9月24日に中国当局が景気刺激策を発表して中国株市場への注目が高まっています。10/29(火)には、中国当局が今後数年間で10兆元(約1.4兆ドル)以上の財政支出を検討していると伝えられており、また、来週の米大統領選挙はリスクイベントの通過と捉えられる可能性が高そうです。注目が高まっている中国に投資できる銘柄をご紹介いたします。
図表1 言及銘柄
銘柄 | 株価(10/29) | 52週高値 | 52週安値 |
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iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI) | 32.04米ドル | 37.50米ドル | 20.86米ドル |
小米 B(01810) | 25.85香港ドル | 26.50香港ドル | 11.84香港ドル |
比亜迪 (Byd)(01211) | 297.00香港ドル | 320.80香港ドル | 167.80香港ドル |
テンセント(騰訊)(700) | 418.40香港ドル | 482.40香港ドル | 260.20香港ドル |
美団W(03690) | 189.30香港ドル | 217.00香港ドル | 61.10香港ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回は中国政府による景気刺激対策で注目が高まっている中国株について、ご紹介いたします。
〇中国の景気刺激策・・・踏み込んだ内容に注目
中国当局が9月24日に発表した景気刺激策は以下のように要約できます。金融緩和、不動産対策については、これまで何度も実施されてきたものです。
一方、市場支援策については、PBR1倍割れ企業の改善計画、上場企業のM&A促進など、これまでになく踏み込んだものとなっており、株式市場の期待が高まった要因になったとみられます。
【金融緩和】
・預金準備率引き下げ / 7日物オペ金利引き下げ
・MLF金利(中期貸出ファシリティ金利)引き下げ / LPR(最優遇貸出金利)引き下げ
【不動産対策】
・住宅頭金比率引き下げ / 既存住宅ローン金利引き下げ
・主要銀行の資本増強
【市場支援】
・政府系ファンドの投資拡大
・PBR1倍割れ企業に改善計画
・上場企業のM&A促進
・人民銀行が、自社株買い資金枠3000億元、株式など担保の5000億元資金枠を設定
9/26(木)には中国共産党中央政治局会議で、2024年の経済成長目標達成に向け「必要な財政支出」を実施する方針を示して、期待が高まりました。
また、10/29(火)には、中国当局が弱体化する経済を活性化させるため、今後数年間で10兆元(約1.4兆ドル)以上の追加債務発行を含む大規模な財政刺激策を検討していると報じられています。この提案は早ければ来週にも承認される可能性があると言われています。
〇株式市場の反応・・・大幅上昇から半値押しで様子見
香港ハンセン指数は、景気刺激策が発表される前の9/23(月)終値18,247.11ポイントから10/7(月)終値23,099.78ポイントまで26.6%上昇、10/28(月)終値はほぼ半値押しに当たる20,599.36ポイントとなっています。
具体的な財政支出の発表や米大統領選挙を控えて様子見姿勢が強くなっているとみられます。ただ、市場の期待は根強いとみられ、経済指標の改善傾向が定着する、また、米大統領選挙のイベント通過を待って、再び上昇する可能性もありそうです。
上海総合指数についても、香港ハンセン指数に似た値動きとなっており、ほぼ半値押し水準で様子見となっています。
〇大統領選挙の影響・・・重要イベント通過となるか
中国株投資について、米中関係がどうなるかはリスク要因です。ただし、2018年にトランプ大統領の下で対中貿易関税が引き上げられて、その後のバイデン政権でも概ねこれが維持され、既に6年が経過しています。
トランプ大統領は、再び関税の引き上げを主張していますが、実際に関税引き上げができる分野も限られるでしょうし、追加的なネガティブインパクトも限られるのではないでしょうか。
10/28(月)には、バイデン米政権が米国の個人および企業による中国の先端技術への投資を制限する規制を最終決定したとされます。半導体、量子コンピューティング、人工知能(AI)などが対象です。
これらの産業への投資の一部を禁止するほか、その他の投資については米政府への通知を義務付けています。米国の資本とノウハウが中国に軍事的優位性をもたらし得る重要な技術の開発支援につながらないようにすることを目的としています。
中国側からすると、事業リスクを限定することができるため、歓迎できることでしょう。審議に1年余りの時間を重ねて策定された規則ということですので、仮にトランプ氏が大統領になったとしても、当面はこれに沿った対応となることが想定できるでしょう。
そういう意味では、中国株投資にとって米大統領選挙は重要なリスクイベントの通過となる可能性が高いのではないでしょうか。
図表2 香港ハンセン指数(日足、1年)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表3 上海総合指数(日足、1年)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
中国株への投資を検討するに際して、経済の状況と株式バリュエーションの状況を確認しておきましょう。
〇中国経済の状況・・・足もとまで低調が続く
中国の鉱工業生産と小売売上高は、新型コロナによる下ぶれとその後の反動増で激しい上下を繰り返した後、2023年から落ち着いた動きとなっています。2024年に入ってからは年初から伸び率が低下傾向となって、今後下振れるのではないかとの懸念が高まっていました。このような状況を受けて、中国当局も経済対策を打ち出したと考えられます。
10/17(木)に発表された直近のデータは、9月鉱工業生産は前年比+5.4%で、8月の同+4.5%から改善、市場予想の同+4.6%を上回りました。また、9月小売売上高は前年比+3.2%で、8月の同+2.1%から低下したものの、市場予想の同+2.5%を上回り、景気改善への期待が維持されました。
また、企業景況感は9月の製造業PMIが49.8、非製造業PMIが50.0と景気拡大・縮小の分岐点とされる50前後となっています。製造業PMIは、5ヵ月連続で50を下回って推移していますが、足もとでやや改善の兆しがうかがえます。非製造業PMIについては、低下基調が続いており、50割れとなるかどうか注目されています。
今後の主要な経済指標の発表予定は、以下の通りです。
・10/31(木) 10月製造業・非製造業PMI
・11/6(水) 10月貿易統計
・11/13(水) 10月社会金融総量
・11/14(木) 10月鉱工業生産・小売売上高
・11/19(火) 11月製造業・非製造業PMI
〇中国株(香港株)のバリュエーション・・・引き続き長期レンジの下限辺り
ハンセン指数の予想PERは、昨年後半から今年にかけて10倍を割り込んでいたことを例外とすると、長期的には10〜14倍のレンジで推移しており、レンジの中心は12倍と考えて良さそうです。10/29(火)終値20,701.14ポイントは9.8倍に当たり、依然として割安感が残っていると言えそうです。
ハンセン指数採用銘柄のEPSについては、2024年は前年比10.3%増、2025年は同5.0%増と堅調の予想です。経済対策によって経済の下振れが避けられるなら、予想PERは過去平均の12倍程度へ回復、さらに経済の改善が進むなら、それ以上に上昇していく期待もあるでしょう。
図表4 中国の鉱工業生産と小売売上高

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5 香港ハンセン指数のバリュエーション

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
中国株式市場に投資する手段として、代表的なETFとスクリーニングによって選んだ個別銘柄を4つご紹介いたします。
個別銘柄については、香港および米国に上場する中国株について、以下の条件を満たすものを図表6に抽出しました。ここから下掲の4銘柄を選んでいます。
【スクリーニング条件】
(1)香港上場、米国上場の中国株で時価総額500億ドル以上
(2)来期の予想増収率が前年比5%増以上
(3)来期の予想増益率(EPSベース)が前年比10%増以上
〇iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI)
ブラックロックが提供する中国株のETFで、香港証券取引所で取引されている中国の大型および中型株式で構成される指数と同等の投資成果を目指しています。10/28(月)の純資産額は102.7億ドルです。
組み入れ上位銘柄は、美団W(03690) が10.6%、アリババグループ(09988)が8.7%、テンセント(00700)が8.2%、などとなっています。
〇小米 B(01810)
中国のスマホ大手で、テレビなどの家電、インターネットサービス、電気自動車(EV)にも展開。スマホの世界シェアは2023年に12.5%で、アップル、サムスン電子に次ぐ3位。
プレミアム・スマホの売上増加が業績をけん引する見通し。スマホの海外展開、インターネット事業、EVも収益貢献が期待される。
〇比亜迪 (Byd)(01211)
電池を祖業に2003年に自動車事業に参入。現在、純電気自動車とプラグインハイブリッド車を生産する。自社開発のリン酸鉄リチウム系バッテリーを擁します。
競争の激しい中国のEV市場でも、同業を上回る販売台数とバッテリーを内製していることにより、相対的に安定した利益率を確保できると期待されます。
〇テンセント(騰訊)(700)
対話アプリ「微信(WeChat)やポータルサイト「QQ.com」を基盤にゲームやスマホ決済、動画配信などを手掛けます。オンラインゲームの配信で世界最大手です。
来年にかけて利益成長は鈍化するものの、規制環境の落ち着きとコスト削減によって中期的に10%以上のキャッシュフロー成長が期待されます。
〇美団W(03690)
飲食店や旅行代理店などの事業者と消費者を結ぶ電子商取引プラットフォームを運営します。2015年にネット出前の「美団」と口コミサイトの「大衆点評」が合併、2018年にシェア自転車の「摩拝単車(モバイク)」を傘下に収めました。
食品小売り、共同購入、ライド・シェアリング、バイク・シェアリングなどの事業効率改善により、利益率を拡大すると期待されます。
図表6 主要中国銘柄のスクリーニング

注:香港上場銘柄の時価総額は、1米ドル=7.77香港ドルで米ドルに換算しています。データは10/29(火)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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