2018/03/13
提供:三菱UFJ国際投信
「投資環境ウィークリー」3月12日号より抜粋
金融市場は落ち着きを取り戻せずにいます。今年に入り、米国税制改革のマイナス面である景気過熱がインフレを招くリスク、FRB(連邦準備理事会)議長交代で利上げが加速し景気拡大終了を早めるリスクが意識され始めていたなか、トランプ政権の鉄鋼・アルミ輸入関税案発表を受けた貿易戦争リスクが追い打ちをかけました。これらリスクが顕在化した場合、懸念されるのが新興国への影響です。
新興国にとって、米金利上昇は米ドル建て中心の対外債務の返済負担増、世界的な貿易縮小は相対的な輸出依存の高さゆえ景気への影響も大きく、資本流出圧力を高めかねません。新興国は昨年より景気回復が定着、金融緩和修正を模索し始めましたが、目的が金利水準の正常化でなく、近年見られたような通貨防衛となれば内需失速を招く恐れがあります。リスク選好の流れに乗り活況が続いた新興国市場ですが、こうした不安が長引けば資金の流れが反転する懸念があります。
◆日本:日本株は相対的に戻りの鈍さが目立ちます(日経平均株価は1月23日〜2月14日:▲12.3%⇒2月14日〜3月9日:+1.5%の一方、NYダウは1月26日〜2月8日:▲10.4%⇒2月8日〜3月9日:+6.2%)。米ドル円相場は足元1米ドル=106円近辺で推移、このまま企業想定(110円程度)を超える円高が続けば、2018年度の業績下振れ懸念が拭えず海外投資家の買いも停滞、株価反発も限られる見通しです。
◆米国:13日の消費者物価(2月)は、総合・コア(除く食品・エネルギー)ともに上昇率が高まれば、利上げ加速への思惑浮上で金利上昇圧力が強まるとみます。14日の小売売上高(2月)は復興需要の反動や大寒波の影響で弱かった1月から反発を見せるかが焦点です。金利上昇・株安下でも安定が続く消費者心理(16日に消費者信頼感指数(3月速報))に沿った動きとなれば株価を下支えるとみます。
◆ユーロ圏:ECB(欧州中銀)は8日の理事会で、現行の資産買入れ策(APP)を拡大する可能性は低いと示唆する一方、物価について勝利宣言は出来ないとするなど慎重な見方も残しています。ECBの中枢かつハト派(金融引き締めに慎重)でもある、14日のドラギ総裁(任期は来年10月まで)、コンスタンシオ副総裁(今年5月まで)、チーフ・エコノミストであるプラート理事(来年5月まで)の講演から同様の姿勢が確認されれば、ユーロ相場の上値余地は限られるとみます。
◆中国:14日に鉱工業生産、小売売上高、都市部固定資産投資(1-2月)が発表されます。1-2月の国家統計局PMIを見る限り、いずれも減速の見込みです。全人代(20日閉幕)では過剰設備・債務削減を含め従来の構造改革を前進させる方針が強調され、短期的な景気下押しは避けられないとみます。中国景気減速は年初来、頭打ち傾向が強まる原油・鉱物資源価格の重石になる見通しです。(瀧澤)
今週・来週の主要経済指標と政治スケジュール
3/12(月) |
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(欧)ユーロ圏財務相会合 |
3/13(火) |
(米)2月 消費者物価(前年比) |
3/14(水) |
(日)1月 機械受注(船舶・電力除く民需、前月比) |
3/15(木) |
(米)3月 ニューヨーク連銀景気指数 |
3/16(金) |
(米)2月 鉱工業生産(前月比) |
注)上記の日程及び内容は変更される可能性があります。
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