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中国規制強化の方針が明らかに、「強化業種」と「そうでない業種」は?足元の半導体・EV関連株の調整要因は?

2021/8/18
投資情報部 李 燕

中国の規制強化が新たな局面を迎えました。8月11日、中国国務院が初めて規制強化をめぐり、公式な方針を示しました。中国共産党政治局会議の内容と合わせて考えると、「規制強化の業種」と「そうでない業種」は「ネット関連のハイテク」対「ハイテク製造業」の構図が浮かび上がります。それを受け、半導体やEV関連株が買われてきましたが、足元ではいずれも調整しました。規制強化をめぐる動向を確認したうえ、半導体・EV関連株の調整要因についてみていきたいと思います。

図表1:主な言及銘柄

銘柄 株価(8/17) 52週高値 52週安値
BYD(01211) 252.80香港ドル 295.00香港ドル 68.80香港ドル
ニオ(NIO) 38.62香港ドル 66.99香港ドル 13.06香港ドル
ガンフォンリチウム(01772) 143.70香港ドル 181.80香港ドル 35.65香港ドル
SMIC(00981) 23.40香港ドル 31.95香港ドル 16.74香港ドル
華虹半導体(01347) 43.05香港ドル 64.65香港ドル 21.80香港ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1規制強化をめぐる中国当局の方針が初めて明らかに、その内容は?

7月26日以降の中国株の波乱が注目を集めています。中国当局が立て続けに、幅広い産業に対し規制強化を実施したことで、中国株が急落しました。特に教育サービス分野(たとえば学習塾)に対しては非営利化を求めており、規制の厳しさが予想を超えたため、一時はパニック売りを誘いました。市場では「再びチャイナショック到来?」と、懸念する声もありました。

その後、中国当局が主要投資銀行(世界的な資産運用会社を含む)のトップと緊急オンライン会合を実施し、投資家の懸念払拭に動いたため、相場は少し落ち着きを取り戻しました。教育サービス分野に対する措置は、あくまでも「的を絞ったもの」であると当局が示したことで、あらゆる産業がターゲットでないことが判明し、市場ではひとまず安心感が広まりました。しかし一方で、「あらゆる産業がターゲットでない」のコインの裏面は、ターゲット業種の存在を意味します。「ターゲット業種」とそうでない業種の違いは何なのか、中国当局は必ずしも明確に示したわけではありませんでした。

そんななか、中国国務院(国家権力機関の執行機関)は8月11日に、規制強化をめぐる方針を発表しました。そのタイトルは「法治政府建設の実施要綱(2021-2025)」(以下、「要綱」)です。「要綱」では国家の安全保障や独占禁止を含む分野での法整備に積極的に取り組むと表明しました。一連の規制強化の後、中国当局が初めて方針を示した格好です。

以下は、「要綱」の主なポイントです。
1)期間:「要綱」のタイトルの「2021-2025」からも読み取れるように、規制をめぐる取り組みはまだまだ続くことが示唆されました。2025年まで続くとの解釈もありますが、中国の場合、「5年」や「10年」といった政策発表が一般的ですので、必ずしも5年続くとは限らないといえます。

2)分野:「立法」と「法執行」を強化する10の分野がそれぞれ示されました(図表2)。そのうちこれまで規制が強化された分野が目立ちました。たとえば反トラスト(ネット大手に対する独占禁止)、文化教育(オンラインゲームや動画配信に対する監視強化)、対外にかかわる分野(新興企業の米国IPOに対するけん制)、労働保障(フードデリバリースタッフに対する最低賃金保障の要求)、教育訓練(学習塾の非営利化)、リスク防止・金融サービス(フィンテックの管理強化)などが含まれています。

図表2:「立法」と「法執行」を強化する分野

立法を強化する分野 法執行を強化する分野
1 国家安全 食品薬品
2 技術革新 公共衛生
3 公共衛生 天然資源
4 文化教育 生態環境
5 民族宗教 安全生産
6 生物安全 労働保障
7 生態文明(エコ文明) 都市管理
8 リスク防止 交通運輸
9 反トラスト(独占禁止) 金融サービス
10 対外にかかわる分野 教育訓練
  • ※中国当局公表の「法治政府建設の実施要綱(2021-2025)」よりSBI証券が作成

1)と2)を総合すると、「要綱」は規制強化のタイムスパンや「ターゲット業種」について、ある程度の情報を提示しました。ただし、必ずしもすべてが明確になったわけではなく、規制をめぐる不透明感は続くことが示唆されました。それを受け、「要綱」の発表後、中国株の主要指数は引き続き軟調でした。ただし、下落幅は限定的でした。

なお、「立法」を強化する分野に「技術革新」が入っていますが、ここでは技術革新そのものではなく、技術革新によって生まれた「新しい業態・新しいモデル」を指します。「立法」に関する項目では、「新しい業態・新しいモデルの健全な発展を促すために、デジタル経済やフィンテック、人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドコンピューティングに関する法制度の研究とフォローアップをタイムリーに実施する」と説明しています。これらのインターネットやソフトウェア関連産業のイノベーションに対し、法整備が追い付いていないと中国当局が認識していることが窺えます。

一方、「要綱」では、「デジタル法治政府の建設を全面的に実施する」という項目を単独で挙げており、インターネットやビッグデータ、AIを活用した行政運営や監督を推進するとしています。「IT関連は立法で抑え込む」のではなく、今後の健全な発展と活用のために法制度を整える意向と読み取れます。

「法執行」を強化する分野では、民生・安全・不平等問題(食品薬品、安全生産、労働保障、教育訓練)、資源・環境(天然資源や生態環境)、システミックリスクの防止(金融サービス)にかかわるものが目立ちました。上記は、いずれもこれまで経済成長を優先してきた過程のなかで、「おろそかに」してきた分野といえます。その意味でいうと、中国当局は法の整備や執行において、成長よりも質や統治、格差是正を重視する方針を一層明確に打ち出しています。

ただ、「質重視」一辺倒とも限らないことが示されています。立て続けの規制強化を実施した直後の7月30日に、習近平・国家主席主催の共産党中央政治局会議(以下、会議)が開かれました。毎年この時期に開かれる会議ですが、今回は一連の規制強化の最中だったこともあり、会議での声明文が注目を集めました。

声明文では国内市場の潜在力を掘り起こし、新エネルギー車の発展加速を支援する方針が示されました。「新エネルギー車」が単独で取り上げられたことは、同産業を新たな成長分野に据えることを再確認したことになります。また、「第14次5ヵ年計画(2021-2025)」で取り上げた重大プロジェクトの建設を推進し、企業が技術力アップに向けた投資を拡大するよう促すとしました。ハイテク製造業の発展を支援する意向がみられます。

「専門化・精細化・特色化・新鋭化」の中小企業の発展も促すと表明しました。IT分野で「巨大化」が目立つ大企業よりも、多分野にわたり優秀な中小企業を数多く育てようとする意向と思われます。カーボンニュートラルについては、中長期的な目標の実現に向け、統一された秩序のある発展を促すと表明しました。

一連の流れから、「規制強化の業種」と「そうでない業種」は、「ネット関連のハイテク」対「ハイテク製造業」との構図であることが浮き彫りになりました。それを受け、株式市場では新エネルギー車や半導体、カーボンニュートラルなど新エネルギー関連株、および中小型株が買われました。ただし、半導体関連株は8月の2週目に、EV関連株は8月の3週目にそれぞれ大幅に調整しました。

2足元で半導体・EV関連株が波乱、それぞれの調整要因と見通し

中国当局の規制強化を受け、ネット大手の株価が大幅に調整したことをしり目に、中国当局が支援を表明している半導体やEV関連株は短期的に急上昇しました。しかし、半導体関連株は8月の2週目に、EV関連株は8月の3週目にそれぞれ利益確定売りに押され、大幅に調整しました。以下は、それぞれの調整要因です。

【半導体株の調整要因】

背景として、主に世界半導体産業の見通し悪化が挙げられます。
1)8月10日、台湾の市場調査会社であるトレンドフォースがPC向けDRAM価格について、7-9月期は前期比3-8%上昇するが、10-12月期は前期比0-5%下落する可能性があるとの予想を発表しました。
2)8月12日、モルガン・スタンレーが、「半導体メモリー 冬の時代が来る」と題したレポートを発表しました。
3)8月12日、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が6営業日続落し、2018年10月以来の長期下落となりました。

図表3:SOX指数の推移

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

これらを受け、韓国や米国の半導体メモリー株を主導に、世界株式市場では半導体株が調整しました。香港市場でも、中国半導体ファンドリーのSMIC(00981)や華虹半導体(01347)などが利益確定売りに押されました。これまで半導体不足を背景に、半導体産業に対して楽観的な見通しが続いていましたが、PC向けDRAM価格の下落予想を受け、半導体メモリー(DARM・NAND)の見通しに対し修正が必要ではないかとの懸念が強まりました。

なお、世界半導体市場統計(WSTS)は今年6月予測発表で半導体産業の規模拡大において、メモリーの寄与率は今後低下し、ロジック(CPU・DSP)の寄与率が高まると予測しています。スマートフォン向けや車載などロジックへの需要拡大が背景にあると考えられます。一方、メモリー市場の見通し修正は半導体産業全体に対する見通し修正につながる可能性があり注意が必要です。また半導体株の売りは、米国のテーパリングや利上げ懸念を背景に投資家のリスクセンチメントが悪化していることも一因として指摘されています。足元で不透明要因が多く、短期的には引き続き警戒が必要かもしれません。

【EV関連株の調整要因】

EV関連株の調整は、主に中国国内の要因によるものです。
1)主要株主による保有株式の売却懸念
業種別主要株主による保有株式の売却状況で、7月は自動車がトップ業種だったことが明らかになりました。企業別ではEV大手のBYD(深セン上場:002594、香港上場:00981)が首位でした。また8月16日は、リチウム電池のセパレーター事業を展開する雲南恩掟捷新材料(002812、深セン上場)が大量のロックアップ解除を迎えましたが、同社株は8月16日に急落しました。これを受け、香港市場のBYD(00981)やガンフォンリチウム(01772)が大きく下落しました。

2)EV関連の代表銘柄による保有株売却
EV向け電池最大手のCATL(300750、深セン上場)は8月16日、蓄電分野で提携している永福股份(300712、深セン上場)の株式持ち分を減らすと発表しました。それを受け、両社の株価はともに大きく下落しました。CATLは足元で大規模な増資計画の発表で株価が軟調でしたが、8月16日は一段安となりました。

3)EVに関する事故
8月15日夜、新興EVメーカーのニオ(NIO)のプレミアムSUV「ES8」が高速道路で衝突事故を起こし、運転手が死亡したことが明らかになりました。ネット上では、「ES8」に搭載した自動運転システムが前方車両を探知できなかったため事故につながった、ニオの担当者は事故の後データを削除したなど噂が流れました。ニオは搭載しているのは「自動運転システム」ではなく「運転支援システム」であり、データの削除もしていないと釈明しました。事故原因については調査中であり、積極的に調査に協力していると表明しました。

上記の1)と2)は、EV関連株のバリュエーションの高さに対する警戒につながりました。もっともEV関連株は短期的に急騰してきたこともあり、利益確定売りに押されやすい状況にありました。3)はネットの噂でEVの安全性に対する不安を助長しました。事故原因については調査中のため、現段階で今後のEV販売に対する影響を分析することは難しいです。他方、業界識者の間ではEV普及の初期段階では事故は避けられず、事故によってEV化が止まることはないとの見方もあります。

短期的にみて、EV関連株は投資家のセンチメント次第で利益確定売りが続く可能性があります。一方、EV化は世界的潮流であることに加え、中国当局も新エネルギー車を今後の成長産業として支援していく方針を示していることから、中長期的にみると調整時は押し目買いのチャンスとなるでしょう。

図表4:一部EVと半導体関連株の株価水準と業績予想(注)

  関連
分野
銘柄
コード
予想
PER
過去5年
平均PER
今期予想
増収率
今期予想
増益率
来期予想
増収率
来期予想
増益率
1 EV BYD(01211) 123 59 29% 14% 23% 41%
2 ニオ(NIO) - - 122% 赤字縮小 67% 赤字縮小
3 ガンフォンリチウム(01772) 68 - 67% 118% 40% 50%
4 半導体 SMIC(00981) 18 39 33% 49% 13% -21%
5 華虹半導体(01347) 42 25 55% 71% 29% 24%
  • 注:業績予想はBloomgergがまとめたコンセンサスで、増益率はEPSベース(調整後)です。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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