香港ハンセン指数が7月26日に前場で2.9%下落し、ハンセンテック指数は5.7%下落しました。
ハイテク株を筆頭とする急落の背景には何があったのでしょうか。結論から申し上げますと、ネット大手に対する中国当局の締め付けが範囲を広げており、当面続く可能性が高いことから、ネット大手を筆頭に市場全体にリスク回避の売りが広まったということです。
まず、足元の出来事や市場への影響を時系列で確認してみましょう。
図表:規制強化をめぐる出来事と市場への影響
日付 | 出来事 | 備考・市場への影響 |
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7月23日(金) | 中国当局がオンライン教育業界に対し、規制を強化する予定だと一部メディアが報道しました。 | ・米国上場のオンライン教育関連銘柄のTAL エデュケーション ADR(TAL)が7月23日に71%下落、ニューオリエンタル・エデュケーション ADR(EDU)は54%下落しました。 |
7月24日(土) | 中国当局はオンライン教育業界に対する包括的規制を発表しました。具体的には、オンライン教育関連企業に対し、非営利団体への転換を求めるほか、増資・株式公開を禁止するといった内容が含まれています。 | ・ネット大手に対する規制強化が教育分野にも及んだ格好ですが、当局があらゆるネット関連企業に対して規制を強化するのではないか、との懸念が高まりました。 ・当局が「非営利化」を求める事例は初めてで、市場に衝撃を与えました。関連企業はビジネスモデルを根本から転換しなければならなくなる可能性があります。 ・香港上場の関連企業のニューオリエンタル・エデュケーション(09901)や新東方在線(01797)の株価は7月26日前場で3-4割下落し、リスク回避の売りを誘いました。 |
7月24日(土) | 中国当局はテンセント(00700)に対し、独占的な音楽配信権を放棄し、50万元の罰金を支払うよう命じました。 | ・テンセント(00700)の株価は7月26日前場で7%下落し、ネット大手も連れ安しました。 |
7月26日(月) | 中国当局は、インターネットセクターに対する取り締まりを開始すると発表しました。これまでのプラットフォーム企業に対する規制強化に基づき、さらにインターネットセクターに対し、規制強化を実施するとしました。期間は半年で、市場秩序やデータの安全性などを脅かす違法行為などが対象となる予定です。 | ・ネット大手に対する規制強化が「まだまだ続く?!」との印象を市場に与えました。 ・オンライン教育関連銘柄の激しい売りも相まって、市場全体にリスク回避の売りが広がりました。 |
- 出所:各種資料をもとにSBI証券が作成
次に、全般的にみて、一連の流れからすると、中国当局によるネット大手に対する規制強化は、昨年末にアリババ(09988)に対する調査から始まり、今年6月には滴滴出行(DiDi)、7月にはオンライン教育分野まで広がっています。内容も独占禁止法だけでなく、データの安全性など幅広い分野に及んでいることを考えると、ネット大手に対する当局の規制強化は当面続く可能性が高いとみられます。当局による規制に関する「視野」がある程度晴れるまで、「規制リスク」はしばらく相場の重しとなるでしょう。