかといった観測も聞こえています。
市場ではNY株式市場の調整局面を経てもFRBが利上げペースを加速させるのか、パウエル新議長の議会証言や質疑応答後もドル安基調が続きドル円は再度105円台まで円高が進んでしまうのか、注目されます。