米4月雇用統計と今後のFRBの金融政策の行方
先週末発表の米4月雇用統計は、非農業部門就業者数が16.0万人増と市場予想(20.0万人増)を下回る結果となりました。中でも小売業での雇用減速が就業者数の伸び悩みの一因とされ、過去2ヶ月分もそれぞれ下方修正(3月:20.8万、速報値比0.7万減、2月:23.3万、1.2万減)されました。雇用情勢の減速が一時的なものに留まるのか、あるいは昨年10-12月期をピークに調整局面を迎えているのか、今後の雇用情勢の行方が注目されそうです。
米雇用統計 非農業部門 就業者数(万人)
米雇用統計 小売業 就業者数(万人)
今回の雇用統計では小売業の就業者数が‐0.3万人と大幅に減少しており、就業者数減少の一因とされています。こうした中で今週5/13に米4月小売売上高が発表されますが予想では前月(前月比-0.3%)からの改善(予想+0.7%)が見込まれています。小売売上高は米GDPの約7割を占める個人消費の動向を占う上でも重要視されると同時に、売上高の増加が雇用面での支援材料になるのかも含めて注目する必要がありそうです。
こうした結果から、6月FOMCでの利上げ観測は雇用統計発表前の10%前後の確率から2%程度へ低下したほか、大手各行はFRBが昨年12月のFOMCで示した年2回の利上げペースをさらに後退させ年1回の利上げに鈍化させるのでは、との観測が高まっています。
ドル円は雇用統計の発表を受け、一時106円44銭まで下落しました。しかし、その後NY連銀ダドリー総裁が「年内2回の利上げ見通しは妥当な予想」との考えを示したことなどから、10年債利回りが1.78%近くへ上昇、ドル円の底堅さを改めて確認したとして、107円12銭で先週末の取引を終了しています。そして、ドル円の底堅さと同時に注目されるのが今後のFRBの金融政策ではないかと思われます。
先週末の雇用統計結果を踏まえ、今週5/12にはクリーブランド、ボストン、カンザスシティの各地区連銀総裁(いずれもFOMCでの投票権あり)の講演が予定されています。市場では今秋の大統領選まで半年もない時期での利上げは過去の経験則からも可能性は低いとされ、6/26に英国のEU離脱を問う国民投票を控えている点も考慮すると6/14-15の次回FOMCでの利上げは考えにくいとの見方になっています。6月の利上げが見送られることになれば、イエレン議長の会見が予定される9/20-21での利上げが有力視され、少なくとも7/26-27の利上げも、期待インフレ率が急速に高まるような経済指標の結果が続かない限り、再利上げは難しいだろうといわれています。
今後、今回の雇用統計がこれまで堅調に推移してきた労働市場の頭打ちを意味し、FRBの金融政策の変更を余儀なくされることになるのか注目してみていく必要がありそうです。
過去の値動き(米ドル/円 日足)
出所:FX総合分析チャート