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2024-12-09 01:05:35

マーケット > レポート > 米国ウィークリー・マンスリー >  “米大統領選の向こう側~財政支出拡大への懸念”

“米大統領選の向こう側~財政支出拡大への懸念”

2024/11/6
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘

“米大統領選の向こう側~財政支出拡大への懸念”

  • 米大統領選と米連邦議会選の投開票日(11/5)が直前に迫ってきた。直前の世論調査では、大統領選は接戦、上院は共和党が優勢、下院はほぼ互角との見方が多数の模様だ。大統領選はスイング・ステートと呼ばれる激戦7州では共和党トランプ候補が僅差リードとされる中、過去2回の大統領選でトランプ候補が勝利していたアイオワ州で民主党ハリス候補が世論調査で優勢となるなど接戦が激化している。一部州の得票数確定まで日数がかかることも考えられる。
  • 両候補は政策実現の具体的な財源を示していない。米国の超党派非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によれば、トランプ政策による政府債務増加が7.5兆ドル、2035年末までに財政赤字の対GDP比が142%に達するのに対し、ハリス氏の場合は政府債務の増加が3.5兆ドル、2035年末までに財政赤字の対GDP比が133%に達する。そこで問題となるのが、昨年6/5より停止されていた連邦債務の上限適用が来年2月に復活することだ。大統領職および上下院ともに共和党が制した場合、財政支出拡大への歯止めが効きにくいだろう。大統領と議会の「ねじれ」も、政治的分断から政権運営のハードルが上がることとなる。
  • 米格付け大手ムーディーズが9/24に公表した、米大統領選後の米政府の信用リスク分析レポートは、債務増加など財政の悪化に歯止めがかからない場合、現在の信用格付け「Aaa(最上位格)」との整合性がとれなくなるとし、格下げの可能性を警告している。11/1の米国債市場は、10月の雇用統計やISM(供給管理者協会)製造業景況指数が軟調にもかかわらず、長期金利が大幅に上昇。大統領選後の米国金融市場は、新政権による財政拡張政策が長期金利上昇に拍車をかけやすくなることが想定される。インフレ懸念が利下げ観測の後退に結び付きやすくなる一方で、インフレが景気指標を悪化させてソフトランディング・シナリオを崩してしまう場合は利下げの継続もあり得るだろう。為替については、前者ならドル高、後者ならドル安になることが考えられる。
  • 米国ウィークリーの先週号(2024年10月29日号)で、ダウ工業株30種平均株価(ダウ平均)が1153日の対等日数から、今年10/21が転換日となる可能性に触れた。また、2024年9月25日号では、9/18の1年以上のピーク据え置き後に0.5ポイントの政策金利大幅利下げを実施した2007年との類似性について述べた。2007年は景気のソフトランディング期待が高まり、その後年内2回の0.25ポイント政策金利引き下げが実施された。原油価格高騰を背景にインフレが再燃。ダウ平均は10/11に年間高値を付け、各種景気指標は12月以降に悪化した。
  • 個別銘柄の物色は、たとえ減収でも利益率を高め、キャッシュフローを増加させるような堅実な経営スタンスの企業への投資が当面望ましいだろう。(笹木)
  • 11/6号は、アッヴィ(ABBV)アマゾン・ドット・コム(AMZN)クラフト・ハインツ(KHC)シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)ウエイスト・マネジメント(WM)ザイレム(XYL)を取り上げた。

ウィークリーストラテジー

S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(11/1現在)

主要企業の決算発表予定

11月5日(火)アシュラント、デボン・エナジー、マイクロチップ・テクノロジー、インターナショナル・フレーバー&フレグランス、ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエーツ、スーパー・マイクロ・コンピューター、ヤム・ブランズ、エクスペディターズInt'lオブワシントン、カミンズ、グローバルファウンドリーズ、ビルダーズ・ファースト・ソース、ヘンリー・シャイン、タルガ・リソーシズ、マラソン・ペトロリアム、エマソン・エレクトリック、ガートナー、ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ、デュポン・ド・ヌムール、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ダイヤモンドバック・エナジー、イルミナ、セラニーズ、ホロジック、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、NXPセミコンダクターズ、バーテックス・ファーマシューティカルズ、エバーソース・エナジー、パランティア・テクノロジーズ、ウィン・リゾーツ、フランクリン・リソーシズ、フォックス、マリオット・インターナショナル(メリーランド)、リビティ、ゾエティス、ロウズ、Constellation Energy Corp、パブリック・サービス・エンタープライズ・グルーフ、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ
11月6日(水) コルテバ、ARM Holdings PLC、アルベマール、アトモス・エナジー、ギリアド・サイエンシズ、APA、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、ホスト・ホテル・アンド・リゾート、マケッソン、PTC、アメレン、マッチ・グループ、アンシス、ウィリアムズ・カンパニーズ、ステリス、マラソン・オイル、フェア・アイザック、クアルコム、メルカドリブレ、ハウメット・エアロスペース、CVSヘルス、センコラ、アメリカン・エレクトリック・パワー、ジョンソンコントロールズインターナショナル、アイアンマウンテン、チャールズリバー・ラボラトリーズIntl、マーケットアクセス・ホールディングス、センプラ、トリンブル
11月7日(木)エクスペディア・グループ、フォーティネット、インシュレット、アカマイ・テクノロジーズ、メトラー・トレド・インターナショナル、アリスタネットワークス、EOGリソーシズ、ソルベンタム、ザ・トレードデスク、ニューズ・コーポレーション、コンソリデーテッド・エジソン、エアビーアンドビー、アクソン・エンタープライズ、コアペイ、モトローラ・ソリューションズ、ラルフローレン、デューク・エナジー、モルソン・クアーズ・ビバレッジ、ベクトン・ディッキンソン、ハリバートン、PG&E、ビストラ・コープ、EPAMシステムズ、ハーシー、ワーナーブラザース・ディスカバリー、ビアトリス、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、ケンビュー、モデルナ、エバジー、データドッグ、タペストリー、ロックウェル・オートメーション、トランスダイム・グループ
11月8日(金)NRGエナジー、パラマウント・グローバル、バクスターインターナショナル
11月11日(月)

主要イベントの予定

11月5日(火)
  • 米大統領選挙・連邦議会選挙
  • 米貿易収支(9月)、 米ISM非製造業総合景況指数(10月)
11月6日(水)
  • FOMC(7日まで)、S&Pグローバル米サービス業・総合PMI(10月)
11月7日(木)
  • 米FOMC声明発表・FRB議長記者会見
  • 米新規失業保険申請件数(11月2日)、 米労働生産性(7-9月)、米卸売在庫(9月)、米消費者信用残高(9月)
11月8日(金)
  • アップルが新型「Mac mini」の店頭販売を開始、G20文化相会合(ブラジル・サルバドール)
  • 米ミシガン大学消費者マインド指数(11月)
11月11日(月)
  • ベテランズ・デー(米債券市場が休場)
  • ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成

銘柄ピックアップ

アッヴィ(ABBV)市場:NYSE・・・2025/2/3に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

  • 2013年にアボット・ラボラトリーズ(ABT)から分社化。自己免疫疾患、オンコロジー、ウイルス学等の領域で医薬品を提供。関節リウマチ薬「ヒュミラ」が主力。分社化前から通算で50年連続増配中。
  • 10/30発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比3.8%増の144.60億USD、非GAAPの調整後EPSが同1.7%増の3.00USD。免疫疾患(売上比率49%)の内、昨年特許切れとなったヒュミラが同37%減収も、乾癬性関節炎治療薬のスカイリッジとリンボクが各々同51%、同45%増収と拡大。
  • 通期会社計画を上方修正。買収関連の仕掛研究開発費(IPR&D)を含む調整後EPSを前期比▲1.9-▲1.5%の10.90-10.94USD(従来計画10.67-10.87USD)とした。更に、来年2月支払いの四半期配当を前四半期比5.8%増配とした。医薬品の年商世界首位だったヒュミラが他社後発品に押されるも、免疫疾患領域に加え、精神・神経疾患領域でも今年8月にセレベルを約87億USDで買収した。

アマゾン・ドット・コム(AMZN)市場:NASDAQ・・・2025/1/31に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

  • 1994年設立のECサイト・Webサービス会社。クラウド基盤提供のAWSのほか、Amazonプライム、フルフィルメントby Amazon、Kindle、Fireタブレット、Fire TV、Amazon Echo、Alexaなどの製品を提供。
  • 10/31発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比11.0%増の1588億USD、営業利益が同55.6%増の174.11億USD。ネット通販は広告事業や物流網再構築の貢献により売上高が同10%増の1314億USD、営業利益が同65%増の69億USD。AWSの営業利益は同50%増の104億USD。
  • 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比7-11%増の1815-1885億USD、営業利益が同21-52%増の160-200億USD。3Q実績が会社予想上限(売上高1585億USD、営業利益150億USD)を上回った勢いの持続が期待される。3Qは広告事業が人工知能(AI)活用が奏功し同19%増収、Amazonプライムなど定額課金収入も同14%増。インフレの影響を受けにくい収益構造に強み。

クラフト・ハインツ(KHC)市場:NASDAQ・・・2025/2/14に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

  • 1869年設立の加工食品メーカー。チーズ加工品、ケチャップその他加工食料品を扱う。チーズの「クラフト」、ケチャップの「ハインツ」、飲料の「カプリ・サン」や「クールエイド」等のブランドを擁する。
  • 10/30発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比2.8%減の63.83億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.2%増の0.75USD。調整後粗利益率が同0.3ポイント改善した。為替と事業売却の影響を除けば、北米が同4.4%減収も、海外先進国市場が同0.8%減収、新興国市場が同1.1%増収。
  • 通期会社計画は、為替と事業売却の影響を除く増収率が前期比2%減-横ばい、調整後EPSが同1-3%増の3.01-3.07USDと従来計画と同じレンジながら、それぞれレンジ下限見込みへ悪化。同社株は著名投資家バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイの保有銘柄。11/1終値で、市場予想PERが11倍台、予想配当利回りが4.79%と割安水準にある他、減収でも利益率が悪化しにくい点も注目される。

シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)市場:NYSE・・・2025/1/24に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

  • 1866年設立の塗料・コーティング剤メーカー。塗料は建築・工業用塗料業者やDIY業者向けOEM製品仕上げ等のほか、消費者向けブランド、自動車補修・船舶用・コイル・包装用塗料も取り扱う。
  • 10/22発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比0.7%増の61.62億USD、非GAAPの調整後EPSが同5.3%増の3.37USD。売上比率59%の塗料店舗部門が同3.2%増収と、消費者ブランド、特殊用途コーティングの2部門の減収を吸収。他方、利益面は消費者ブランド部門が貢献した。
  • 通期会社計画は、増収率を前期比横ばい~1桁台前半(従来計画:同1桁台前半)へ下方修正。調整後EPSは同7-10%増の11.10-11.40USDと従来計画を据え置いた。同社は北米最大の塗料メーカーとして5千超の店舗網を擁するほか2017年に米バルスパー社を買収。コーティング剤メーカーとしても世界3強の一角を占める。米国でインフラ老朽化に伴う中長期的な改修需要が期待される。

ウエイスト・マネジメント(WM)市場:NYSE・・・2025/1/24に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

  • 1968年設立。全米最大規模の廃棄物管理サービス会社であり、廃棄物の回収、移送、リサイクル、資源回収、処分を行う。廃棄物再エネルギー化施設の開発・運営・所有業者としても全米首位。
  • 10/28発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比7.9%増の56.09億USD、非GAAPの調整後営業EBITDAが同11.0%増の17.11億USD。リサイクル可能資源の堅調な市況の追い風の下、サービス提供価格引上げおよびコスト最適化により、調整後営業EBITDAマージンが同0.9ポイント上昇。
  • 通期会社計画を上方修正。増収率を前期比6%(従来計画:5.00-5.75%)とした他、調整後営業EBITDAを同10%増の65億USD(同:63.75-65.25億USD)と、レンジ上限近辺とした。同社は規制など参入障壁の高い、競争が緩やかな市場分野で同業他社の買収により拡大を図るのを基本的な成長戦略とする。今年6月発表の医療廃棄物処理ステリサイクル買収(約58億USD)も年内完了見通し。

ザイレム(XYL)市場:NYSE・・・2025/1/23に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定 

(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら、「始値<終値(陽線)」なら

  • 2011年にコングロマリット企業のITT(ITT)から水機器サービス部門がスピンオフして設立。上下水道用の機器・装置を設計・製造・販売し、関連サービスを提供。世界150ヵ国以上で事業を展開。
  • 10/31発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比1.3%増の21.04億USD、非GAAPの調整後EPSが同12.1%増の1.11USD。世界各地の水関連ビジネス需要増を受けた販売価格引上げおよび生産性向上によりコスト増を吸収し、調整後EBITDAマージンが同1.4ポイントの21.2%へ改善。
  • 通期会社計画は、既存事業(オーガニック)の増収率を前期比5%(従来計画:5-6%)と下方修正の一方、調整後EPSを同11.6-12.2%増の4.22-4.24USD(同:4.18-4.28USD)とレンジを縮小した。米国環境保護庁(EPA)は今年4月、飲料水中のPFAS(有機フッ素化合物)に関して、法的拘束力のある基準を設定。2025年以降、国民にとって安全な飲料水のための検査需要が高まることが見込まれる。
  • (※)決算発表の予定は現地11/1現在であり、変更される可能性があります。

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