【米FOMCの決定と2014年初頭のマーケット展望】
12月17〜18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ついに量的緩和第3弾の縮小開始を決定しました。今回の会合で焦点となっていたのは、9月の会合前後から話題になり始めた月額850億ドルの資産購入額の縮小開始を決断するかどうかに集中していました。市場では「来年3月の会合での縮小決定」との見方が優勢だっただけに、発表後の主要通貨の米ドル買い反応はやや大幅となりました。縮小の規模については、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)をそれぞれ月額50億ドル減額する予想通りの内容となったものの、事実上のゼロ金利政策は長期間継続することがはっきりしたことで、米ドル買いに動きやすかったことも背景にあったようです。米ドル/円相場も5年2ヶ月ぶりに104円台まで米ドル買いが進んでいますが、2014年入りした後もこの米ドル買いが続くのか、あるいは米ドル売りに転ずる動きとなるのか、市場参加者の皆さんにとっては当然ながら興味深いところでしょう。そこで、今回のFOMCの決定を踏まえて2014年初頭の米ドル/円相場を中心に展望してみたいと思います。
2013年の年末相場振り返り
市場の意表を付いた格好となった今年最後のFOMCの緩和縮小の開始決定は、米国の景気回復に安心感をもたらす効果を生み出し、世界的な株高と米ドル高が進んでいます。この米ドル高は、対円と対豪ドルでは10月下旬あたりからの「米ドル買いトレンドの延長」となっていますが、対ユーロについては11月半ば近くから12月中旬では、逆に米ドル安の展開でした。この10月から年末までの間、ユーロについては欧州中央銀行(ECB)の予想外の利下げ、その後は一転して追加利下げの可能性がなくなったことを匂わすドラギ総裁発言などが影響して、1.38米ドルと1.33米ドルの間で500ポイントもの下落と反発上昇を繰り返しました。豪ドルは、オーストラリア準備銀行の理事会やスティーブンス総裁から豪ドル高に対する強い牽制が示されたことが大きく影響して、10月下旬の0.97米ドル台後半から900ポイント下落して、直近では0.88米ドル台から0.89米ドル台で取引されています。米国の財政協議をめぐる混乱による米政府機関の一部閉鎖問題などは、ほとんど全ての通貨に影響を与えましたが、ユーロや豪ドルについては自国(エリア)の個別材料がより大きく相場の変動に影響していました。
図1:米ドル/円 日足
- ※出所:ネットダニアー
図2:豪ドル/米ドル 日足
- ※出所:ネットダニアー
図3:ユーロ/米ドル 日足
- ※出所:ネットダニアー
2013年10月〜12月の米ドルの変動要因
2014年初頭展望
上記のように、2013年10月〜12月の期間の相場に最も大きく影響し続けたイベント(材料)は、米国の量的緩和の縮小開始をめぐる「FOMCの決定」でした。そのFOMCもようやく緩和縮小への決断を下し、ひとまずは、その決定を予測するための米国経済データの日々検証にも区切りが付いたことで、今後も資産買い入れ額の変更などには注意を払う必要があるものの、FOMCが最大の注目ではなくなりつつあります。失業率が6.5%をはっきりと下回るまでゼロ金利政策を継続するフォワード・ガイダンスを打ち出したことで、リスク志向を半ば支援する態勢となり、しばらくの時間的猶予が出来たからです。
2013年の年末相場の米ドル買い/米ドル売り要因を見直すと、特にユーロや豪ドルに関しては、米ドルへの直接的な材料よりも当該通貨国の経済指標や関係の強い国の経済要因にそれぞれの通貨が敏感に反応していたのが特徴となっていましたし、恐らく2014年もそうした傾向は続くでしょう。
米ドル/円相場は2008年10月に付けた104円を回復したことや、米国の量的緩和の縮小開始が決定したことで、米国の景気回復への安心感が広がったことが確認され、「円安トレンド」がより明確になってきています。9月から10月にかけて米ドルが下げる場面の大きな原因のひとつとなったのが、米財政協議の混乱による「政府機関の一部閉鎖問題」でした。その後、大事には至らずに米ドル買い相場に戻っていますが、2014年早々この米ドル買い相場に水を差すことになりかねないと不安視されていたのが、やはりこの政府機関の閉鎖への懸念でした。ただ、この金融市場全般にとって大きな不安材料だった米財政協議が12月中に米議会両院の超党派委員会でまとまり、2014年早々の政府機関が閉鎖となる事態が回避されそうな状況となっています。もうひとつ2月7日に期限を迎える米連邦債務の上限問題もクリアする必要がありますが、財政協議が年内に解決できたことで、連邦債務の上限問題の解決も楽観論が広がりつつあるようです。この米国の年明けの不安材料になりかねない問題が部分的にも軽減されたことによって、米ドル相場の年初の展開がかなり見通しやすくなったと言えそうです。4月の日銀による異次元の金融緩和以降、日銀の追加緩和は行われていませんが、来年4月の消費増税に合わせた追加緩和が実施されるとの観測の強まりも円安見通しを強めているようです。日々の値動きの中でも調整的な下落はつきものですが、米ドル/円については、3月末に向けて110円に近づく可能性は十分に整いつつある環境になっているような気がします。
ユーロ相場は、「この先のECB理事会では政策金利の追加緩和措置がない」との見通しに固執するようなユーロ買いには、やや慎重になったほうが良いでしょう。2013年の後半になって改善傾向を示す経済指標の発表が続いていることや、ギリシャ、ポルトガルなどの財政問題を抱える国々の悪いニュースが出て来なくなっているのも事実ですが、こうした問題の解決には十分ではありません。むしろ、何時こうした問題が再燃してもおかしくないはずです。米ドルの利回りがゆっくり上昇する傾向にあるのとは対照的に、ECBの追加緩和も含め、年後半に向けて利回りもゆっくりと低下して行くでしょう。こうした利回り格差の変化もそろそろユーロの反落に備えることを示唆しています。多くの市場のプロ達のポジショニングを誤らせることになった2013年後半のユーロ高相場も、さすがに2014年に入っても続くとは思いません。現在のユーロの堅調さが気になる方は、1.35米ドル前半の重要サポートを切ったのを確認してからの参入でいいと思いますが、ファンダメンタルから判断しても、ユーロはどこかの時点で大きく崩れ始めてもおかしくないと思われます。
豪ドルは、足元の値動きに限れば一番解りやすい展開になりそうです。夏から秋にかけて不安視された中国経済が落ち着いているとはいえ、最近の豪州の経済指標からも2014年の経済が強くなるような兆候は確認されていません。それよりも、足元の景気を支えるためにも豪ドルが今の水準よりもさらに低下することが必要だと豪中央銀行が度々声明を出しています。スティーブンス総裁はじめ他の高官からも同様の発言があり、具体的には0.90米ドル以上の豪ドルは豪経済にふさわしくないとまで示唆されています。また、先の豪RBA理事会後には、現在よりも弱い0.85米ドル辺りの為替水準が望ましいとまで示されています。2014年初頭は、豪RBAに敬意を表して0.85米ドルから0.90米ドルのレンジを目指した相場を考えて良さそうです。何時でもそうなるわけではありませんが、豪ドル相場に関しては市場参加者が金融当局の方針に従い易い相場局面にあるように思えます。想定外に反発するような場面では、思い切った豪ドル売りに妙味がありそうです。