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“イースター明けの重要週〜医療・ヘルスケア分野に注目”
“イースター明けの重要週〜医療・ヘルスケア分野に注目”
2024/4/2
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“イースター明けの重要週〜医療・ヘルスケア分野に注目”
- イースター休暇は春分の日以降、最初に迎える満月の日以降の最初の日曜日を指し「復活祭」とも呼ばれる。今年は土日除く四半期末と祝日が重なった。海外投資家の本格的な相場参戦と四半期明けも重なるとみられる。4月第1週は、当面の米国株相場の方向性を探る上で重要な週となりそうだ。
- FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に参考とされる2月の個人消費支出(PCE)価格指数はコア指数が前年同月比2.8%上昇と、1月(2.9%上昇)から減速。パウエルFRB議長も当データについて「ほぼ予想通り」としつつ、「当局は利下げを急いでいない」と表明した。米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いことがその背景にあることから、パウエル議長の発言は株式市場にとってネガティブに捉えられるものではないだろう。
- 他方、中東ではイスラエル軍が3/29、シリアを攻撃し親イラン組織ヒズボラのメンバーらが死亡。ロシアでも22日に起きた大規模テロ事件を受けてウクライナへの攻撃激化が懸念されるなど、地政学リスクが臨界点を超える兆しが見え始めた。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を米国株を代表するS&P500指数で割った「SOX/S&P500」倍率、ナスダック100指数をダウ工業株30種平均株価で割った「ナスダック100/ダウ平均」倍率ともに、今年3月にITバブルに沸いた2000年3月以来の高水準に達していたことから、半導体関連や大型ハイテク株中心相場が限界まで来ていた可能性もあるだろう。
- 半導体大手エヌビディア(NVDA)を中心に資金を集めていた「生成AI(人工知能)」相場はどこへ向かうのか?半導体製造プロセスやサーバーなどハードウエアからデータのインフラへ向かうほか、医療・ヘルスケア領域のイノベーションへ向かう潮流の加速が想定される。エヌビディア自身が創薬のための生成AIプラットフォーム「BioNemo」を通じて独自データでモデルのトレーニング作業簡素化・高速化に取り組んでいることがそのヒントとなるだろう。イーライリリー(LLY)やデンマークのノボ・ノルディスク(NVO)が糖尿病治療薬を肥満症治療薬に進化させたように、生成AIの活用で既存の薬が他の病気に応用できないかどうかの解析などに使われ、創薬のスピードが加速するだろう。また、新型コロナ禍で遅延・先延ばしとなっていた重症患者の手術をはじめとして医療機器の需要が本格的に回復すると期待される。
- 高齢化を背景として、退職者割合増に伴う労働力不足問題が深刻化するほど、メディケアなど高齢者向けの医療・ヘルスケア分野への義務的経費の歳出も増大することになるだろう。医療・ヘルスケア業界は人口動態をベースに高い確率で成長が見込まれる面もあるだろう。(笹木)
- 4/2号では、アッヴィ(ABBV)、ダナハー(DHR)、GE HealthCareTechnologies(GEHC)、インテュイティブサージカル(ISRG)、メドトロニック(MDT)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(3/28現在)
4月2日(火) | ペイチェックス |
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4月4日(木) | ラム・ウェストン・ホールディングス、コナグラ・ブランズ
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4月1日(月) | - S&Pグローバル米国製造業PMI・確報値(3月)、米建設支出(2月)、ISM製造業景況指数・支払価格・新規受注・雇用(3月)、米S&P500種株価指数ソルベンタム採用
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4月2日(火) | - 米ニューヨーク連銀総裁が討論会で司会、米クリーブランド連銀総裁講演、米サンフランシスコ連銀総裁討論会に参加、米大統領選挙予備選(コネティカット、ニューヨーク、ロードアイランド、ウィスコンシン州)、米S&P500種株価指数GEベルノバ採用
- 米自動車販売(3月)、米求人件数(2月)、米耐久財受注(2月)、米製造業受注 (2月)
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4月3日(水) | - 米シカゴ連銀総裁の開会のあいさつ、米FRB議長の講演
- 米ADP雇用統計(3月)、米S&Pグローバルサービス業・総合PMI(3月)、米ISM非製造業総合景況指数(3月)
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4月4日(木) | - 米フィラデルフィア連銀総裁が討論会に参加、米シカゴ連銀総裁が質疑応答に参加、米クリーブランド連銀総裁が講演、米セントルイス連銀総裁が 開会のあいさつ、米トランプ前大統領の減額された保証金支払期限
- 米新規失業保険申請件数 (3月30日終了週)、米貿易収支 (2月)
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4月5日(金) | |
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4月8日(月) | |
アッヴィ(ABBV)市場:NYSE・・・2024/4/26に2024/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
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- 2013年にアボット・ラボラトリーズ(ABT)から分社化。自己免疫疾患、オンコロジー、ウイルス学等の領域で医薬品を提供。関節リウマチ薬「ヒュミラ」が主力。分社化前から通算で50年連続増配中。
- 2/2発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比5.4%減の143.01億USD、非GAAPの調整後EPSが同22.5%減の2.79USD。同じ免疫疾患で乾癬性関節炎薬のスキリージとリンボクがそれぞれ同50%、同57%増収と成長も、売上比率27%の主力ヒュミラが後発薬に押され同32%減収。
- 2024/12通期会社計画は、調整後EPSが前期比▲1〜+1%の11.05-11.25USD。医薬品年商世界首位ヒュミラが他社後発品の影響で減収見通しも、2027年売上高で免疫疾患領域のスキリージとリンボク合計270億USD(従来計画210億USD)、片頭痛など神経科学領域のウブレルビーとクリプタ合計30億USD(同:20億USD)へ上方修正。2029年まで平均複利増収率1桁台後半見通しは変わらず。
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ダナハー(DHR)市場:NYSE・・・2024/4/23に2024/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
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- 1969年設立。質量分析計などのライフサイエンス、医療診断機器、歯科診断機器の分野における工業製品メーカーを統括。買収先の業績改善に係る「ダナハー・ビジネス・システム(DBS)」が有名。
- 1/30発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比10.2%減の64.05億USD、継続企業に係る非GAAPの調整後EPSが同17.7%減の2.09USD。新型コロナ検査関連の影響除く基礎事業コア売上高は同4.5%減にとどまった。前四半期比では売上高が6.8%減も、調整後EPSが3.5%増益。
- 2024/12通期会社計画は非GAAPの基礎事業コア売上高が前期比1桁台前半の減収。同1Q(1-3月)は前年同期比1桁台後半の減収見通し。昨年9月に環境・応用ソリューション部門ヴェラルトのスピンオフを完了。ライフサイエンスと診断機器へ経営資源を選択・集中の上、昨年12月に研究用試薬の英アブカム買収完了。買収とDBSのセットで成長と効率性の両立を目指す事業モデルは健在。
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- 2023年初にゼネラル・エレクトリック(GE)からスピンオフした医療機器メーカー。イメージング(医療画像診断装置)、超音波、患者ケアソリューション、診断薬(造影剤など)の4事業セグメントを営む。
- 2/6発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比5.4%増の52.06億USD、非GAAPの調整後EPSが同9.9%減の1.18USD。新規受注高は同3%増と伸長し、対売上高比率が1.05倍と堅調。他方、販管費や研究開発費が嵩んで売上高総費用比率が同4.8ポイント上昇の28.2%へ悪化。
- 2024/12通期会社計画は、既存事業売上高が前期比約4%増、調整後EPSが同7-11%増の4.20-4.35USD、フリーキャッシュフローが同6%増の18億USD。同社は画像診断支援など医療分野へのAI(人工知能)の導入で先行。自社で画像診断支援AIを開発のほか同社のAI開発基盤「Edison Platform」を他社に開放してAI開発支援も営む。GPU半導体大手エヌビディア(NVDA)とも戦略的提携関係。
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- 1995年に設立。腹腔鏡手術のロボット支援システム「ダヴィンチ」や管腔内視鏡肺生検のロボットシステム「イオン」の開発・製造・販売を行う。ダヴィンチの設置台数は2023年12月末時点で8604台。
- 1/23発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比16.5%増の19.28億USD、非GAAPの調整後EPSが同30.0%増の1.60USD。新型コロナ関連に伴う逆風の影響が収束し、ダヴィンチは出荷件数が同12%増、手術件数が同21%増、昨年末時点の合計設置台数が同14%増と拡大した。
- 4Qの前四半期比は売上高が10.6%増、調整後EPSが9.6%増と回復継続。心臓血管ほか幅広い範囲でより正確かつ患者負担少ない医療サービス提供のため外科手術ロボットに頼る比率が高まるなか、同社はAI(人工知能)活用の機械学習により手術の正確性向上を図っている。手術ロボット市場の約8割を占めるダヴィンチのデータ量における強みを増し、同市場への参入障壁を一層高めよう。
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- 1949年設立の世界最大の医療機器メーカー。本社はアイルランドのダブリンで、150ヵ国に展開。心臓血管疾患、最小侵襲療法・手術支援、神経科学、糖尿病などの分野で製品を提供する。
- 2/20発表の2024/4期3Q(11-1月)は、売上高が前年同期比4.7%増の80.89億USD、非GAAPかつ為替一定の調整後EPSが同8.5%増の1.41USD。事業セグメント(既存事業ベース)別では、心臓血管が同5.1%、神経科学が同4.3%、手術支援が同2.9%、糖尿病が同10.2%と、4事業すべてが増収。
- 通期会社計画を上方修正。為替一定の既存事業売上高を前期比4.75〜5%(従来計画4.75%)、調整後EPSを前期比▲1.9〜▲1.5%の5.19-5.21USD(同:5.13-5.19USD)とした。同社はAI(人工知能)活用で、手術支援ロボット市場で首位のインテュイティブ・サージカル(ISRG)へのキャッチアップを目指すほか、新興国中心に糖尿病患者向けのインシュリン・ポンプ市場で事業展開国の多さを生かす。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 2006年にThermo ElectronとFisher Scientificが合併・発足した科学機器・試薬・分析大手。生命科学ソリューション、分析機器、特殊診断用製品、実験用製品サービスの4事業セグメントを営む。
- 1/31発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比4.9%減の108.86億USD、非GAAPの調整後EPSが同5.0%増の5.67USD。同社グローバルチームの「実践的プロセス改善(PPI)ビジネスシステム」による生産性向上への取組みが奏功し、調整後営業利益率が同1.0ポイント上昇の23.4%。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比▲2〜+1%の421-433億USD、調整後EPSが同▲3〜+2%の20.95-22.00USD。4Qの総費用が前年同期比5.8%減とコスト削減を進めるなか、同社のような科学機器・試薬・分析企業にとって新型コロナ禍で先送りされた手術や診療の需要が一挙に顕在化しつつあることで売上面の回復が期待される。4Qは前四半期比3.0%増収と既に改善の兆し。
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- (※)決算発表の予定は4/1現在であり、変更される可能性があります。
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