“5月FOMC後の長期金利上昇の先を見据えて”
- 5月3-4日開催のFOMC(連邦公開市場委員会)で、事前に予想された通り、FRB(連邦準備制度理事会)が0.5%の政策金利引上げと6月からの保有バランスシート圧縮の開始を決定した。株式市場では、FOMC声明発表とパウエル議長記者会見当日(4日)は、懸念された0.75%幅での利上げに否定的な発言をしたことを受けてダウ平均株価が前日比932ドルの大幅高となったものの、翌5日にはインフレ圧力の高まりに対してFRBによる景気のソフトランディングに懐疑的な見方が広がり、前日比1,063ドルの大幅安となった。3日発表の3月の雇用動態調査(JOLTS)における求人件数が調査開始以来過去最高となり、企業が労働者を十分に確保できないことが示されていた。
- 米10年国債利回りは4日に前日比低下したものの、5日以降に上昇を加速。6日に発表された4月の雇用統計では時間当たり賃金が前月比0.3%上昇、前年同月比5.5%上昇。3月(前月比0.5%上昇、前年同月比5.6%上昇)からはやや減速感が見られたものの、FRBにとって許容できない高水準に変わりないことから金利上昇要因とされ、10年国債利回りが3.14%台に達した。米10年国債利回りの過去10年間における最高水準は2018年10月に付けた3.25%であり、2018年12月のFOMCで政策金利(FFレート)誘導目標上限が2.5%と過去10年での最高水準まで引き上げられる前だった。当時のFOMCでは2019年に2回、2020年に1回の利上げが実施される見通しだった。
- 当時も、世界経済の成長鈍化懸念から米国株が調整局面入りしたことを受け、市場ではFRBが金融政策の手綱を緩めるのではないかとの期待があったが、市場の想定よりもFRBのタカ派色が強かった。そして、実際には19年および20年に政策金利の引上げは行われなかった。足元では連邦住宅金融抵当公庫(フレディマック)の住宅ローン金利が5%を超え、12年ぶりの高水準だ。これを受け、米家計の住宅取得力(100以上であれば住宅取得が可能な所得を得ている)を示す「住宅取得能力指数」の内、初回購入者は昨年9月以降に100を下回り、2018年以来の水準に落ち込んだ。住宅ローン月当たり返済額の高騰により消費が冷え込むリスクも高まっているだろう。
- 個別銘柄の中では、業績が景気動向に左右されにくい業種として、ヘルスケアや生活必需品など「ディフェンシブ関連」と「ハイテク・テクノロジー関連」に投資資金が回りやすい面がある。その中でも金利上昇時に高PER(株価収益率)が嫌気されてディフェンシブに投資資金が向かいがちななか、米10年国債利回り3.25%は景気冷え込みに繋がりやすい水準として留意されよう。利回り低下時にはハイテク・テクノロジー復活の余地もあるだろう。(笹木)
- 5/10号では、エアビーアンドビー(ABNB)、クロックス(CROX)、WWグレンジャー(GWW)、イリノイ・ツールワークス(ITW)、Livent Corp(LTHM)、ウエイスト・マネジメント(WM)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/6現在)
主要企業の決算発表予定
5月10日(火) | オキシデンタル・ペトロリアム、ウェルタワー、ウィン・リゾーツ、エレクトロニック・アーツ、フォックス、シスコ、ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス、トランスダイム・グループ、デンツプライ・シロナ |
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5月11日(水) | ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー、ステリス |
5月12日(木) | モトローラ・ソリューションズ、タペストリー |
5月16日(月) | テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア |
主要イベントの予定
5月10日(火) |
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5月11日(水) |
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5月12日(木) |
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5月13日(金) |
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5月16日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は5/6現在であり、変更される可能性があります。