年初にご紹介した「2024年の注目銘柄5選」のパフォーマンスが年初来24.3%上昇と好調です(2/20(火)時点)。S&P500指数採用銘柄で年初来上昇率1位のエヌビディア、同3位のイーライリリィを選定したことが大幅な上昇につながりました。10-12月期決算の結果も踏まえ、今後の見通しを検討いたします。
図表1 注目銘柄
銘柄 | 株価(2/20) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
エヌビディア(NVDA) | 694.52ドル | 746.11ドル | 204.21ドル |
サービスナウ(NOW) | 752.84ドル | 815.32ドル | 405.37ドル |
クラウドストライクホールディングス(CRWD) | 323.71ドル | 338.45ドル | 111.51ドル |
イーライ リリィ(LLY) | 755.66ドル | 794.47ドル | 309.20ドル |
ネットフリックス(NFLX) | 575.13ドル | 597.00ドル | 285.33ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回は1月9日付「アメリカNOW!今週の5銘柄」でご紹介した「2024年の注目銘柄5選」を取り上げます。
〇「2024年の注目銘柄5選」が好調
「2024年の注目銘柄5選」の株価パフォーマンスが、図表2の通り好調です。
年初来、市場平均のS&P500指数は4.3%の上昇ですが、選定した5銘柄すべてがこれを上回っており、5銘柄の平均上昇率は24.3%となっています。
また、筆頭銘柄としてあげたエヌビディアは年初来40.2%の上昇でS&P500指数採用の500銘柄中トップであり、イーライリリィも29.6%の上昇で3位です。
物色の波に乗っている銘柄を選べたと言えるでしょう。一方、大幅な株価上昇となったものも含まれますので、現在の株価で投資してもよいか、つぎに投資指標について検討してみます。
〇注目銘柄の投資指標
図表3に、予想PER、アナリストの目標株価平均値との乖離率、今期・来期のEPS増加率などの投資指標をリストアップしました。
業績については、いずれの会社も今期・来期ともEPSは20%以上の大幅な増加が予想されています。また、過去3ヵ月の通期EPS修正率はいずれもプラスで、足もとの決算発表(エヌビディアとクラウドストライクホールディングスは11-1月期の発表を控えています)や事業環境も良好と考えられます。
株価については、サービスナウを除いてアナリストの目標株価平均値に近づいている(エヌビディアは2/20(火)に4%下落して乖離が拡大しました)、または、超過しているものが多くなっています。かなり市場での評価が進んだ状態にあることは、間違いないでしょう。このため、新規に買う場合には押し目を待つ、あるいは、時間分散で徐々に買うといったことが必要になっているかもしれません。
一方、過去1ヵ月の目標株価修正率をみると、いずれも上方修正となっており、時間の経過とともに今後も目標株価が上方修正されていく可能性は十分にありそうです。
図表2 「2024年の注目銘柄5選」の株価動向(年初来、日足)
注:最後のデータは2/20(火)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3 注目銘柄の投資指標
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
5銘柄の選定ついては、まず、注目できる投資テーマとして、「AI関連」「サイバーセキュリティ」「肥満治療薬」を選び、それぞれから、最も株価が上昇できると考える銘柄を選びました。投資テーマからの銘柄選択が妥当だったのか、検証します。
関連銘柄が多く、選択の余地が大きいAI関連のソフトウェアの分野で選んだサービスナウと、サイバーセキュリティの分野で選んだクラウドストライクホールディングスの銘柄選択がどうだったのか、以下で検証します。
その他の選定銘柄である、エヌビディアがAI関連で最も関連性が高いというのは議論の余地がないと考えられます。また、「肥満治療薬」では、実際に製品化しているのはイーライリリィとノボノルディスクしか選択の余地はなく、米国企業のイーライリリィを選びました。また、ネットフリックスについては、投資テーマではなく、個別要因を理由に選びました。
〇AI関連ソフトウェアの中でサービスナウはどうなのか?
AIを投資テーマとするETFの「ラウンドヒル生成AI&テクノロジーETF」(当社での取り扱いはありません)でソフトウェアの組入上位銘柄を図表4に抽出しています。
年初来のパフォーマンスをみると、エヌビディアなどAI関連のハードウェアは大幅な上昇となったのに対して、AI関連ソフトウェアは目立って買われることはなかったと言えそうです。大型株で上昇が目立つメタプラットフォームズは、AIが材料になって上昇したというよりは、引き続き経営方針の転換による収益性の向上が評価されたとみられます。
AIとの関連性が高いと目されているのは、マイクロソフト、アルファベット、アドビ、セールスフォース、IBM、サービスナウ、オラクルなどですが、目立って買われたものはありませんでした。そういう意味では、サービスナウの選択は平均並みの結果だったと言えそうです。
一方、AIとの関連で大幅に買われたのは、パランティアテクノロジーズ(PLTR)です。同社はビッグデータ分析のソフトウェアを提供していますが、AIのトレーニングには大量のデータを使う必要があることから、同社ソフトウェアの応用範囲が広がっているようです。
拡大する需要に対して「Palantir AIP(Artificial Intelligence Platform)ブートキャンプ」(プラットフォームの使い方を説明するトレーニングセッション)を企業向けに実施して、顧客需要の取り込みに努めています。「Palantir AIPブートキャンプ」を465の企業/組織で560回以上実施しており、「需要は爆発的でどう対応してよいかわからないほどだ」と経営陣はコメントしています。
〇サイバーセキュリティの中でクラウドストライクホールディングスはどうなのか?
図表5に「グローバルX サイバーセキュリティETF(BUG)」の組入上位10銘柄(米国上場企業に限る)を抽出し、株価パフォーマンスと業績予想の状況を示しています。
「5選」に選定したクラウドストライクホールディングスは、年初来の株価上昇率がトップで、同ETFの組み入れ比率も2/16(金)時点で8.1%とトップと、妥当な銘柄選択だったと言えそうです。過去3ヵ月の通期予想EPSの修正率も2.6%と堅調です。
一方、2/20(火)引け後に決算を発表したパロアルト ネットワークス(PANW)は11-1月期決算を発表し、2024年7月期の売上見通しを従来の81.5〜82.0億ドルから79.5〜80.0億ドルに引き下げて、時間外取引で20%近い下落となっています(日本時間2/21(水)午前9時)。顧客がテクノロジー分野への支出を抑制しているとの懸念が広がっており、企業向けIT関連全般への波及を注視する必要がありそうです。
通期EPSの修正率が23.7%と目立っているセンチネルワン(S)は、8-10月期決算が市場予想を大幅に上回って、2024年1月期通期の売上見通しを上方修正しました。自律的なサイバーセキュリティ防御を可能にする人工知能(AI)を搭載した「Singularityプラットフォーム」が注目されています。3/13(水)に11-1月期決算を発表する予定です。
バロニス システムズ(VRNS)は、EPSの下方修正が目立っていますが、テクニカルな要因によるもので、実態は好調です。
なお、サイバーセキュリティに関しては、2023年12月13日付外国株式特集レポート「来年に向けても期待大!?2四半期連続の好決算で物色強まるサイバーセキュリティ業界」もご参考ください。
図表4 AI関連ソフトウェアのパフォーマンスと業績予想
注:データは2/20(火)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5 サイバーセキュリティ銘柄のパフォーマンスと業績予想
注:データは2/20(火)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
エヌビディア(NVDA) | 時価総額: 17,935億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.1 | 26,974 | 0% | 6,134.1 | -37% | 2.44 |
24.1予 | 59,295 | 120% | 30,848.8 | 403% | 12.39 |
25.1予 | 95,826 | 62% | 52,774.5 | 71% | 21.36 |
26.1予 | 111,511 | 16% | 60,541.3 | 15% | 24.70 |
株価(2/16): 726.13ドル | 予想PER(25.1期): 34.0倍 |
【AI向けGPUが伸びる、2/21(水)に決算発表】
・人工知能チャットボット「ChatGPT」のブレークスルーによって生成AI市場の拡大が見込まれ、AIのトレーニングに欠かせないGPU(画像処理半導体)の需要が急拡大しています。現在GPUを量産する会社は、同社とAMDしかなく、AI向けGPU市場の8割以上を同社が支配していると言われています。昨年末からAMDが同市場開拓に本腰を入れており、ある程度の市場シェアを獲得すると想定されますが、引き続き同市場の大部分はエヌビディアが占めると期待されます。
・2/21(水)に11-1月期決算を発表する予定です。11-1月期売上は202億ドル(会社ガイダンスの196〜204億ドルに沿うもの)、2-4月期は216億ドルというのが現在の市場コンセンサスです。台湾セミコンダクターの2024年売上見通し、スーパー マイクロ コンピューターの売上見通し上方修正、パランティアテクノロジーズの決算コメントなどからAI市場の広がりが示唆され、エヌビディアの売上が上振れるとの期待が高まっているとみられます。ただ、ポジティブサプライズとなるのはハードルが高くなっている印象で、目先はやや警戒的にみておいたほうがよさそうです。
サービスナウ(NOW) | 時価総額: 1,568億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
22.12 | 7,245 | 23% | 344.4 | 40% | 1.70 |
23.12 | 8,971 | 24% | 1,758.2 | 410% | 8.55 |
24.12予 | 10,897 | 21% | 2,767.7 | 57% | 13.22 |
25.12予 | 13,146 | 21% | 3,389.8 | 22% | 16.04 |
株価(2/16): 765.00ドル | 予想PER(24.12期): 57.9倍 |
【企業のAI対応で活躍が期待される】
・企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。企業が生成AIの機能を業務執行に生かしていく上で、頼れる存在になりつつあると考えられます。
・10-12月期決算は、売上が前年同期比26%増、EPSが同36%増と好調でした。1-3月期の売上見通しは前年同期比24%増で市場予想を上回り、2024年の売上見通しも前年比22%増で、市場予想をわずかながら上回りました。昨年後半にAI機能を付加して価格を引き上げた製品を投入しており、これが順調に拡大すれば、売上の加速が可能と期待されています。
クラウドストライクホールディングス(CRWD) | 時価総額: 791億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
23.1 | 2,241 | 54% | -182 | 赤字縮小 | -0.78 |
24.1予 | 3,050 | 36% | 717.4 | -495% | 2.96 |
25.1予 | 3,940 | 29% | 931.1 | 30% | 3.78 |
26.1予 | 4,933 | 25% | 1,172.9 | 26% | 4.72 |
株価(2/16): 329.24ドル | 予想PER(25.1期): 87.1倍 |
【サイバーセキュリティ市場が好調】
・サイバー攻撃に対する防御として、ネットワークへの侵入を防ぐやり方と、エンドポイントで不正な動きを検知する やり方がありますが、標的型の攻撃が増えたことでネットワークへの侵入を完全に防ぐのは現実的ではなくなり、侵入後の不正な動きを検知するエンドポイント保護の重要性が増してきました。そのエンドポイント検知分野でのリーダーの地位を確立したことから、安定的に高い売上成長を実現しています。
・11-1月期決算を3/5(火)に発表予定です。売上は前年同期比32%増の840百万ドル、調整後EPSは同4.4倍の0.83ドルの予想です。サイバーセキュリティ企業の多くが5-7月期決算、8-10月期決算とも好調で、この勢いが反映して株価が上昇してきたとみられます。大統領選挙や地政学リスクの高まりまど、サイバーセキュリティ業界を取り巻く事業環境には追い風が吹いていると考えられます。
イーライ リリィ(LLY) | 時価総額: 7,424億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
22.12 | 28,541 | 1% | 6,848.3 | -3% | 7.57 |
23.12 | 34,124 | 20% | 8,276.1 | 21% | 9.16 |
24.12予 | 41,001 | 20% | 11,307.1 | 37% | 12.55 |
25.12予 | 50,702 | 24% | 16,335.3 | 44% | 18.07 |
株価(2/16): 782.06ドル | 予想PER(24.12期): 62.3倍 |
【肥満治療薬市場が巨大に】
・肥満治療薬は2030年に770億ドル(約11兆円)の巨大市場になるとの予想もでており(日本経済新聞記事、モルガンスタンレーの予想)、この市場をデンマークのノボノルディスクとイーライリリーが2分すると見込まれています。期待されている肥満治療薬「ゼプバウンド」は23年11月8日にFDAから承認が下りました。ノボノルディスクの肥満治療薬「ウゴービ」は既に2022年に投入されていますが、臨床試験のときの平均体重の減少は、「ウゴービ」が約15%、「ゼプバウンド」が約21%でした。
・糖尿病治療薬のマンジャロや肥満治療薬のゼップバウンドが売上拡大をけん引して業績好調です。生産能力が売上の制約になっていることから、アメリカではインディアナ州など二拠点の生産能力拡大、ヨーロッパではドイツで製造拠点の建設を行います。新型の糖尿病治療薬、肥満治療薬として需要が拡大している「GLP-1受容体作動薬」は2030年に1,000億ドル(約15兆円)の市場になるとの予想があり、同社はデンマークのノボノルディスクとともに市場を2分すると期待されています。
ネットフリックス(NFLX) | 時価総額: 2,527億ドル | ||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
22.12 | 31,616 | 6% | 4,331.5 | -11% | 9.59 |
23.12 | 33,723 | 7% | 5,547.3 | 28% | 12.34 |
24.12予 | 38,485 | 14% | 7,500.8 | 35% | 17.21 |
25.12予 | 43,006 | 12% | 9,039.7 | 21% | 21.25 |
株価(2/16): 583.95ドル/td> | 予想PER(24.12期): 33.9倍 |
【新規加入者数の増加が期待される】
・動画配信サービスの最大手です。オリジナルコンテンツの創作能力や会員のエンゲージメントを高める能力に定評があり、これによって価格決定力やユニットエコノミクス(顧客1人当たりの採算性を表す数値)を高めることで順調な成長の持続が期待されます。同社のセールスポイントである幅広いコンテンツによって盤石な地位を占めつつ、広告付きプランの導入が加わることで、全世界で8億人のターゲット市場(中国を除く)の取り込みが進むと期待されます。
・10-12月期は、契約者純増が1,312万人(予想は891万人)と好調です。広告付きプランとアカウント共有対策の導入が効いているとみられ、好調が続く可能性が高いと考えられます。CEOは「今後、従来のTV放送からネットにつながる『コネクテッドTV』に多額の広告費が流れる。エンゲージメントが高い視聴者をもつ我々は、有利な立場にある」と自信を示しました。また、プロレスのWWEと提携して、人気番組の「RAW」を2025年から独占配信するとして、新しい客層へのアプローチとして注目されます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
免責事項・注意事項
- 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
- レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。