“米大統領選の向こう側~財政支出拡大への懸念”
- 米大統領選と米連邦議会選の投開票日(11/5)が直前に迫ってきた。直前の世論調査では、大統領選は接戦、上院は共和党が優勢、下院はほぼ互角との見方が多数の模様だ。大統領選はスイング・ステートと呼ばれる激戦7州では共和党トランプ候補が僅差リードとされる中、過去2回の大統領選でトランプ候補が勝利していたアイオワ州で民主党ハリス候補が世論調査で優勢となるなど接戦が激化している。一部州の得票数確定まで日数がかかることも考えられる。
- 両候補は政策実現の具体的な財源を示していない。米国の超党派非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によれば、トランプ政策による政府債務増加が7.5兆ドル、2035年末までに財政赤字の対GDP比が142%に達するのに対し、ハリス氏の場合は政府債務の増加が3.5兆ドル、2035年末までに財政赤字の対GDP比が133%に達する。そこで問題となるのが、昨年6/5より停止されていた連邦債務の上限適用が来年2月に復活することだ。大統領職および上下院ともに共和党が制した場合、財政支出拡大への歯止めが効きにくいだろう。大統領と議会の「ねじれ」も、政治的分断から政権運営のハードルが上がることとなる。
- 米格付け大手ムーディーズが9/24に公表した、米大統領選後の米政府の信用リスク分析レポートは、債務増加など財政の悪化に歯止めがかからない場合、現在の信用格付け「Aaa(最上位格)」との整合性がとれなくなるとし、格下げの可能性を警告している。11/1の米国債市場は、10月の雇用統計やISM(供給管理者協会)製造業景況指数が軟調にもかかわらず、長期金利が大幅に上昇。大統領選後の米国金融市場は、新政権による財政拡張政策が長期金利上昇に拍車をかけやすくなることが想定される。インフレ懸念が利下げ観測の後退に結び付きやすくなる一方で、インフレが景気指標を悪化させてソフトランディング・シナリオを崩してしまう場合は利下げの継続もあり得るだろう。為替については、前者ならドル高、後者ならドル安になることが考えられる。
- 米国ウィークリーの先週号(2024年10月29日号)で、ダウ工業株30種平均株価(ダウ平均)が1153日の対等日数から、今年10/21が転換日となる可能性に触れた。また、2024年9月25日号では、9/18の1年以上のピーク据え置き後に0.5ポイントの政策金利大幅利下げを実施した2007年との類似性について述べた。2007年は景気のソフトランディング期待が高まり、その後年内2回の0.25ポイント政策金利引き下げが実施された。原油価格高騰を背景にインフレが再燃。ダウ平均は10/11に年間高値を付け、各種景気指標は12月以降に悪化した。
- 個別銘柄の物色は、たとえ減収でも利益率を高め、キャッシュフローを増加させるような堅実な経営スタンスの企業への投資が当面望ましいだろう。(笹木)
- 11/6号は、アッヴィ(ABBV)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、クラフト・ハインツ(KHC)、シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)、ウエイスト・マネジメント(WM)、ザイレム(XYL)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(11/1現在)
主要企業の決算発表予定
11月5日(火) | アシュラント、デボン・エナジー、マイクロチップ・テクノロジー、インターナショナル・フレーバー&フレグランス、ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエーツ、スーパー・マイクロ・コンピューター、ヤム・ブランズ、エクスペディターズInt'lオブワシントン、カミンズ、グローバルファウンドリーズ、ビルダーズ・ファースト・ソース、ヘンリー・シャイン、タルガ・リソーシズ、マラソン・ペトロリアム、エマソン・エレクトリック、ガートナー、ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ、デュポン・ド・ヌムール、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ダイヤモンドバック・エナジー、イルミナ、セラニーズ、ホロジック、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、NXPセミコンダクターズ、バーテックス・ファーマシューティカルズ、エバーソース・エナジー、パランティア・テクノロジーズ、ウィン・リゾーツ、フランクリン・リソーシズ、フォックス、マリオット・インターナショナル(メリーランド)、リビティ、ゾエティス、ロウズ、Constellation Energy Corp、パブリック・サービス・エンタープライズ・グルーフ、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ |
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11月6日(水) | コルテバ、ARM Holdings PLC、アルベマール、アトモス・エナジー、ギリアド・サイエンシズ、APA、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、ホスト・ホテル・アンド・リゾート、マケッソン、PTC、アメレン、マッチ・グループ、アンシス、ウィリアムズ・カンパニーズ、ステリス、マラソン・オイル、フェア・アイザック、クアルコム、メルカドリブレ、ハウメット・エアロスペース、CVSヘルス、センコラ、アメリカン・エレクトリック・パワー、ジョンソンコントロールズインターナショナル、アイアンマウンテン、チャールズリバー・ラボラトリーズIntl、マーケットアクセス・ホールディングス、センプラ、トリンブル |
11月7日(木) | エクスペディア・グループ、フォーティネット、インシュレット、アカマイ・テクノロジーズ、メトラー・トレド・インターナショナル、アリスタネットワークス、EOGリソーシズ、ソルベンタム、ザ・トレードデスク、ニューズ・コーポレーション、コンソリデーテッド・エジソン、エアビーアンドビー、アクソン・エンタープライズ、コアペイ、モトローラ・ソリューションズ、ラルフローレン、デューク・エナジー、モルソン・クアーズ・ビバレッジ、ベクトン・ディッキンソン、ハリバートン、PG&E、ビストラ・コープ、EPAMシステムズ、ハーシー、ワーナーブラザース・ディスカバリー、ビアトリス、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、ケンビュー、モデルナ、エバジー、データドッグ、タペストリー、ロックウェル・オートメーション、トランスダイム・グループ |
11月8日(金) | NRGエナジー、パラマウント・グローバル、バクスターインターナショナル |
11月11日(月) |
主要イベントの予定
11月5日(火) |
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11月6日(水) |
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11月7日(木) |
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11月8日(金) |
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11月11日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
アッヴィ(ABBV)市場:NYSE・・・2025/2/3に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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アマゾン・ドット・コム(AMZN)市場:NASDAQ・・・2025/1/31に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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クラフト・ハインツ(KHC)市場:NASDAQ・・・2025/2/14に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)市場:NYSE・・・2025/1/24に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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ウエイスト・マネジメント(WM)市場:NYSE・・・2025/1/24に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
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ザイレム(XYL)市場:NYSE・・・2025/1/23に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は現地11/1現在であり、変更される可能性があります。