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“エヌビディアとアマゾン・ドット・コムの躍進を支える企業”
“エヌビディアとアマゾン・ドット・コムの躍進を支える企業”
2023/11/28
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“エヌビディアとアマゾン・ドット・コムの躍進を支える企業”
GPU(画像処理半導体)を主力製品とするエヌビディア(NVDA)の8-10月期決算は生成AI(人工知能)の威力をまざまざと投資家に見せつけた。同社はAI半導体で世界シェア約8割を握る。ChaGPTなど対話型サービスの浸透に伴ってAI開発企業がこぞって購買競争を繰り広げる中で、生成AIのコア技術である大規模言語モデル(LLM)に必要なパラメーター数や学習データ量の増加に伴ってGPUの供給不足が加速する構造が当面続くだろう。エヌビディアへの特需、および同社の米国株投資における主役の座も当面続くと見られる。他方、恒常的に割高な株価水準となりやすく中国への先端半導体輸出規制など外部環境悪化への感応度も高まりりやすい点は懸念材料だ。
- 注目したいのはその主役を支える企業だ。エヌビディアの最新の半導体「HGX H100」の認定パートナーを取得しているサーバーメーカーは世界で3社。うち、台湾企業が2社、米国企業が1社(スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI))である。今年4月頃まで予想PERで10倍台の万年割安銘柄に過ぎなかった日本の半導体検査装置アドバンテストも、エヌビディア関連として注目され始めてから予想PERが上昇。足元では50倍近くで評価されている。
- アドビ・アナリティクスによれば、今年の米感謝祭翌日のブラックフライデーにおける消費者のオンライン支出額は前年比7.5%増の98億ドルと過去最高を記録。高インフレが消費者の懐を直撃し、小売店が在庫処分の大幅値引きをした昨年からの回復が窺われる。支払い面で後払い決済の「Buy Now Pay Later」の利用が感謝祭前の週との比較で72%増加と、ペイパル・ホールディングス(PYPL)のようなフィンテック企業への追い風となりそうだ。
- そして何よりもEコマース覇者アマゾン・ドット・コム(AMZN)が有利なポジションを占めることは言うまでもない。同社7-9月期決算におけるオンライン・ストア事業は、売上高が前年同期比7%増、前四半期でも8%増と伸びていたなか、物流大手UPSに頼らず、地域ごとに商品を保管し顧客に近い拠点から配送する仕組みの自前物流網の整備再編により、輸送費削減と会員向け配達最速化に繋がり、日用品販売増加の後押しという好循環をもたらしている。
- アマゾンの物流再編に大きな役割を果たしているのが百貨店チェーンのコールズ(KSS)だ。同社は立地の良さを生かしてアマゾンのEコマースの返品受付拠点となり、ついで買いなどで自社の売上アップと新規顧客獲得に繋げている。また、同社は今年2月就任の新CEOの下で経営再建とキャッシュフロー改善に取り組む中で、足元では高配当利回り銘柄として注目されている。アマゾン・ドット・コムの躍進を担う銘柄としても評価されよう。(笹木)
- 11/28号では、アナログ・デバイセズ(ADI)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、ボーイング(BA)、コールズ(KSS) 、インピンジ(PI)、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(11/24現在)
11月28日(火) | インテュイット、ワークデイ、ネットアップ、クラウドストライク・ホールディングス、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、PDDホールディングス |
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11月29日(水) | シノプシス、セールスフォース、ホーメルフーズ、ダラー・ツリー |
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11月30日(木) | マーベル・テクノロジー、アルタ・ビューティ、クローガー |
11月28日(火) | - 米シカゴ連銀総裁が会合で冒頭あいさつ、米ウォラーFRB理事が講演、米7年債入札
- 米主要20都市住宅価格指数(9月)、米FHFA住宅価格指数(9月)、米消費者信頼感指数・コンファレンス・ボード(11月)
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11月29日(水) | - 米クリーブランド連銀総裁が講演、米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、OECD経済見通し
- 米卸売在庫(10月)、米GDP ・改定値(3Q)
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11月30日(木) | - 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(UAE、12月12日まで)
- 米新規失業保険申請件数(25日終了週)、米個人消費支出(PCE)物価指数 (10月)、米個人所得 (10月)、米シカゴ購買部協会景況指数(11月)、米中古住宅販売成約指数 (10月)
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12月1日(金) | - 米パウエルFRB議長の発言、米シカゴ連銀総裁が討論会に参加、ブラジルがG20議長国に就任
- 米自動車販売(11月)、米建設支出 (10月)、米ISM製造業景況指数 (11月)、米S&Pグローバル製造業PMI・改定値(11月)
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12月4日(月) | |
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- 1965年設立の半導体メーカー。産業、自動車、通信、消費者向け家電の4市場に実世界のアナログ信号をデジタルデータへ、デジタルデータをアナログ信号へ変換するコンバータ製品を提供。
- 11/22発表の2023/10期4Q(8-10月)は、売上高が前年同期比16.4%減の27.16億USD、非GAAPの調整後EPSが同26.4%減の2.01USD。顧客の在庫調整が響き調整後粗利益率が同6.4ポイント低下の44.7%も、売上・利益率とも会社予想レンジ中心を上回った。自動車(同14%増収)以外は減収。
- 2024/10期1Q(11-1月)会社計画は、前年同期比26-20%減の24-26億USD、調整後EPSが同42-35%減の1.6-1.8USD。顧客在庫調整に伴う前四半期比の減収減益が続く見通しも、消費者向けはスマホやパソコン需要底入れからの改善が期待される。アナログ信号とデジタル信号との相互変換を行うアナログ半導体は、スマホ、IoT機器、電気自動車(EV)など対象拡大がこれから本格化局面。
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- 1969年設立の半導体企業。法人向けエンタープライズ事業のほか、CPU (Ryzen他)、GPU(Radeon他)、両者統合のAPUなど製品も手掛ける。22年2月に半導体FPGA大手ザイリンクスの買収を完了。
- 10/31発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比4.2%増の58.00億USD、非GAAPの調整後EPSが同4.5%増の0.70USD。PC等クライアント事業が同42%増収と牽引。データセンターが横ばい、ゲーミングおよび組み込みが減収。前四半期比は売上高が8%増、調整後EPSが21%増。
- 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比で約9%増、調整後粗利益率が同0.4ポイント上昇の51.5%(3Q実績51.1%)。人工知能(AI)用半導体の売上高はその中に新たに4億USD含まれ、来年には年間で20億USDに達する見通しとした。この分野で先行するエヌビディア(NVDA)を追撃の構え。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOとAMDのリサ・スーCEOとは親戚関係にある。
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ボーイング(BA)市場:NYSE・・・2024/1/25に2023/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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- 1916年創業の航空・宇宙機器製造会社。民間航空機、防衛・軍用機、電子・防衛システム、衛星、衛星打ち上げ機、高度情報通信システムなどを手掛ける。世界150ヵ国以上で事業を展開する。
- 10/25発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比13.5%増の181.04億USD、非GAAPの調整後EPSは前年同期の▲6.18USDから▲3.26USDへ赤字幅縮小。一方、現金収支フリーキャッシュフロー(FCF)は同29.06億USDから▲3.10億USDへ赤字転落。民間機部門で製造品質問題発覚が響いた。
- 通期会社計画は、FCFが30-50億USD(前期実績22.90億USD)で据え置き。他方、小型機737の納入目標を375-400機(従来目標400-500機)へ下方修正。9月末受注残が6月末比5.6%増の4690億USDと需要は堅調であることおよび9月末債務残高も同横ばいと財務の懸念も限定的。防衛部門の大統領専用機製造コスト問題に加え、品質問題解決に伴う増産強化によるFCF改善が鍵を握ろう。
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コールズ(KSS)市場:NYSE・・・2024/3/1に2024/1期4Q(11-1月)の決算発表を予定
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- 1988年設立の百貨店チェーンで店舗販売に加え、オンラインショッピングも提供。大手メーカー製品のほか、店舗での低価格の独自ブランド製品も販売。2018年よりAmazon.comと提携関係にある。
- 11/21発表の2024/1期3Q(8-10月)は、売上高が前年同期比5.2%減の38.43億USD、EPSが同35.4%減の0.53USD。在庫の同13%減が奏功し、粗利益率が同1.6ポイント改善の38.9%、営業キャッシュフローが前年同期▲4.25億USDから3.75億USDへ黒字転換。四半期配当0.5USDが12/20支払日。
- 通期会社計画は、売上高を前期比4.0-2.8%減(従来計画4.0-2.0%減)へ下方修正に対し、EPSを前期▲0.15USDから2.30-2.70USD(同:2.10-2.70USD)へ黒字転換と上方修正。今年2月に就任したトム・キングズベリーCEOの下で事業再建を進めている。11/24終値は2018年高値から7割以上下落も、予想配当利回り8.63%。Amazon.comのEコマース返品拠点などとしても同社は重要な役割。
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インピンジ(PI)市場:NASDAQ・・・2024/2/8に2023/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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- 2000年設立の無線周波数識別技術(RFID)メーカー。個々のアイテムの識別や場所を管理でき、日用品、医薬品、自動車部品などあらゆる分野でIoT(モノのインターネット)に関連して利用される。
- 10/25発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比4.8%減の65.0百万USD、非GAAPの調整後EPSが前年同期の0.31USDからゼロへ黒字縮小。調整後EPSは会社予想(▲0.12-▲0.06USD)を上回った。厳しいマクロ環境の中でも小売業向けIC(集積回路)ユニット数量が改善傾向を示した。
- 2023/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が65.5-68.5百万USD(前年同期:76.6百万USD)、調整後EPSが▲0.04-0.01USD(同:0.41USD)。会社はエンドポイントICユニット数量の中期的な年平均成長率を29%と想定。コロナ禍特需からの反動減が足元で続くも2024年は正常化に向かうことで成長回復が期待される。同社RFID利用は世界80カ国以上、利用アイテム数は世界で600億以上に上る。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 1993年設立のIT企業でサーバーやストレージシステムを提供。エヌビディア開発の最新GPUである「HGX H100」の認定パートナー資格を取得しているサーバーメーカー世界3社の一角を占める。
- 11/1発表の2024/6期1Q(7-9月)は、売上高が前年同期比14.4%増の21.19億USD、非GAAPの調整後EPSが同0.3%増の3.43USD。調整後粗利益率は同1.8ポイント悪化。生成AI(人工知能)インフラへの強い需要に対し、必要とされるエヌビディア製GPUの供給が追いつかない逆風下で業績を拡大。
- 2024/6期2Q(10-12月)会社計画は、売上高が27-29億USD(前年同期:18億USD)、調整後EPSが4.40-4.88USD(同:3.26USD)。21日発表のエヌビディアの2024/1期3Q(8-10月)におけるデータセンター事業の売上高が前四半期比41%増と急増。スーパーマイクロコンピューターの業績も連動して推移しよう。他方、市場予想PERは24日終値でエヌビディアの38倍台に対し16倍台と割安水準。
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- (※)決算発表の予定は11/24現在であり、変更される可能性があります。
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