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“相場の4年周期、地政学リスク反動注視、金本位制の動き”
“相場の4年周期、地政学リスク反動注視、金本位制の動き”
2024/4/16
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“相場の4年周期、地政学リスク反動注視、金本位制の動き”
- 米国株はピークアウトしたのだろうか? 代表的株価指数であるS&P500指数の年初来高値は今月1日の高値5263ポイント。コロナ禍のパンデミックで大幅下落した2020年3月に安値2191ポイントを付けたのが23日だった。その日から今年4/1までの約4年間の取引営業日数を数えると1013日に上る。
- 新型コロナ禍前の過去最高値だった3393ポイントを付けた日が2020年2/19だった。その日は、2015年夏以降のチャイナショックで株式市場が大きく動揺した後の2016年の安値1810ポイントを付けた2/11から数えて1012日を数える。連続する上昇相場の時間関係の類似性は経験的に当てはまる場合が多い「アノマリー」の範囲を超えるものではないとしても気になるところだ。
- 今まで当ウィークリーで繰り返し述べてきたように、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)のS&P500指数に対する倍率、および高時価総額の大型ハイテク株を中心としたナスダック100指数のダウ工業株30種平均株価に対する倍率が今年3月、それぞれ2000年3月のITバブルピーク時を超えるなど行き過ぎが限界に達した面もあったと思われる。ナスダック100指数の日次運用成績の反対の3倍に連動する投資を目指すとされる「プロシェアーズ・ウルトラプロ・ショートQQQ(SQQQ)」の機動的な活用も検討されよう。
- イランが13日夜から14日未明にかけてイスラエルに向けて無人機やミサイルによる大規模攻撃を行った。その前の12日に取引が行われていたWTI原油先物価格は1バレル87.67ドルまで上昇も、終値は85.45ドル。地政学リスク時に買われやすい金先物価格もCMXで1オンス2436ドルまで買われたものの、終値は2348ドルまで戻り売りにあった。
- イランの攻撃に先立って米軍が航空機やミサイル駆逐艦などを周辺地域に展開するなど事前の準備が行われていたこと、およびイランも報復行為を実行したことで「面子」が保たれたことから、当面の危機は回避されるだろうとの見方が強まる余地があるかもしれない。原油価格では中国の3月の貿易統計で輸出が冴えなかったことやIEA(国際エネルギー機関)が2024年度の世界の原油需要を下方修正したこと、金価格では米利下げ見通し動向に目が向きやすいところだろうか。原油価格と金価格は上値が重くなると同時に、ハイテク株は一時的にせよ多少のリバウンド局面も想定されよう。
- 他方、アフリカ南部ジンバブエが4月初旬、崩壊寸前の自国通貨と財政赤字に直面して中央銀行が実物資産の金を裏付けとした新たな法定通貨(ジンバブエゴールド)を発行。新興国の通貨危機リスクが金価格の更なる高騰を予感させる面があることには注意が必要だろう。(笹木)
- 4/16号では、チャーチ・アンド・ドワイド(CHD)、クロロックス(CLX)、コストコホールセール(COST)、カーチス・ライト(CW)、フェラーリ(RACE)、グローバルXウラニウムETF(URA)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(4/12現在)
4月16日(火) | JBハント・トランスポート・サービシズ、オムニコム・グループ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、モルガン・スタンレー、ノーザン・トラスト、ユナイテッドヘルス・グループ、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、バンク・オブ・アメリカ、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン |
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4月17日(水) | クラウン・キャッスル、ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ、CSX、エキファックス、キンダー・モルガン、ラスベガス・サンズ、トラベラーズ、シチズンズ・フィナンシャル・グループ、プロロジス、USバンコープ、アボットラボラトリーズ、ASMLホールディング |
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4月18日(木) | インテュイティブサージカル、PPGインダストリーズ、ネットフリックス、キーコープ、コメリカ、マーシュ・アンド・マクレナン、ジェニュイン・パーツ、ブラックストーン、DRホートン、スナップオン、エレバンス・ヘルス |
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4月19日(金) | ハンチントン・バンクシェアーズ(オハイオ州)、リージョンズ・ファイナンシャル、アメリカン・エキスプレス、プロクター・アンド・ギャンブル、SLB、フィフス・サード・バンコープ |
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4月22日(月) | ニューコア、パッケージング・コープ・オブ・アメリカ、ケイデンス・デザイン・システムズ、ブラウン・アンド・ブラウン、グローブライフ、アメリプライズ・ファイナンシャル、トゥルイスト・ファイナンシャル、ベライゾン・コミュニケーションズ |
4月15日(月) | - 米ダラス連銀総裁がパネル討論会に参加(東京)、米サンフランシスコ連銀総裁の講演、 IMF・世銀春季会合(20日まで、ワシントン)・主要会合は17-19日
- 米ニューヨーク連銀製造業景況指数(4月)、 米小売売上高(3月)、米企業在庫(2月)、米NAHB住宅市場指数(4月)
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4月16日(火) | - 米ジェファーソンFRB副議長の基調演説、 ワールド・フューチャー・エナジー・サミット2024(アブダビ、18日まで)、IMF世界経済見通し(WEO)公表
- 米住宅着工件数 (3月)、米鉱工業生産(3月)
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4月17日(水) | - G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン、18日まで)、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、米クリーブランド連銀総裁と米ボウマンFRB理事が講演
- 対米証券投資 (2月)
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4月18日(木) | - 米ボウマンFRB理事・ 米ニューヨーク連銀総裁・米アトランタ連銀総裁が討論会に参加
- 米新規失業保険申請件数 (4月13日終了週)、 米景気先行指標総合指数 (3月)、米中古住宅販売件数(3月)
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4月19日(金) | |
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4月22日(月) | |
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- 1846年設立。消費者向け家庭用品・パーソナルケア製品の製造・販売。ベーキングソーダ(重曹)「ARM&HAMMER」、漂白剤「OXICLEAN」のほか電池式歯ブラシ「SPINBRUSH」等14ブランドに注力。
- 2/2発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比6.4%増(会社予想5.0%増)の15.28億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.8%増の0.65USD。既存事業増収率は2四半期連続販売量増および売価上昇(4.0%)を受けて同5.3%増。海外部門が同9.0%増収、粗利益率が同2.6ポイント上昇。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比4-5%増、粗利益率が同0.50-0.75ポイント上昇、事業売却予定の動物飼料「メガラック」の影響を除く調整後EPSが同8-10%増(中心値3.45USD)。2023年度通期実績は、販売量増加、販売価格引き上げ、運転資本効率改善などの好条件が揃って営業キャッシュフローが同16.3%増の10.3億USDと堅調。好業績のディフェンシブ銘柄として注目されよう。
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- 1913年設立の大手日用品メーカー。漂白剤ブランド「Clorox」ほか家庭用品・業務用製品で有力製品を擁する。ヘルス&ウェルス、家庭用品、ライフスタイルの3部門および海外事業から構成される。
- 2/1発表の2024/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比16.0%増の19.90億USD、非GAAPの調整後EPSが同2.2倍の2.16USD。サイバー攻撃後の在庫再構築に伴い販売量増加。販売価格引上げとコスト削減に加えて出荷数量の伸びによる原価吸収効果もあり、粗利益率が同7.3ポイント上昇。
- 通期会社計画を上方修正。売上高減少率を前期比1桁台前半(従来計画:1桁台半ば〜後半)、調整後EPSを同4-8%増の5.30-5.50USD(同:4.30-4.80USD)とした。昨年8月発生のサイバー攻撃による悪影響からの回復順調で失われた在庫および流通の大部分を取り戻すことができた模様。ゴミ袋「Glad」ブランド事業、およびペットブームを受けた猫砂事業の生産能力拡充が成長の鍵を握ろう。
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- 1976年創業。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型店舗)を運営しており、生鮮・加工食品、家電や自動車関連などを卸売価格で販売する。世界の店舗数は3/3現在で828店舗。Eコマースも展開。
- 3/7発表の2024/8期2Q(12-2月)は、総収益が前年同期比5.7%増の584.22億USD、純利益が同18.9%増の17.43億USD。総収益の内、会費収入は同8.2%増の11.11億USD。ガソリンや為替変動を除いた既存店売上高は同5.6%増。その内、Eコマースは同18.4%増収と堅調に推移した。
- 同社は顧客への利益還元優先で会費収入のみを粗利益の源泉とする方針のため、高インフレで消費者の財布の紐が固くなる局面の価格設定で競合他社より優位性あり。会費収入は2024/8期1H(9-2月)が前年同期比8.2%増。4/10発表の3月のガソリン・為替変動除く既存店売上高は前年同月比7.5%増。その内、米国7.4%増、カナダ7.3%増、その他海外8.4%増。Eコマースは同28.0%増。
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- 1929年設立。航空業界(電子制御装置、旅客機内環境システム)、陸海空軍防衛部門(武器制御システム)、原子力発電所(冷却ポンプ他機器部品)向けに、精密部品の開発・製造・メンテナンスを行う。
- 2/14発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比3.7%増の7.85億USD、非GAAPの調整後EPSが同8.2%増の3.16USD。研究開発費増が響き調整後営業利益率が同0.3ポイント低下も、航空宇宙・防衛(A&D)および商用航空市場の需要堅調を背景に期末受注残が同9%増の29億USD。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比4-6%増の29.6-30.1億USD、調整後EPSが同7-10%増の10.0-10.3USD、調整後営業利益率が同横ばい~0.2ポイント上昇の17.4-17.6%。中東情勢他地政学リスク対応の防衛、有人月探査「アルテミス計画」の宇宙関連、および脱炭素エネルギー源として有力視される次世代原子炉用の原子炉冷却材ポンプ等持続的な需要増見通しが追い風となろう。
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- 1929年にレーシングチーム「スクーデリア・フェラーリ」設立。イタリアの高級スポーツカーのトップブランドの一つ。販売数量を限定しつつ「独占性」と「技術革新」をブランドイメージの基盤とする。
- 2/1発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比11.3%増の15.23億EUR、非GAAPの調整後EPSが同33.9%増の1.62EUR。合計出荷台数が同2.5%減も、製品ミックス高付加価値化、米国と大中華圏など地域ミックス改善、およびパーソナライズ化と販売価格引上げが利益率上昇に貢献。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比7%増の64億EUR、調整後EPSが同9%増の7.50EUR。インフレ高進や金利上昇の環境下でも富裕層顧客の購入意欲は衰えておらず、著名投資家バフェット氏も昨年5月のバークシャー株主総会でフェラーリへの信頼を表明。F1ドライバーの7冠王者ルイス・ハミルトンが2/1、2025年よりフェラーリへ移籍すると発表。ブランドイメージ向上に寄与しよう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 「Solactive Uranium & Nuclear Components 指数」の運用成果に連動する投資成果を目指す。ウラン・原子核の抽出・精製・探鉱、ウラン・原子力業界向け設備機器製造企業へのエクスポージャーを提供。
- 4/12終値で時価総額が32.0億USD、過去1年間の分配金単価(ネット)合計は1.681599USD。組入れ上位順5社は、カメコ(CCJ)、Sprott Physical Uranium Trust、ネクスジェン・エナジー(NXE)のカナダ勢が上位3社を占め 、豪州パラディン・エナジー、ウラニウム・エナジー(UEC)がその後に続く。
- 昨年末終値から4/12終値までの騰落率(インカムゲインを除く)は、同ETFが+10.1%に対し、ダウ工業株30種平均が+0.8%、S&P500株価指数が+7.4%、ナスダック100が+7.0%。10日に開催された日米首脳会談で次世代原発の1つである「核融合発電」の実現に向けた共同声明を日米両政府が発表。原発はクリーンエネルギーで有力視される水素製造でも重要な役割を果たすとみられる。
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- (※)決算発表の予定は4/12現在であり、変更される可能性があります。
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