今、人々がトルコに夢中な理由は?
2013年4月に金融緩和に踏み切った日本銀行に続いて、その後も欧州中央銀行(ECB)をはじめ、各国中央銀行が相次いで金融緩和策を打ち出し、大量の資金が世界中の金融市場に供給されました。そのため、多くの国々の金利が低下するなかで、市場では効率的な運用先を求め、プロ・アマを問わず高金利通貨の買い・低金利通貨の売りを通じてスワップポイント収入を狙う運用の人気が高くなってきました。
日本人にとって最も人気があって親しみやすい高金利通貨といえば豪ドルですが、オーストラリア経済は最大の交易相手国である中国の景気動向の影響を受けやすく、昨年の秋以降は中国経済の鈍化懸念の高まりもあって、軟調推移が続いています。一時期、豪ドルに負けず劣らず人気の高かったのが南ア・ランドですが、こちらも度重なる労働者のスト、電力不足などのインフラの弱さや政局の不安定さによって、通貨安が続いています。こうしたなかで注目され始めた高金利通貨がトルコリラです。豪ドルと比較すると、国の政策金利は3.75倍、対円でのスワップポイントは約2倍という魅力的な通貨です。
当然のことですが、スワップポイント収入を狙う運用に必要不可欠なのは、まず高金利通貨を選ぶことです。下記の表の通り、トルコリラは各国の政策金利と比べても、スワップポイント収入の面においても高水準にあります。
※スワップポイントは金利情勢の変化等により変動しますので、将来にわたり保証されるものではありません。十分にご注意ください。
主要各国の政策金利(2015年4月時点)
※出所:各国政府の発表数値
主要高金利通貨のスワップポイント(1枚あたり)
※出所:2015/5/27のSBI証券のスワップポイント実績
※1枚は1万通貨(ただし、南アランド/円は10万通貨)
トルコ政府は今年6月7日に実施予定の総選挙を前に、与党・公正発展党(AKP)の議席をさらに増やすため、中銀に対して利下げの圧力をかけていたことから、一部の市場参加者の間では中銀の独立性を疑問視する見方もあり、トルコリラは対ドルで最安値を更新しています。
一方で、円安を背景にトルコリラ円は2011年から2015年5月現在まで40円台〜56円台の範囲で推移しています。
総選挙後、インフレ抑制を重視してきたトルコ政府が、トルコリラの更なる下落を招きかねない追加利下げに対して慎重な姿勢になれば、中長期的にはトルコリラ/円の上昇が期待できるかもしれません。
総選挙での波乱要因
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方針 |
状況 |
選挙後のリスク要因 |
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トルコ政府 |
経済成長を重視 |
政府関係者が中銀に金融緩和策を推進するよう圧力をかけている |
現政府(与党)が過半数程の得票数を獲得すると、権力増進を懸念する動きと、金融緩和策の推進圧力が強くなるとの見方から、トルコが売られる可能性がある |
トルコ中銀 |
インフレ抑制を重視 |
現政府(与党)が得票を得られず勢力が弱まると、現エルドアン大統領の強力な指導力の減退が予想され、トルコの経済懸念が深まるとの見方とインフレ抑制の動きが強くなるとの見方が交錯する可能性がある |
過去10年間の推移(トルコリラ/円)
※出所:ブルームバーグ