8月2日に発表された7月の米雇用統計では、失業率が7.4%となり、2008年12月以来4年7ヵ月ぶりの低水準になった。しかし、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数の伸びが+16.2万人と市場予想の18.5万人を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の結果が下方修正された上、労働者全体の労働時間、時間当たり賃金も減少する結果となった。この結果を受けて、米ドル/円は99.90円から98.91円まで下落、その後一時値を戻したものの、再び軟調な動きとなり98.66円まで下落する動きとなった。【図1参照】。
雇用統計Live中継への入場はこちら
(9/6(金)21:15〜放送開始予定 ※USTREAM(外部サイト)へ遷移します。)
前回指標発表時(8/2)の振返り 米ドル/円
- ※出所:FX総合分析チャート 15分足
他の通貨も動きがありました。
ファンダメンタル分析とは?ニュースで聞くような経済指標を読んで相場を分析すること。特に重要な指標をいくつかご紹介! |
発表スケジュールをチェック!
米8月ADP雇用統計 前月比 (ADP発表)
事前予想 |
18.5万人 |
|
前回発表 |
20.0万人 |
---|
発表予定 |
9/5(木) 21:15(日本時間) |
---|
米8月雇用統計 非農業部門雇用者数変化 前月比 (米労働省発表)
事前予想 |
18.0万人 |
|
前回発表 |
16.2万人 |
---|
発表予定 |
9/6(金) 21:30(日本時間) |
---|
過去データをチャートで確認!
米雇用統計 非農業部門雇用者数月次推移(米労働省発表)
- ※Market Win24のデータを元にSBI証券が作成
雇用統計直前レポート
雇用統計Live中継への入場はこちら
(9/6(金)21:15〜放送開始予定 ※USTREAM(外部サイト)へ遷移します。)
8月2日に発表された7月の米雇用統計では、失業率が7.4%となり、2008年12月以来4年7ヵ月ぶりの低水準になった。しかし、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数の伸びが+16.2万人と市場予想の18.5万人を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の結果が下方修正された上、労働者全体の労働時間、時間当たり賃金も減少する結果となった。この結果を受けて、米ドル/円は99.90円から98.91円まで下落、その後一時値を戻したものの、再び軟調な動きとなり98.66円まで下落する動きとなった。【図1参照】。
特に、前日までに発表されていたADP雇用統計、米GDP、ISM製造業指数が市場予想を上回ったことを受けて、米緩和策の早期縮小に対する期待感が高まっていた。しかし、雇用統計で雇用者数の伸びが鈍化したことを受けて、緩和策の早期縮小観測に対するネガティブな思惑が広がったことが、米ドルの下げに拍車をかけたと考えられる。
【図1】米ドル/円 10分足
- 【図1】出所:総合分析チャート
非農業部門雇用者数は、5月分が+19.5万人から+17.6万人に、6月分が+19.5万人から+18.8万人にそれぞれ下方修正された。そして、7月分を加味すると、前月からの実質的な雇用者数の伸びは+13.6万人となった。その結果、6ヵ月平均値は+19.98万人と、再び20万人を下回る結果となった。【表2参照】。 また、民間部門の雇用者数も+16.1万人と、市場予想の+19.5万人を下回る結果となり、部門別では小売りが約+4.7万人と過去8ヵ月間で最大の伸びを示したが、教育・医療関連は1年ぶりの低い伸び幅となった。建設部門は2ヵ月ぶりにマイナスとなったものの、製造業は5ヵ月ぶりにプラスとなった。
失業率の改善は、失業者数が前月から-26.3万人と改善したことや、就業者数が+22.7万人となったことが寄与した。しかし、パートタイム雇用が+17.4万人となり、フルタイム雇用の+9.2万人を上回ったことで、正社員の雇用が低迷していることや、職探しをあきらめた労働者が98.8万人と、前年同月の85.2万人から増加した。また、労働時間が減少したことや、時給が昨年10月以降で初めて前月比でマイナスとなったことなど、懸念される材料もある。
7月の雇用統計の結果は悲観する内容ではないが、就業者数の伸びにはやや遅行性があることから、今後雇用者数の増加が抑えられる可能性も考えられる。そのため、米国の経済成長は依然として不安定で減速しやすいとの指摘もある。
【表2】統計結果と今回の市場予想
|
8月市場予想 |
7月 |
6月 |
5月 |
4月 |
3月 |
2月 |
1月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
失業率(%) |
7.4 |
7.4 |
7.6 |
7.6 |
7.5 |
7.6 |
7.7 |
7.9 |
非農業部門雇用者数(万人) |
18.0 |
16.2 |
18.8 |
17.6 |
19.9 |
14.2 |
33.2 |
14.8 |
民間部門雇用者数(万人) |
18.0 |
16.1 |
19.6 |
18.7 |
18.8 |
15.4 |
31.9 |
16.4 |
製造業部門雇用者数(万人) |
0.5 |
0.6 |
-0.3 |
-0.5 |
-0.7 |
-0.4 |
2.3 |
1.4 |
- 【表2】出所:SBIリクイディティ・マーケット作成
- ※市場予想は9月3日現在の平均値
前回7月のFOMCでは、年内に緩和策の縮小開始で一致しているものの、一部では9月からの縮小を支持する意見も出ている。そのため、緩和策縮小を判断するに当たり、9月までの経済データを見極めるとしている。ただ、7月の雇用統計の結果を受けて、早期の緩和策縮小観測が後退しており、必然的に8月の雇用統計の注目度が上昇している。FRBは雇用統計だけを基に緩和策縮小の判断をするわけではないが、米国経済の最大の問題が雇用問題であることから、マーケットでも雇用統計が特に重要視されている。
今回の8月の雇用統計では、失業率が7.4%と前回から横ばいがコンセンサスとなっている【表2参照】。ただ、先に発表された米GDP改定値が市場予想を上回る結果となり、速報値から大きく上方修正されている。GDPが改善すると失業率も改善するとの法則(オークンの法則)に基づくと、今回発表の失業率は改善する可能性も考えら、バーナンキFRB議長が資産買い入れ終了時の予想失業率として示した7%の水準に近付くことにもなる。しかし、景気動向を敏感に映す非農業部門雇用者数の市場予想は+18.0万人となっており【表2参照】、この結果では、一つの目安となる+20万人に達しない上、6ヵ月平均でも+20万人と大きく下回る結果となる。やはり、+20万人を超えなければ、インパクトは弱いだろう。そして、統計の結果は、緩和策の縮小時期に関する思惑を左右することから、9月縮小開始を裏付ける結果となれば「米ドル買い」に反応し、縮小観測が弱まるようなら「米ドル売り」に反応する可能性が考えられる。