24年1月「銘柄ピックアップ」振り返る
今年1月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から4/22終値までの騰落率上位6銘柄を見ると、半導体チップ設計でスマホ市場を独占するアーム・ホールディングス(ARM)が首位。電力技術関連エンジンのカミンズ(CMI)、伝統的自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)、新興スポーツ・シューズブランドのオン・ホールディング(ONON)、広告ビジネスのイノベーター的存在のトレード・デスク(TTD)が上位を占める。世界的穀物商社のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は会計慣行に係る調査で延期されていた決算発表が行われ、決算修正で買戻し進行。
24年1月「銘柄ピックアップ」振り返る~業種の偏り薄れ、銘柄選別進む
ヘルスケアが米国株を主導か?
半導体大手エヌビディア(NVDA)を中心に資金を集めていた「生成AI(人工知能)」相場が向かう有力候補として医療・ヘルスケア領域が挙げられる。エヌビディア自身が創薬のための生成AIプラットフォーム「BioNemo」を通じて独自データでモデルのトレーニング作業簡素化・高速化に取り組んでいる。
生成AI活用で既存薬が他の病気に応用できないかどうかの解析などに使われ、創薬のスピードが加速するだろう。また、新型コロナ禍で遅延・先延ばしとなっていた重症患者の手術をはじめとして医療機器の需要が本格的に回復すると期待される。ディフェンシブ銘柄として取り上げられるヘルスケア企業は、生成AI活用および高齢化による構造的需要増加を背景に次の相場でグレード・アップが期待されよう。
ヘルスケアが米国株を主導か?~早期利下げシナリオ崩れて有力候補
半導体と大型ハイテク株相場の行方
米国上場の主要な半導体関連30銘柄で構成されるSOX(フィラデルフィア半導体)指数は、生成AI(人工知能)人気沸騰を受けて上昇が加速。米国の代表的株価指数のS&P500に対する倍率は今年3/8、ITバブル時の2000年3月を超える0.967倍に達した後、4/19に0.867倍まで低下した。
主要半導体銘柄を含み金融を除くナスダック上場時価総額上位100銘柄の時価総額加重平均のナスダック100指数も、景気敏感やディフェンシブ関連も含む米国の代表的30銘柄の平均株価であるダウ平均株価に対する比率が4/12に0.47倍と、2000年3月に付けた0.46倍を超えた。半導体関連への物色偏りは更なる正常化に向かうほかナスダック100指数も対ダウ平均で倍率が低下する可能性が高いだろうか。
半導体と大型ハイテク株相場の行方~過去最高集中度から足元減速も
スマホ・PC市場回復の恩恵銘柄
市場調査会社IDCは四半期ごとのパソコンとスマートフォンの世界出荷台数を公表。8日発表の2024年1-3月の世界パソコン出荷台数は前年同期比1.5%増の5980万台と、インフレ鈍化を受けて約2年ぶりプラス転換。14日発表の2024年1-3月の世界スマートフォン出荷台数は前年同期比7.8%増の2億8940万台と、前四半期(同8.5%増)に続いて回復傾向。いずれも、年後半に向けて「生成AI(人工知能)」活用新製品が期待される。
この恩恵を最大限に享受しやすい米国株の1つとして挙げられるのは省電力性能の高い半導体チップ設計の英アーム・ホールディングス(ARM)。同社は半導体設計ライセンス世界スマホ市場99%超の独占企業。スマホ以外はシェア拡大によるプラスアルファ効果も見込まれる。
スマホ・PC市場回復の恩恵銘柄~半導体チップ設計でスマホ市場99%超
米経済は失われた雇用の回復途上
5日発表の3月米国雇用統計によると、非農業部門就業者数は前月比30万3千人増。ヘルスケアや政府部門のほか建設やレジャー分野の伸びを受けて市場予想の20万人を上回った。他方、賃上げの勢いは弱まり3月平均時給は前年同月比伸び率4.1%と2月4.3%から低下。
米国雇用の最大のポイントは、新型コロナパンデミックが始まった2020年3-4月に約2200万人が失業したことだ。その後の大幅な雇用拡大は概ねそれを回復する動きに過ぎず、月平均就業者増加数も、20年3月から24年3月で均すと118千人と17年(175千人)、18年(190千人)、19年(165千人)に及ばない。市場予想を大幅に超える雇用者増加数が続いたとしても米国経済の成長率は趨勢としてコロナ禍前よりも低迷すると想定されよう。
米経済は失われた雇用の回復途上~過去49ヵ月で月平均12万人未満増
米国優良ディフェンシブ2銘柄
主要半導体銘柄を含み金融を除くナスダック上場時価総額上位100銘柄の時価総額加重平均であるナスダック100指数は、ダウ(工業株30種)平均株価に対する比率が2000年3月以来の過去最高水準。割安銘柄シフトからダウ平均構成銘柄の注目度アップ余地もあるだろう。
その中でも世界最大の一般消費財メーカーのプロクター&ギャンブル[P&G](PG)、世界最大級のヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソン[J&J](JNJ)の両老舗企業が注目される。P&Gは23年7-9月期以降、製品ポートフォリオ構成最適化でコアEPSの増加が加速。足元も25年まで2年間の事業再編プログラム進行中だ。J&Jは利益率の低い消費者事業を分離独立。医療機器事業はコロナ禍で先送りされた手術ニーズ回復が期待される。