第47回衆議院議員総選挙 |
投票日・開票日 |
2014年12月14日(日) |
衆議院選挙がもたらす金融市場への影響
衆院議員定数 | 475 | 与党目標獲得議席 | 270 |
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解散前与党議席 | 326 | 絶対安定多数議席 | 266 |
解散前自民党議席 | 295 | 安定多数 | 249 |
解散前公明党議席 | 31 | 過半数 | 238 |
12月14日に投開票される衆議院選挙の票読みに参考になるのが上表に示した数値となります。これまで実施された殆どの衆院選挙の実施理由として(1)内閣支持率低下 (2)景気低迷などが主な要因として挙げられ、経済的側面ではネガティブな状況からの脱却期待が挙げられ、改選後の政策期待によって選挙期間中に株式・為替市場は概ね上昇する傾向が見られました。
しかしながら、今回の選挙ではアベノミクスの一つの柱である日銀の緩和政策が功を奏したほか、日銀のETF買い増し、さらにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針見直しなどの国内要因があります。加えて、原油価格の下落や欧州および中国の景気減速懸念を背景にした世界的なインフレ期待の低下もあり、欧米株価の上昇といった外部要因も支援材料となって日経平均株価は一時18,000円台を回復、年初来高値の水準にあります。一方の為替市場でもドル円が、12月5日の米11月雇用統計の予想を上回る結果を好感して、121円台後半を付けるなど、2007年8月以来となる円安水準を回復しています。高値圏にある日経平均株価とドル高・円安相場の下で実施される選挙戦だけに、もう一段の上昇につながる可能性以上に、これまでの上昇に対する調整のきっかけにつながるリスクを懸念する声も聞かれています。
現状、「アベノミクスの成果を問う」、という点に焦点があたり、消費税増税の先送りや軽減税率、さらには集団的自衛権やTPPなど外交問題といったテーマが霞むような状況下で、選挙戦序盤の世論調査では与党が現有勢力を上回るとの予想も聞かれています。仮に開票結果が予想通りとなれば、与党側が常任委員会のすべての委員長ポストを確保できる安定多数の249議席、あるいは委員会すべてでの過半数を維持できる絶対安定多数の266議席は確保できるとの見方も出始めています。当然ながら266議席を上回ることになれば安倍政権の長期化への基盤固めとなるほか、黒田日銀総裁の任期(2018年4月8日)までは安倍・黒田の二人三脚体制が継続されるためにアベノミクスの推進力が勢いを増すことになります。こうした選挙後の期待先取りで株高・円安が進行しているとの見方となっているように思われます。
先週発表された各報道機関による選挙戦序盤の勢力予想では、自民党が単独で300議席を上回るほか公明党も改選前議席を確保する可能性との報道の一方で、野党側は苦戦を強いられていると報じられています。仮に予想通りの結果が投票に反映された場合、与党が衆院議席475議席の3分の2(317議席)を上回ることになります。この議席数は、参院で否決された法案を衆院で再可決されることが意味されるだけに、アベノミクスの推進に勢いが増すことになりそうです。年末に向けて日経平均が一段高、円安による企業業績の上方修正ということを想定し海外ファンド筋を中心に先物主導で円売りが加速することになればドル円はリーマンショック直前の124円16銭を目指す可能性があるかもしれません。
2000年以降の衆議院選挙振り返り
米ドル/円 週足
- ※出所:ブルームバーグ
第46回衆議院議員総選挙(野田内閣):2012年12月16日
【結果】
自民党:294
公明党:31
民主党:57
自民党が単独で絶対安定多数(269議席)を確保する大勝で第一党に返り咲いた選挙。
解散前後で円安へ反応。その後もみあい、徐々に円安へ進行。選挙後はさらに急激に円安へ。
この選挙の結果、第二次安倍内閣が発足した。
米ドル/円 日足
- ※出所:ブルームバーグ
第45回衆議院議員総選挙(麻生内閣):2009年8月30日
【結果】
民主党:308
自民党:119
公明党:21
民主党が過半数を取得し始めて政権を獲得した選挙。
解散後はしばらく円安へ反応、選挙後は円高が進んだ。
しかし、この時期はリーマンショックの後遺症でマーケットが荒れており、安全資産である円への資金流入が継続していた時期であり、日本の政治がマーケットに影響を与える余地は少なかったといえよう。
米ドル/円 日足
- ※出所:ブルームバーグ
第44回衆議院議員総選挙(小泉内閣):2005年9月11日
【結果】
自民党:296
公明党:31
民主党:113
小泉内閣のもと行われた「郵政選挙」で有名な総選挙。自民党、公明党の圧勝に終わった。
解散直後は小泉政権の下、積極的な規制緩和を背景に、日本の構造改革期待から日本資産買いが進むであろうとの思惑から円は買われる展開となった。しかし、その円高も選挙結果が出た後は反転、逆に年末まで10円円安が進む結果となった。
米ドル/円 日足
- ※出所:ブルームバーグ
第43回衆議院議員総選挙(小泉内閣):2003年11月9日
【結果】
自民党:237
公明党:34
民主党:177
民主党が躍進、177議席と自民党以外の政党としては1958年以来の最大議席数となり、2大政党化の傾向が強くなった選挙。
解散前には円高が進んでいたが、解散、選挙後はレンジ相場入りとなり、米ドル・円相場へ与えた影響としては、それまでの動きを止めるという結果になった。
米ドル/円 日足
- ※出所:ブルームバーグ
第42回衆議院議員総選挙(森内閣):2000年6月25日
【結果】
自民党:233
公明党:31
民主党:127
森内閣のもと行われた選挙、解散後は円高反応を見せるも、選挙後はそれまでの流れが反転、その後1ヶ月は円安方向へと米ドル・円は進む展開。
米ドル/円 日足
- ※出所:ブルームバーグ