2025-05-22 13:40:11

“関税発表前の株価水準は行き過ぎも〜インド株(ADR)に注目”

2025/5/8

提供:フィリップ証券株式会社

リサーチ部:笹木 和弘

“関税発表前の株価水準は行き過ぎも〜インド株(ADR)に注目”

  • 米国株式市場は、米中貿易摩擦緩和および米国と各国との相互関税交渉の進展への期待を背景に、ダウ工業株30種平均株価、S&P500株価指数は、ともに終値で5/2まで9連騰となった。当初、相互関税を発動するとされた4/9を控えた4/7に年初来安値を付けてから19営業日目となった。S&P500は4/7安値から約18%上昇し、5/2に5700ポイントの高値を付けた。これは、トランプ米大統領が取引時間終了後、米ホワイトハウスの中庭「ローズガーデン」で演説し、各国の相互関税の税率を発表して衝撃を与えた日の4/2高値をわずかに超えた水準だ。
  • 株価が4/2の水準を超えて相互関税の発表前に遡ることとなるのは、現実的に説明が難しい。当時よりも米国経済に関する減速の兆候が増える中、主要経済における1−3月期の企業決算発表を跨いだとはいえ、行き過ぎている面があるだろう。週明け5/5以降、トランプ氏による外国映画の輸入に対する関税発表、および5/6-7に予定される米FOMC(連邦公開市場委員会)を前に、投資家は様子見姿勢に転じた。市場が冷静さを取り戻しつつある兆しと言えそうだ。
  • 米国株式市場を巡る先行き不透明な環境が続く中、インド市場に海外の投資資金が回帰し始めている。4月は2024年12月以来4ヵ月ぶりに海外投資家がインド株を買い越した。インドの代表的な株価指数のSENSEXも、5/2に8万1177ポイントと4ヵ月ぶりの高値を付けた。その背景には、内需主導経済であるという経済構造の下、金融緩和と米国との関税交渉の進展という2つの期待がある。
  • インド政府が2月に発表した2025年度予算案では、中間層の支出拡大の狙いから所得税の減税が盛り込まれている。これは、トランプ政権になって連邦政府予算の削減に動いている米国経済には見られないインド経済の優位性である。
  • 中央銀行のインド準備銀行は2月、政策金利(レポ金利)を6.5%から6.25%に引き下げて以降、4月にはさらに6%まで引き下げた。市場では利下げ継続の観測が広がっている。この点も、関税による物価上昇懸念から利下げに踏み込みにくい米FRB(連邦準備制度理事会)との違いが浮き彫りとなっている。
  • インドは米国から輸入される鉄鋼や自動車製品、医薬品について、一定量まで相互に関税をゼロとする案を米国との貿易交渉で提示している。国内総生産(GDP)比での米国向け輸出依存度が東南アジアの新興国と比べて相対的に低い中、米国との関税交渉が早期に合意に至れば、安価な輸入品の拡大により物価上昇率の落ち着きを通じて消費者の購買力が拡大することが見込まれる。さらに、インドは4/6、英国との間で自由貿易協定(FTA)の締結で合意。内需主導型経済であるインドにとって、米国との相互関税が引き下げされること、および、英国とのFTA締結はメリットが大きいと考えられる。(笹木)

ウィークリーストラテジー

S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(5/2現在)

主要企業の決算発表予定

  • 5月6日(火)
    デボン・エナジー、アシュラント、エレクトロニック・アーツ、ジェン・デジタル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、アリスタネットワークス、コアペイ、モザイク、インターナショナル・フレーバー&フレグランス、ウィン・リゾーツ、ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエーツ、エクスペディターズ、マラソン・ペトロリアム、グローバルファウンドリーズ、ゾエティス、データドッグ、ジェイコブズ・ソリューションズ、ウォーターズ、ボール、レイドス・ホールディングス、デューク・エナジー、マリオット・インターナショナル(メリーランド)、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ、グローバル・ペイメンツ、コンステレーション・エナジー、ガートナー、IQVIAホールディングス、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、WECエナジー・グループ
  • 5月7日(水)
    CFインダストリーズ・ホールディングス、コルテバ、アップラビン、フォーティネット、アトモス・エナジー、オキシデンタル・ペトロリアム、メルカドリブレ、ドアダッシュ、テキサス・パシフィック・ランド、アーム・ホールディングス、APA、ペイコム・ソフトウエア、スカイワークス・ソリューションズ、センコラ、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ビストラ・コープ、ウーバー・テクノロジーズ、チャールズリバー・ラボラトリーズ、デイフォース、ベリスク・アナリティクス、ジョンソンコントロールズインターナショナル、ブンゲ・グローバル、マーケットアクセス・ホールディングス、エマソン・エレクトリック、バイオテクネ、CDW、ロックウェル・オートメーション、ナイソース、トリンブル
  • 5月8日(木)
    アライアント・エナジー、ザ・トレードデスク、ソルベンタム、TKOグループ・ホールディングス、アカマイ・テクノロジーズ、インシュレット、マケッソン、エクスペディア・グループ、パラマウント・グローバル、マイクロチップ・テクノロジー、ニューズ・コーポレーション、センプラ、タペストリー、コノコフィリップス、ビアトリス、マッチ・グループ、エバジー、ワーナーブラザース・ディスカバリー、EPAMシステムズ、ケンビュー、モルソン・クアーズ・ビバレッジ
  • 5月12日(月)
    フォックス

主要イベントの予定

  • 5月5日(月)
    • 米S&Pグローバルサービス業・総合PMI(4月)、米ISM非製造業総合景況指数(4月)
  • 5月6日(火)
    • 米FOMC(7日まで)
    • 米貿易収支(3月)
  • 5月7日(水)
    • 米FOMC最終日・声明発表とパウエルFRB議長記者会見
    • 米消費者信用残高(3月)
  • 5月8日(木)
    • 米新規失業保険申請件数 (5月3日終了週)、米卸売在庫(3月)、米ニューヨーク連銀1年先期待インフレ率(4月)
  • 5月9日(金)
    • 米ニューヨーク連銀総裁・クーグラーFRB理事・バーFRB理事が基調講演(レイキャビク)、米ウォラーFRB理事とボウマンFRB理事・ニューヨーク連銀総裁・セントルイス連銀総裁・クリーブランド連銀総裁がパネル討論会に参加
  • 5月12日(月)
    • 米財政収支(4月)
  • Bloombergをもとにフィリップ証券作成

銘柄ピックアップ

コーニング (GLW)NYSE 2025/7/30に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 1851年創業。世界最大級のガラス製品メーカーであり、液晶ディスプレイ用ガラスパネル、光通信の光ファイバー、ガソリン微粒子排出物制御用のセラミック基板・フィルター製品などが主力製品。
  • 4/29発表の2025/12期1Q(1-3月)は、非GAAPのコア売上高が前年同期比12.9%増の36.79億USD(会社予想:36億USD)、コアEPSが同42.1%増の0.54USD(同:0.48-0.52USD)と会社予想範囲を超過。生成AI(人工知能)関連の大量・高速データ通信を支える光ファイバー需要の追い風を受けた。
  • 2025/12期2Q(4-6月)会社計画は、コア売上高が前年同期比7%増の38.5億USD、コアEPSが同17-26%増の0.55-0.59USD(トランプ関税による負の影響0.01-0.02USDを含む)。売上比率37%の光ファイバー通信事業の1Qは、データセンターにおける生成AI関連新製品の需要増を受けて46%増収、純利益が101%増。米中貿易摩擦は、米国製太陽光製品の需要増を通じて追い風となる面もある。

HDFC銀行 (HDB)NYSE 2025/7/18に2026/3期1Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 1994 年に中央銀行のインド準備銀行(RBI) の一部を母体として設立承認を受けた。民間銀行インド最大手。24年3月末時点で、国内に8738支店と2万0938台のATMの店舗網を有する。
  • 4/19発表の2025/3期4Q(1-3月)は、営業収益が前年同期比9.2%減の7328億INR(インドルピー)、純利益が同6.9%増の1884億INR。銀行単体では、純金利収益が10%増も、非金利収益が34%減が響き減収。経費率が0.9ポイント改善に加え、貸倒引当金繰入額が72%減(381億INR)と増益に寄与。
  • 3月末貸出残高が前年同期比5.4%増(うち個人向けが9.0%増)と堅調に伸びたことに加え、4Q純金利マージン(NIM)が0.1ポイント上昇の3.7%へ改善した。2023年7月にグループの住宅開発金融公社(HDFC)を吸収合併したこともあり、住宅ローン分野を成長戦略の柱とする経営方針を掲げる。インド経済は内需主導型であり、住宅・自動車のローンなど、個人向け融資の伸びが見込まれる。

ICICI銀行 (IBN)NYSE 2025/7/25に2026/3期1Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 1955年に世界銀行とインド政府の主導で設立された「開発金融機関」を母体とする。民間銀行でインド第2位の規模。24年3月末時点で、国内に6523支店と1万7190台のATMの店舗網を有する。
  • 4/19発表の2025/3期4Q(1-3月)は、営業収益が前年同期比9.3%増の2825億INR(インドルピー)、純利益が同17.9%増の1263億INR。純金利収益が11.0%増の2119億INR、手数料収入が16.0%増の630億INRと堅調に推移。経費率が0.6ポイント低下して38.2%と改善し、利益面で貢献した。
  • 3月末貸出残高が前年同期比13%増と堅調に伸びたことに加え、4Qの純金利マージン(NIM)が同0.01ポイント上昇の4.41%と、中央銀行のインド準備銀行が2月から政策金利引き下げに転じた中でもNIMが高止まりしている。また、3月末不良債権比率(グロス)が1.67%で2024年12月末比で0.29ポイント低下と、貸出残高の積極拡大と貸出のクオリティ向上を両立させている点は注目される。

バルカン・マテリアルズ (VMC)NYSE 2025/8/6に2025/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 1909年創業の建設資材メーカー。骨材サプライヤー最大手。骨材、砂利、アスファルト混合物、生コンクリートが主要製品。アラバマ州バーミンガムを拠点に東海岸〜西海岸に至る流通網を持つ。
  • 4/30発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.8%増の16.35億USD、非GAAPの継続事業からの調整後EPSが同25.0%増の1.00USD。骨材出荷量が0.6%減も、輸送費調整後のトン当たり製品単価が7%上昇、トン当たり現金ベース粗利益が20%増の10.63USDと堅調に推移した。
  • 通期会社計画は、調整後EBITDAが前期比14-24%増の23.5-25.5億USDと、従来計画を据え置いた。1Qの純利息費用が前年同期比53%増の0.59億USDとなる中、同社は、金利動向が業績予想の重要な要素になると見ている。トランプ大統領による関税導入の目的は、米国内の製造業を復活させることにある。紆余曲折が予想されるものの、工場建設向け建設資材需要の拡大が期待される。

ウィプロ (WIT)NYSE 2025/7/18に2026/3期1Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 1945年設立の老舗企業。インド・バンガロールが本拠の国内第2位のIT企業。グローバル企業を顧客にソフトウェアの開発・保守のほか、情報システムのアウトソーシングによるソリューションを提供。
  • 4/16発表の2025/3期4Q(1-3月)は、売上高が前年同期比1.2%減の26.34億USD(会社予想26.02-26.55億USD)、純利益が同22.1%増の4.20億USD。ITサービス事業(売上比率98.5%)は同2.3%減収も、営業利益率が1.1ポイント上昇、大口(3000万USD以上)案件の受注高が49%増の18億USD。
  • 2026/3期1Q(4-6月)会社計画は、ITサービス事業の売上高が前年同期比8-10%減の25.05-25.57億USD。米国での事業比率が高いインドITサービス関連株は株価の伸び悩みが目立つ中、米国とインドの相互関税協議は合意が近いとの観測が台頭。インドと英国の自由貿易協定合意も追い風だろう。グローバル企業の裁量的支出減少の懸念の一方、インド経済の内需拡大加速が期待される。

WNSホールディングス (WNS)NYSE 2025/7/18に2026/3期1Q(4-6月)の決算発表を予定

  • 日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値 (陰線)」なら緑、「始値<終値 (陽線)」なら赤。
  • 1996年設立。インドのムンバイを本拠とし、データ・音声・分析などの総合的なサービスを含むビジネスプロセス管理(BPM)を手がける。グローバルBPM、自動車クレーム(請求)BPMの2事業を営む。
  • 4/24発表の2025/3期4Q(1-3月)は、売上高が前年同期比1.0%増の3.36億USD、非GAAPの調整後EPSが同39.4%増の1.45USD。調整後営業利益率が2.1ポイント上昇の21.4%。4Qの地域別売上高比率は、北米が49%、英国が24%、欧州連合(EU)が8%。業種別では保険が29%を占めた。
  • 2026/3通期会社計画は、自動車修理費を除く売上高が前期比7-11%増の13.52-14.04億USD、調整後純利益が同5%減〜1%増の1.99-2.11億USD。同社が手がける事業分野(バックオフィス関連)はトランプ関税の影響を受けにくい分野であることに加え、コスト削減が経営課題となった場合に非中核業務としてアウトソーシングの対象になりやすく、外部環境に左右されにくい特性がみられる。
  • 決算発表の予定は5/2現在であり、変更される可能性があります。

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