2025-07-06 09:27:21

マーケット > レポート > 米国ウィークリー・マンスリー >  “強い雇用と堅調なVIX指数、リターンリバーサルの動きも”

“強い雇用と堅調なVIX指数、リターンリバーサルの動きも”

2024/10/8
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘

“強い雇用と堅調なVIX指数、リターンリバーサルの動きも”

  •  雇用の強さを信じてよいのだろうか?10/4発表の9月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比25万4千人増、失業率は前月比0.1ポイント低下、平均時給は前年同月比4.0%増と、いずれも市場予想を上回る強い内容だった。これを受けて主要株価指数、米長期金利・ドル指数ともに大幅上昇。ところが、雇用者数増加が政府職員の大幅増加に支えられている面もあり、10/1発表の8月の雇用動態調査における採用件数減少も合わせると、雇用と景気に対する楽観論に帰結するのは時期尚早のように思われる。
  •  政策金利ピークの据え置き期間から今年と同じく9/18に0.5ポイントの大幅利下げを行った2007年も、10/5発表の9月の雇用統計で労働市場が底堅さを示し、10月末の利下げ観測を後退させる内容だった。実際には2007年の10/31開催FOMC(連邦公開市場委員会)で0.25ポイント利下げが行われた。S&P500株価指数はその前の10/10にピークを打って下落に転じていた。
  •  鍵を握るのはイスラエル情勢だろう。今のところ市場は事態のエスカレートを想定していないものの、直近のイランからイスラエルへのミサイル攻撃も春先と比べてイスラエルの防空網を突破する度合いが高まった。イスラエルはより危機意識を高めているはずだ。恐怖指数と呼ばれる米国株のVIX指数も4日に一時20ポイントを超えるなど、底堅さを示しているのは不気味だ。
  •  米国株はサマーラリー後の8-9月(大統領選、中間選挙年は8-10月)に調整期間を経ることで年末商戦を挟むサンタクロース・ラリーの上昇相場を描きやすい面がある。ところが、今年はそのような調整局面が明確にみられないことから、年内にそのツケを払う展開の可能性も念頭に置いたほうがよいかもしれない。2018年は米中冷戦の地政学リスクから10月上旬以降、株価が下落局面に転じていたことも想い起される。
  •  株式相場には「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の4つの相場サイクルがあるとされる。金融相場では、不景気で企業業績が悪化後、政府が景気と株価を刺激するため景気対策を講じ、中央銀行が金融緩和を行うことでカネ余りを背景とした「不景気の株高」が発生する。中国の9/24以降の一連の景気刺激策と株高は、金融相場サイクル入りが示唆される。また、中国では9/26開催の党中央政治局会議で「経済の健全な発展のため『民営経済促進法』の導入が必要」との見解が示されたことを受けて中国主要ハイテク銘柄で構成されるハンセンテック指数の上昇が目立った。長期かつ大きく売り叩かれて割安となった銘柄の「リターン・リバーサル(反転)」が次の相場局面の方向を指し示す指針となることもあり得よう。(笹木)
  • 10/8号は、アリババグループ・ホールディング(BABA) 、百度[バイドゥ](BIDU)ブリストルマイヤーズスクイブ(BMY)シェニエール・エナジー(LNG)PDDホールディングス(PDD)グローバルXウラニウムETF(URA)を取り上げた。

ウィークリーストラテジー

S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(10/4現在)

主要企業の決算発表予定

10月8日(火)ペプシコ
10月10日(木)デルタ航空、ドミノ・ピザ
10月11日(金)ウェルズ・ファーゴ、ファスナル、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、Blackrock Inc、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
10月15日(火)JBハント・トランスポート・サービシズ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、シティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、ステート・ストリート、バンク・オブ・アメリカ、チャールズ・シュワブ、ユナイテッドヘルス・グループ、プログレッシブ、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ

主要イベントの予定

10月7日(月)
  • 米ミネアポリス連銀総裁が質疑応答に参加、米アトランタ連銀総裁がNBAアトランタ・ホークスCEOとの対談で司会役、米セントルイス連銀総裁・講演、ノーベル生理学・医学賞発表、ハマスのイスラエル急襲から1年
  • 米消費者信用残高(8月)
10月8日(火)
  • 米アトランタ連銀総裁と米ボストン連銀総裁が講演、クーグラーFRB理事がECBのイベントで基調講演、ノーベル物理学賞発表
  • 米貿易収支(8月)
10月9日(水)
  • 米FOMC議事要旨 (9月17、18日開催分)、米アトランタ連銀総裁が会議で開会のあいさつ、米ダラス連銀総裁と米ボストン連銀総裁と米サンフランシスコ連銀総裁が講演、 米シカゴ連銀総裁が会議で開会のあいさつ、ノーベル化学賞発表
  • 米卸売在庫(8月)
10月10日(木)
  • NY連銀総裁が会議で基調講演、ノーベル文学賞発表
  • 米新規失業保険申請件数 (10月 5日終了週)、 米CPI(9月)、米テスラが自動運転タクシー「ロボタクシー」発表
10月11日(金)
  • 米シカゴ連銀総裁が講演、米ダラス連銀総裁がパネル討論会に参加、ノーベル平和賞発表
  • 米PPI(9月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(10月)
10月14日(月)
  • ニューヨーク連銀1年インフレ期待(9月)
10月15日(火)
  • ニューヨーク連銀製造業景気指数(10月)
  • ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成

銘柄ピックアップ

アリババグループ・ホールディング(BABA)市場:NYSE・・・2024/11/15に2025/3期2Q(7-9月)の決算発表を予定 

  • 1999年設立の中国の電子商取引世界最大手。C2C(顧客間)のECサイト「淘宝」と、B2C(企業対顧客)のECサイト「天猫(Tモール)」を運営。電子決済(支付宝)やクラウド事業なども展開する。
  • 8/15発表の2025/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比3.9%増の2432億元、非GAAPの調整後純利益が同9.4%減の406億元。売上比率10%のクラウド・インテリジェンスが同6%増収、調整後EBITDAが同2.6倍と堅調も、売上比率43%の中国コマースは同1%減収、調整後EBITDAも1%減収。
  • 2025/3期会社計画は非公表。23年9月に就任したエディー・ウーCEOは、国内外のネット通販とクラウドの3つを重点事業と位置付け、積極投資。1Qの国際事業(売上比率11%)は前年同期比32%増収と拡大も調整後EBITDAで赤字幅拡大と先行投資が嵩む時期。9/26開催の党中央政治局会議で経済の健全な発展のため「民営経済促進法」の導入が必要との見解が示されたのは追い風だろう。

百度[バイドゥ](BIDU)市場:NYSE・・・2024/10/31に2024/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定 

  • 2000年設立の中国インターネット検索エンジンとオンライン広告サービス大手。検索情報サービスのBaidu.com、会話式AIアシスタントDuerOS、自動運転エコシステムApolloなどのサービスを提供。
  • 8/22発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比0.4%増の340.56億元、非GAAPの調整後EPSが同7.3%増の22.55元。広告収入が中心のオンラインマーケティング事業は同2%減収(206億元)も、AI(人工知能)含むクラウドサービスなどの非広告事業が同3%増収(133億元)と伸長。
  • 2024/12期会社計画は未公表。同社の自動運転タクシー配車サービスは中国湖北省武漢市(人口1300万人超)の複雑な道路シーンで既に実用化。13の行政区のうち「スマートコネクテッド実験区」が12区をカバーし、自動運転「レベル4」(特定の条件下でシステムが全ての運転タスクを実施)の自動運転が許可された「実験開放道路」の総距離も着実に伸長と、テスラ(TSLA)に先行。

ブリストルマイヤーズスクイブ(BMY)市場:NYSE・・・2024/10/31に2024/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定 

  • 1887年創業。バイオ医薬品の発見、開発、ライセンス供与、製造、マーケティング、流通、販売を行う。がん、心臓病、免疫系疾患、HIVを含むウイルス感染症が重点領域。解熱剤バファリンで有名。
  • 7/26発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比8.7%増の122.01億USD、非GAAPの調整後EPSが同18.3%増の2.07USD。売上比率46%の成長ポートフォリオが同18%増収(内、オプジーボが11%増収)に対し、レガシーポートフォリオはレブラミドが減収もエリキュース堅調で同2%増収。
  • 通期会社計画を上方修正。売上高伸び率を前期比1桁台前半の上限(従来計画1桁台前半)、買収の影響を含む調整後EPSを同92-88%減の0.60-0.90USD(同:0.40-0.70USD)とした。主力の抗凝固薬エリキュースやがん免疫治療薬オプジーボの数年以内の特許切れが懸念されるなか、FDA(米食品医薬品局)が9月、同社の統合失調症薬を承認。米国の統合失調症薬として70年ぶりの承認。

シェニエール・エナジー(LNG)市場:NYSE・・・2024/11/1に2024/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定 

  • 1983年設立の液化天然ガス(LNG)事業者で生産規模は米国首位・世界第2位。世界最大規模のLNG生産施設サビン・パス・ターミナルを所有・運営。パイプライン輸送のほかタンカー輸出も行う。
  • 8/8発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比20.7%減の32.51億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同28.8%減の13.22億USD。LNG輸出量は同3%増も、天然ガスおよびLNGの国際相場が低調だったことが響いた。前四半期比は、売上高が23.6%減、調整後EBITDAが25.4%減。
  • 通期会社計画を上方修正。調整後EBITDAを前期比35-31%減の57-61億USD(従来計画55-60億USD)とした。シンガポールをはじめ各国政府が自国民のデータに基づき、自国でAI(人工知能)を開発、自国語で大規模言語モデル(LLM)を訓練する「ソブリン(国家独自の)AI」拡大を背景にデータセンターが成長拡大。短期的に液化天然ガス(LNG)需要を押し上げる要因になると見込まれる。

PDDホールディングス(PDD)市場:NASDAQ・・・2024/11/29に2024/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定 

  • 2015年設立の中国ソーシャルECプラットフォーム大手。中国テンセントのウィーチャット・QQなどのSNSを使ってユーザー同士の商品情報を共有化し、共同購入システムを展開。越境ECにも進出。
  • 8/26発表の2024/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比85.6%増の970.59億元、非GAAPの調整後純利益は同2.3倍の344.32億元。中国国内で低価格帯商品を多く扱う「ピンドゥオドゥオ」に加え、海外で越境ECの「Temu(テム)」が進出策を約80の国・地域に拡大。費用増も増収率の高さで吸収。
  • 2024/12期会社計画は未公表。4-6月期の売上高は最大手のアリババ集団が前年同期比3.9%増、JDドットコム(JD)が1.2%増にとどまるのに対し、同社の伸びが目立つ。同社CEOは短期的な利益増よりも投資強化および株主還元への否定的な見方を強調。それでも世界的に根強いインフレ下で低価格商品に消費者が流れる潮流は変わらず、国別利用数でAmazonを上回る国が多数。

グローバルXウラニウムETF(URA)市場:NYSE・・・分配金:年2回(6・12月) 

(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら、「始値<終値(陽線)」なら

  • 「Solactive Uranium & Nuclear Components 指数」の運用成果に連動する投資成果を目指す。ウラン・原子核の抽出・精製・探鉱、ウラン・原子力業界向け設備機器製造企業へのエクスポージャーを提供。
  • 10/4終値で時価総額が35.4億USD、過去12ヵ月間の実績分配金利回りは5.63%。組入れ上位順5社は、カメコ(CCJ)、Sprott Physical Uranium Trust、ネクスジェン・エナジー(NXE)のカナダ勢が上位3社 。米ウラニウム・エナジー(UEC)、ガザフスタン国有のNAC Kazatompromがその後に続く。
  • 昨年末終値から10/4終値までの騰落率(インカムゲインを除く)は、同ETFが+9.5%に対し、ダウ工業株30種平均が+12.4%、S&P500株価指数が+20.6%、ナスダック100が+19.1%。生成AI(人工知能)など電力を大量消費する技術の急速な普及に加え、気候変動に配慮した安定電源として原子力発電が再評価されるなか原発燃料のウランの長期契約価格は2008年以来16年ぶり高値水準。
  • (※)決算発表の予定は10/4現在であり、変更される可能性があります。

過去の「銘柄ピックアップ」パフォーマンス検証

フィリップ証券株式会社

今すぐ外国株式口座開設

今すぐお取引

免責事項・注意事項

  • 当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。

    <日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項>
    本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
ユーザーネーム
パスワード

セキュリティキーボード

ログインにお困りの方

東京建物株式会社第36回無担保社債(社債間限定同順位特約付)(サステナビリティボンド)

よくあるお問合せ
・口座開設の流れ
・NISA関連のお問合せ
・パスワード関連のお問合せ

HYPER SBI 2 ダウンロード
  • オンラインセミナー
  • 資産運用フェス2025

SBI証券はお客様の声を大切にしています