フランス大統領選第一回目投票を終えた為替は?
ゴールデンウィークの為替市場の行方を占う上でも注目されたフランス大統領選第一回投票は市場予想通り、「EU統合推進、法人税減税、公務員削減」を掲げる独立系・中道派のマクロン候補が23.1%の得票率(開票率90%時点)を獲得、21.9%の極右政党・国民戦線ルペン候補とともに5/7(日)の決選投票に臨むことになりました。
11名の候補者が立候補した今回の大統領選ですが、決選投票に進めなかったフィヨン候補やメランション候補に投じた有権者の多くが、決選投票ではマクロン候補に投じるとされており、決選投票の予想ではマクロン候補が62%の支持に対し、ルペン候補は38%と大きく水を開けられています(4/24現在)。
この結果を受けてNYダウ先物は上昇、ユーロが対米ドルで1.0896ドル、対円で120円09銭まで上昇、ドル円も110円34銭の高値を付けました。
その後は利益確定売りに押されユーロは対ドルで1.08ドル台半ばへ、対円でも119円台半ばへ下落したほか、ドル円も一時109円台後半に押し戻されています。
ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/円 日足
米ドル/円 日足
- ※出所:総合分析チャート
決選投票では、独立系・中道派のマクロン候補が、極右政党・国民戦線ルペン候補を現時点で大きくリードすると予想されており、リスク回避姿勢が緩和 ⇒ ユーロ、米ドル高に
トランプ大統領 税制改革案を4/26公表予定、5/5発表の米雇用統計予想は?
トランプ大統領は4/26に「所得税、法人税減税を含めた税制改革案を公表する」と伝えており、その詳細が注目されます。
また、4/28に発表予定の米GDP速報値(1-3月期)の予想は前期比+1.3%と、+2.1%となった前期からの鈍化が懸念されています。一部には+0.8%まで鈍化するとの予想もあり、5月2-3日に行われるFOMCの金融政策の判断にも影響を及ぼす可能性があります。
大統領が示す「税制改革」の詳細が市場の期待する内容となれば、1-3月期GDP成長率の鈍化は「一時的」と判断され、4-6月期以降の企業の設備投資や個人消費の上振れ期待からGDPの反応は限定的になるかもしれません。
米GDPの推移と予想 (前期比, %)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
また、5/5(金)に発表される米4月雇用統計の結果も前月からの改善が確認されれば、6月FOMCの利上げ観測が高まることになるだけに、ドルの堅調地合いをサポートする材料となります。
米4月雇用統計 4/24時点の予想
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月市場予想 | |
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非農業部門 雇用者数(万人) | 16.4 | 15.5 | 21.6 | 21.9 | 9.8 | 17.8万人 |
失業率(%) | 4.6 | 4.7 | 4.8 | 4.7 | 4.5 | 4.6% |
時間給賃金 前月比(%) | 0.0 | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 0.2 | 0.3% |
時間給賃金 前年比(%) | 2.7 | 2.9 | 2.6 | 2.8 | 2.7 | 2.7% |
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
前述の通り、焦点となっていたフランス大統領選一回目の結果は、極右政党の候補者が得票数を集めるというシナリオが後退したことから、ドル円は110円台を回復しました。
また、先週末、ワシントンで開催されたG20では共同声明もなく静かに閉幕、麻生財務相は「これ以上、自由貿易から保護主義への流れが強まるとは思っていない」と発言するにとどまり、為替問題に対する具体的な議論は見られませんでした。
米財務省はトランプ政権に対し「強いドル」政策の維持を求めており、ムニューシン財務長官の発言にもその意向が垣間見られています。
一方で、ロス商務長官は、「貿易赤字の削減に向けてドル高を放置することは許しがたい」との立場を取っており、先の米中首脳会談で中国側が示した貿易不均衡是正に向けた100日計画など、対中国を中心に米国の通商・貿易政策の行方も為替市場に大きく影響を及ぼしそうです。
7月にドイツで開催されるG20では、トランプ大統領と習近平国家主席との米中首脳会談が見込まれており、為替問題を巡る水面下の交渉は7月まで続くのではないかと推察されています。
ドル円は110円をあらためて下値メドとして定着させ、107円から105円を目指すような過度な円高が回避されたのかが注目されます。そのためにも、最大の懸念材料である北朝鮮情勢を巡る地政学リスクの沈静化や米国議会での税制改革、オバマケア代替法案の進展といった問題の解決が今後の大きな材料となりそうです。