新型コロナウイルスのワクチン開発が視野に入るにつれ、ウィズコロナ銘柄がポスト・パンデミックでも好調を維持できるか気になるところです。そこでこれを検討した米国の株式投資番組の内容をご紹介いたします。合わせて、その中で筆者が有望と考えるアウトドア関連の銘柄をご紹介いたします。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価(10/6) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
ペロトン インタラクティブ A(PTON) | 111.31ドル | 113.87ドル | 17.70ドル |
ピンタレスト A(PINS) | 43.01ドル | 45.20ドル | 10.10ドル |
レストレーション ハードウェア(RH) | 361.98ドル | 410.49ドル | 73.14ドル |
カーヴァナ(CVNA) | 214.65ドル | 242.15ドル | 22.16ドル |
ポラリス(PII) | 101.42ドル | 110.30ドル | 37.36ドル |
ソーア インダストリーズ(THO) | 101.97ドル | 121.33ドル | 32.30ドル |
ブランズウィック(BC) | 62.87ドル | 73.99ドル | 25.22ドル |
イエティ ホールディングス(YETI) | 48.35ドル | 55.04ドル | 15.28ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
9/29(火)の米経済専門チャンネルCNBCの株式投資番組「Mad Money」では、「ポスト・パンデミックのステイング・パワー(定着力)」と題して、ウィズコロナ銘柄として市場で注目を集めた銘柄について、ポスト・パンデミックでも好調を維持できるかを検討していました。興味深い内容だと思いましたので、ご紹介いたします。
番組ホストのジム・クレイマー氏は、「ワクチン開発が近づくにつれ、この市場では一つの問題が重要性を増す。それは、『新型コロナウイルス後の未来はどのようなものになるのか?』というものだ」とします。
ワクチン開発が成功したとして、すべての消費活動がコロナ前の状態に戻るかというと、そうではないと考えられます。前の状態に戻る部分もあれば、「ニューノーマル」として定着する部分もあるでしょう。株式市場は将来を予想して動くので、これを選別しながら動いているはずだというわけです。
番組では図表2の銘柄群を取り上げて、ジム・クレイマー氏自身がどう判断するかは保留しながらも、直近の株価動向から堅調推移のものを「定着(Here To Stay)」、上昇一服または反落となっているものを「定着せず(Going Away)」に分けて銘柄を紹介していました。
定着の可能性が高いものとして、ペロトン インタラクティブ A(PTON)、ピンタレスト A(PINS)、レストレーション ハードウェア(RH)、カーヴァナ(CVNA)などがあげられていましたので、簡単にご紹介いたします。
ペロトン インタラクティブ A(PTON)は、室内で使用するエクササイズ・バイクを販売している企業で、昨年9月に新規上場しています。バイクにはディスプレイが付いており、インターネットを通じてインストラクターが指導するエクササイズ・クラスに参加できることから人気となっています。
4-6月期決算は、売上が前年同期比2.7倍の607百万ドルに急増、営業利益が黒字転換して90百万ドルとなっています。外出規制をきっかけに自宅での運動に関心が高まったうえ、フィットネスジムの倒産が相次いでいることから、ポスト・コロナでも需要拡大が続くと期待されています。
ピンタレスト A(PINS)は、ネット上のWEBサイトやピンタレスト上にある画像から、自分の興味があるものをボードに整理できる(ピン止めする)画像収集サービス(「デジタル・スクラップブック」)を提供しています。レストランの閉鎖で自宅で料理を作ることが増えて、同社のサービスでレシピを集めることが流行して恩恵を受けています。
4-6月期の売上は経済の混乱によって広告主が出稿を抑えたため前年同期比4%増にとどまり、1-3月期の同35%増から大幅な減速となりました。しかし、7月の広告収入は前年比約50%増に急増したとして、7-9月期売上は前年同月比30%台半ば増の伸びへの回復が見込まれています。
レストレーション ハードウェア(RH)は、高級家具の販売店を運営している企業で、米国中心に68の高級感のあるギャラリーを運営するほか、カタログによる販売も行っています。19年9月にバークシャー・ハサウェイが株式を取得して注目された企業でもあります。テレワークをする人が増えて自宅をより快適にしたいとの欲求から、家具への需要が拡大しているようです。また、旅行や外食が抑えられている部分の消費が回っている可能性もありそうです。
5-7月期の売上は前年同期比横ばいながら粗利率の改善によって税前利益は同11%増と堅調でした。一方、受注は同16%増となり、サプライチェーンの混乱で売上計上が遅れているものの、実需は好調だったとしています。さらに月別の受注は、5月前年比1%減、6月同23%増、7月同26%増、8月同38%増と加速している点も注目されます。
カーヴァナ(CVNA)は、ネットで中古車の売買ができるサイトを運営している企業です。地域ごとにサイトを作る必要がありますが、4-6月期に100サイトを加えて261サイトに達し、そのサイトがカバーする地域は米国の人口の73%を占めます。新型コロナウイルスのパンデミックの結果、公共交通機関に不安をもつ人が増えて、中古車の購入を検討する人が増え、恩恵を受けると期待されています。
4-6月期の売上は前年同期比13%増にとどまり、1−3月期の同45%増から大幅に減速しましたが、4-6月期の期末には前年比約40%増まで売上が改善したとしています。7月に入っても同様の勢いが維持されており、需要はさらに高まる見通しとしています。
同番組の中では株価上昇が一服していることを受けて、「定着せず(Going Away)」に分類されていたアウトドア関連ですが、筆者には有望に思えるため、次節でいくつかご紹介いたします。
図表2:定着力が気になるウィズコロナ銘柄
銘柄(コード) |
事業内容とウィズコロナでの注目点 |
|
---|---|---|
定着? |
ペロトン インタラクティブ A(PTON) |
エアロバイク、家で運動・ジムの倒産 |
ピンタレスト A(PINS) |
SNS、料理のレシピが豊富 |
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ウェイフェア A(W) |
家具販売、自宅を快適に |
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レストレーション ハードウェア(RH) |
家具販売、自宅を快適に |
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カーヴァナ(CVNA) |
中古車のネット販売、自動車通勤の増加 |
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ドミノ ピザ(DPZ) |
ピザの宅配、レストランス閉鎖 |
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フェイスブック A(FB) |
SNS、巣ごもり消費 |
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エッツィ(ETSY) |
手芸品のネット販売、巣ごもり消費 |
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ショッピファイ A(SHOP) |
ECサイト構築ソフトウェア、巣ごもり消費 |
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定着せず? |
キャンピングカーメーカー各社 |
キャンピングカー、距離をとって遊ぶ |
ポラリス(PII) |
オフロード車、距離をとって遊ぶ |
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ブランズウィック(BC) |
ボート、距離をとって遊ぶ |
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マコーミック(MKC) |
香辛料、家での食事が増える |
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キャンベルスープ(CPB) |
スープ、家での食事が増える |
- ※各種報道をもとにSBI証券が作成
レジャーに関しては、新型コロナウイルスによって消費者の行動が大きく変わる可能性があるとみられます。海外旅行に気軽に行けるようになるのはまだ先だと思われますし、「密」を避けるために映画館、テーマパーク、ジムなどは敬遠される傾向が続きそうです。
先週ウォルトディズニーが発表した2万8,000名に及ぶ人員削減は、これを象徴する動きと言えるのではないでしょうか。同社のテーマパーク事業の従業員は11万人程度のためかなり大きい削減です。テーマパーク部門の責任者は、「(パンデミックが)短期間で収まり通常の生活に戻ることを期待していたが、7ヵ月が経過した今、そうでないことがわかった」としています。
レジャーについては、しばらくは「密」を避けてアウトドアの比重を増やす人が多くなりそうです。日本でも登山をする人が増えているとの報道があったり、「ひとりキャンプ」が関心を集めたりしています。
そこで今回は米国のアウトドア関連の銘柄をご紹介いたします。当社が取り扱う米国株で、「レジャー用品」のセクターに属し、アウトドア活動との関連が深いとみられる銘柄を図表3にリストアップしました。時価総額が大きいものを中心にご紹介いたします。
オフロード車の小売店での販売が前年比5割以上増え、キャンピングカーの受注残が3倍近くに増えるなど、消費者のアウトドア志向は間違いなく強まっているとみられます。
ポラリス(PII)
レジャー用のオフロード車の分野で世界的なメーカーで、日本の公道を走らせるには許可を取る必要があるほどの本格的オフロード車です。米国を中心に西欧、オーストラリアなどでも事業展開しています。
4-6月期の売上は前年同期比15%減で営業赤字となったものの、北米の小売店での販売は同57%増、ディーラーの在庫は同47%減と、ソーシャルディスタンスをとって楽しめるレジャーとしてオフロード車の需要は急増しています。このため、下半期の同社業績は急回復が見込まれます。20年通年について、売上は前年比マイナス2%減〜0%、調整後EPSは同1〜4%増のガイダンスを発表しています。
ソーア インダストリーズ(THO)
1980年に創業したレジャー用自動車メーカーの大手で、モーターホーム、キャンピングカー、旅行用トレーラーなどを手掛けます。北米のキャンピングカー市場は17年にピークをつけて18年、19年は調整となりましたが、20年に底入れが見込まれています。
同社の5-7月期は売上は前年同期比0%、純利益は前年度に発生した買収費用の剥落などで同29%増でした。新型コロナウイルスのパンデミックによるアウトドア志向やリモートワークの広がりの影響でキャンピングカーの需要が拡大しており、20年7月末の受注残は、前年比2.9倍の57.4億ドルに達しています。北米のキャンピングカー市場は、業界団体の指標などから21年(暦年)は20年比19.5%程度拡大する見通しであり、同社の21年7月期も成長が見込まれるとしています。
ブランズウィック(BC)
船外機などマリンエンジン(売上の7割)とプレジャーボート(同3割)を製造販売する企業で、1925年から上場する老舗です。米国を中心に世界24ヵ国で事業を展開しています。フィットネスジムの設備関連事業を19年に売却しており、グッドタイミングでした。
4-6月期は小売店が一時閉鎖された影響を受けて売上は前年同期比15%減、営業利益は同34%減と落ち込みました。ただ、パワーボートの業界売上は、4月が前年比38%減、5月同6%減、6月同18%増と急回復となり、同社の6月販売もほとんどの製品が過去最高の売上を記録したとしています。レジャーのアウトドア志向の強まりによって、年後半の業績回復が期待されます。
イエティ ホールディングス(YET)
クーラーボックス、水筒、折り畳みイスなどアウトドアで使用する各種用品に特化したメーカーです。4-6月期は売上が前年同期比7%増、調整後EPSは同49%増と堅調でした。店舗閉鎖の影響を受けて卸売販売は同24%減の114百万ドルとなった一方、ネットでの直接販売が同61%増の133百万ドルとなって、全体で増加を達成しています。
決算リリースで「新型コロナウイルスのパンデミックは、自然を体験したりアウトドア活動を試したりして時間を過ごすことに対する消費者の考え方に大きなインパクトを与え、アウトドア用品に対する需要が拡大している」としています。
図表3:アウトドア関連銘柄
コード |
銘柄名 |
事業内容 |
時価総額 |
---|---|---|---|
PII |
ポラリス(PII) |
オフロード車など |
62.6 |
THO |
ソーア インダストリーズ(THO) |
キャンピングカーなど |
57.0 |
BC |
ブランズウィック(BC) |
マリンエンジン、プレジャーボート |
50.9 |
YETI |
イエティ ホールディングス(YETI) |
クーラー、水筒、バッグなど |
42.2 |
LCII |
LCIインダストリーズ(LCII) |
キャンピングカーなどの部品 |
29.5 |
CWH |
キャンピング ワールド ホールディングス A(CWH) |
キャンピングカーなど |
28.9 |
GOLF |
アクシネット(GOLF) |
ゴルフ用品 |
27.0 |
WGO |
ウィニベーゴ インダストリーズ(WGO) |
キャンピングカーなど |
18.9 |
ELY |
キャラウェイ ゴルフ(ELY) |
ゴルフ用品 |
18.9 |
VSTO |
ビスタ アウトドア(VSTO) |
狩猟関連用品など |
12.9 |
- ※注:時価総額は10/5(月)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。