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“12月相場好スタート、広帯域メモリー、RPAとAIの融合”
“12月相場好スタート、広帯域メモリー、RPAとAIの融合”
2023/12/5
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“12月相場好スタート、広帯域メモリー、RPAとAIの融合”
- 月初は年末高に向けてのロケットスタートだったのだろうか? 米FRB(連邦準備制度理事会)関係者で最もタカ派とみられていたウォラー理事が、インフレ率低下が続くことを条件に利下げの可能性を示唆。パウエルFRB議長も12/1、「金融緩和の時機を推測するのは時期尚早」としつつも、現在の政策金利水準が「かなり引締め的」と発言。市場はこれをうけて一気に利上げ終了の見方に傾き、リスクオン(リスク選好)へとなだれ込んだ。
- 年末までの運用成績を問われる機関投資家にとっては実質的にはクリスマスまでの少ない日数しか残されていないだろう。好調な月初の相場を見れば我先にと飛びつかざるを得なくなるのが人間の心理だろうか。
- 日本時間の4日朝にイエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海の国際水域で商業船を攻撃したのに対し、米軍がイラク北部で親イラン武装勢力を空爆するといった中東情勢緊迫化の動きが見られた。CMX金先物価格は日本時間4日午前8時30分ごろに1トロイオンス2140ドルまで急騰も、その後は2100ドル近辺で落ち着きを取り戻している。強気に傾いた今の市場では、少なくとも年内は悪材料も時間を要さず押し目買いで吸収可能な面もあろう。
- 世界主要半導体メーカー加盟の統計機関WSTSによる世界半導体市場統計が11/28に半年ぶりに更新。2023年と24年の見通しが上方修正されたなか、24年のメモリーは前年比45%増(全体で13%増)が見込まれている。メモリーの中でもデータ記憶保持に使い高速処理に向いているDRAMの「広帯域メモリー(HBM)」は生成AI(人工知能)の追い風を受けて急成長見通しだ。HBMは韓国勢がシェア9割を占めるものの米マイクロン・テクノロジー(MU)も1割を占め、追い上げが期待される。
- 7月に付けた年初来高値水準を前に足踏みが続くナスダック総合指数と比べてダウ平均がいち早く年初来高値を更新していることやCMX金先物価格が史上最高値を更新したことを受け、「質への逃避」として高収益性・高成長・財務基盤の揃った「クオリティー株」重視の表れとの見方も強まっている。他方、生成AIが具体的な製品・サービスに付加価値を付けて供給されることで、成長重視の高過ぎた期待値から大きく株価の下落したグロース銘柄がキャッシュフロー改善とともに見直されつつある。軍事作戦立案までAIで行う「ゴッサム」擁するパランティア・テクノロジーズ(PLTR)に続くのは、業務プロセスを自動化するロボット技術「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」分野。AIとの統合により飛躍的進歩を遂げつつある。事務作業にとどまらず物流での倉庫作業自動化システムでもAIが大活躍している。(笹木)
- 12/5号では、アドビ(ADBE)、C3.ai(AI)、グローバルXロボット&AI・ETF(BOTZ)、マイクロン・テクノロジー(MU) 、ユーアイパス(PATH)、シンボティック(SYM)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(12/1現在)
12月5日(火) | JMスマッカー、オートゾーン |
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12月6日(水) | ブラウン・フォーマン、キャンベルスープ |
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12月7日(木) | ブロードコム、ルルレモン・アスレティカ、クーパー、ダラー・ゼネラル |
12月5日(火) | - S&Pグローバル米サービス業・コンポジットPMI (11月)、米求人件数(10月)、米ISM非製造業総合景況指数(11月)
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12月6日(水) | - 米ADP雇用統計(11月)、米労働生産性(3Q)、米貿易収支 (10月)
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12月7日(木) | - 米新規失業保険申請件数 (12月2日終了週)、米卸売在庫 (10月)、家計純資産(3Q)、米消費者信用残高(10月)
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12月8日(金) | - 米雇用統計(11月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(12月)
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12月9・10日(土・日) | |
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12月11日(月) | |
アドビ(ADBE)市場:NASDAQ・・・2023/12/13に2023/11期4Q(9-11月)の決算発表を予定
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- 1982年設立のソフトウェア企業。同社開発の文書フォーマットPDFは国際標準。Document Cloud、Creative Cloud、Experience Cloudの3つのクラウドサービスから継続課金ソフトウェアを提供。
- 9/14発表の2023/11期3Q(6-8月)は、売上高が前年同期比10.3%増の48.90億USD、非GAAPの調整後EPSが同20.3%増の4.09USD。9/13に生成AI(人工知能)の画像作成技術「FireFly」が正式リリース。前四半期比でも1.5%増収、4.6%調整後EPS増益、8月末RPO(残存履行義務)が3.3%増。
- 4Q(9-11期)会社計画は、売上高が前年同期比10-11%増の49.75-50.25億USD、調整後EPSが同14-15%増の4.10-4.15USDといずれも3Qから伸長。「Firefly」は著作権侵害の恐れがないコンテンツのみAIの学習に用いているため利用しやすいのが特徴。「フォトショップ」ほか各種需要の更なる伸び支援が見込まれる。ウエブデザインツール最大手フィグマの年内買収(200億USD)も焦点だろう。
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C3.ai(AI)市場:NYSE・・・2023/12/6に2024/4期2Q(8-10月)の決算発表を予定
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- 2009年設立。企業向け人工知能(AI)ソフトウェアをSaaSアプリケーションを通じて提供。同社のAIプラットフォーム・アプリケーションを使えば、業界を問わず顧客も業務用AIアプリを設計・開発できる。
- 9/6発表の2024/4期1Q(5-7月)は、売上高が前年同期比10.8%増の72.3百万USD(会社予想:70.0-72.5百万USD)、非GAAPの調整後営業利益が▲20.7百万USD(同:▲30-▲25百万USD)と会社予想に対して堅調。前四半期比でも、売上高が横ばい、調整後営業利益が2.8百万USDの赤字幅縮小。
- 2Q(8-10月)会社計画は、売上高が前年同期比15-23%増の72.0-76.5百万USD、調整後営業利益が前年同期の▲14.9百万USDから▲40-▲27百万USDへ赤字幅拡大。同社のトム・シーベルCEOは1990年代にCRMソフトベンダー「シーベル・システムズ」を創業した経験豊富な経営者。同社の大企業向け生成AIサービスは業界を問わず需要拡大の一方、コスト増に対して人員削減で対応方針。
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- 「Indexグローバル・ロボティクス・AI・セマティック指数」に連動する投資成果を目指し、産業用ロボット・自動化、自動運転含め、ロボットや人工知能(AI)活用の恩恵を受ける企業への投資を目指す。
- 12/1終値で時価総額が23.2億USD、過去1年間の分配金単価(ネット合計)は0.053209USD。22年12月は無配。組入れ上位順7社は、エヌビディア(NVDA)、インテュイティブサージカル(ISRG)、ABB(スイス)、キーエンス(日本)、ファナック(日本)、ユーアイパス(PATH)、ダイナトレース(DT)。
- 昨年末終値から12/1終値までの騰落率(インカムゲイン除く)は、同ETFが+31.5%に対し、ダウ工業株30種平均が+9.3%、S&P500株価指数が+19.7%、ナスダック100が+46.2%。生成AI需要が高まるなかで市場の関心が画像処理半導体(GPU)や広帯域メモリーDRAMなどハード面から、ロボット処理によるプロセス自動化(RPA)とAIへの融合といった具体的製品・サービスへ広がりつつある。
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- 1978年創業。DRAM、NAND、NORおよび3D XPointメモリーを製造する唯一の企業。コンピュータ&ネットワーキング(CNBU)、データセンターから自動車向けまで幅広いメモリーソリューションを提供。
- 9/27発表の2023/8期4Q(6-8月)は、売上高が前年同期比39.6%減の40.10億USD、非GAAPの調整後EPSが前年同期の1.45USDから▲1.07USDへ赤字転落。PC・スマホ向け半導体の在庫調整のほか中国当局による規制が響いた。前四半期比は6.9%増収、調整後EPSが0.36USDの赤字幅縮小。
- 11/28に2024/8期1Q(9-11月)会社計画を上方修正。売上高を前期比15%増の47億USD(従来計画42-46億USD)、調整後EPSを前年同期0.04USDから▲1.00USDへ赤字転落(同▲1.14-▲1.00USD)とした。生成AIに用いるDRAMの一種で、DRAMチップを積層してデータの転送速度や記憶容量を汎用品の数十倍に高めた広帯域メモリー(HBM)の需要が急増。同社は世界シェアの1割を占める。
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- 2005年設立のRPAソフトウェアベンダー。自動化するロボット開発ツール「UiPathStudio」、開発されたロボットの実行ツール「UiPathRobots」、ロボット管理統制ツール「UiPathOrchestrator」を提供。
- 11/30発表の2024/1期3Q(8-10月)は、売上高が前年同期比24.1%増の3.25億USD、非GAAPの調整後営業利益が同2.4倍の43.6百万USD、年間経常収益(ARR)が同24%増。デジタル変革(DX)需要の追い風を受けた。 2-10月調整後フリーキャッシュフローも▲1.01億USDから1.62億USDへ黒字転換。
- 4Q(11-1月)会社計画は、売上高が3.81-3.86億USD、1月末ARRが14.50-14.55億USD(10月末13.78億USD)、調整後営業利益が約78百万USDと前四半期比で成長加速見通し。世界市場の約3割のシェアを占める同社のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は人工知能 (AI) との統合で業務プロセス自動化の機能も向上。赤字脱却後も12/1終値はIPO後の21年5月高値から72%下落水準にとどまる。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 2007年設立のロボティクス倉庫自動化会社。小売・消費企業向け中心に人工知能(AI)活用ソフトウェアにより荷物の取得・梱包等に係る倉庫自動化システム「シンボティック・システム」を構築運用。
- 11/20発表の2023/9期4Q(7-9月)は、物流の効率改善需要を背景に売上高が前年同期比60.3%増の3.91億USD、非GAAPの調整後EBITDAは前年同期の▲20.4百万USDから13.3百万USDへ黒字転換で初の四半期黒字達成。前四半期比も25.7%増収。7月にソフトバンクGと共同出資会社設立。
- 2024/9期1Q(10-12月)会社計画は、売上高が3.50-3.70億USD、調整後EBITDAが11-14百万USDと前四半期比で横ばい近辺。同社顧客はウォルマート(WMT)を筆頭に、ターゲット(TGT)など錚々たる小売企業が名を連ねる。同社は労働力不足、物流施設の運営費用増加、過剰在庫など経営課題へソリューションを提供。顧客企業の成長を自社成長に取り込める優位な立場にあると言えよう。
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- (※)決算発表の予定は12/1現在であり、変更される可能性があります。
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