米国では11/23(木)は感謝祭の祝日で、翌日の「ブラックフライデー」から年末商戦が本格化します。今年は、雇用の回復持続、世界的な株高、住宅価格の上昇、消費者心理の向上など年末商戦が活況となる条件が揃っていると言えるでしょう。米国の年末商戦で注目できる小売企業をご紹介いたします。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(11/21) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
アマゾン ドットコム(AMZN) | 1139.49ドル | 1140.00ドル | 736.70ドル |
ウォルマート ストアーズ(WMT) | 96.52ドル | 100.13ドル | 65.28ドル |
ホーム デポ(HD) | 172.86ドル | 172.86ドル | 127.41ドル |
ダラー ツリー(DLTR) | 99.46ドル | 100.54ドル | 65.63ドル |
ベスト バイ(BBY) | 56.06ドル | 63.32ドル | 41.67ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米小売セクターのマクロ環境は良好 |
米国では11/23(木)の感謝祭の祝日から年末商戦に突入します。1年で最も小売店の売上が多いとされる11/24(金)のブラックフライデーや、これに次ぐ11/27(月)のサイバーマンデーの動向が報道され、株式市場で小売セクターへの注目が高まる時期を迎えます。
そこで今回は、米国の小売セクターについてマクロ環境と個々の企業の動向について検討してみました。
まず、商務省による小売売上高の統計です(図表2)。今年6〜8月に前年比伸び率は3%台まで落ち込みましたが、その後は4%台に持ち直し、1月〜10月の平均では前年比4.3%増と堅調です。15年から16年半ばにかけて2〜3%前後で推移していたところから改善したと言えます。
米国の消費を取り巻くマクロ環境は良好と考えられます。雇用の回復が続いて失業率は10月には完全雇用に近い4.1%まで低下していますし、図表3の通り住宅価格、株価とも前年比で安定した上昇となっています。
FRB(米連邦準備制度理事会)が公表している家計の純資産に関する統計でも、17年4-6月の前年比は9.3%増と(7-9月期分は12/8に発表予定です)、家計の消費に関して「資産効果」(※)が期待できる状況と言えるでしょう。
- ※保有資産額の増加が消費支出を高めること。
また、「ミシガン大学消費者マインド」は、10月には100.7ポイントと2004年来の水準まで上昇して、消費者の心理も明るくなっています。
全米小売業協会が10/3に発表した年末商戦(11月と12月の売上合計、自動車・ガソリン・レストランの売上を除く)の見通しは、6,820億ドル(約77兆円)で、前年比3.6〜4%増との予想です。昨年の同3.6%増、過去5年平均の同3.5%を上回る堅調な伸びと評価できるでしょう。
マクロ環境からは好調な年末商戦が期待できそうです。小売株の中から株価が上昇するものが出てくる可能性に期待できそうです。
図表2:米国の小売売上高は前年比4%前後の伸びで堅調
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:株価、住宅価格の上昇による資産効果が期待される
- 注:住宅価格は、S&Pコアロジック住宅価格指数によります。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
株価パフォーマンスはネット小売の優位が目立つ |
小売のマクロ環境は良好ですが、企業別には好不調があります。
米国の小売市場でシェアを拡大するアマゾンドットコム、この影響を受けて苦境に立つリアル中心の小売という構図は、日本でも繰り返し報道されていますが、株価にもそれは如実に表れています。図表4は、S&P500指数の小売関連サブセクターの株価指数の推移を見たものです。
アマゾンドットコムを含む「インターネット・カタログ販売」が、S&P500指数を安定的に上回るパフォーマンスをあげているのに対して、それ以外の小売サブセクターである「複合小売」「専門小売」「食品・生活必需品小売」は、S&P500指数を下回って推移しており、それも特に17年に入ってからの低迷が目立っています。
さらに、各サブセクターの構成銘柄の動きチェックしたものが図表5です。好調なセクター、不調なセクターとも、構成銘柄が一様に好調、あるいは不調というわけではなく、それぞれ好調な銘柄、不調な銘柄があることがお分かりいただけるでしょう。
まず好調の「インターネット・カタログ販売」ですが、時価総額が5,400億ドル(約60兆円)と大きいアマゾンドットコムの株価上昇がサブセクター全体のパフォーマンスに効いています。ネットフリックスも好調ですが、旅行関連のプライスライン・グループ、エクスペディア、トリップアドバイザーについては、過去3ヵ月ではマイナスで、ネット小売であれば何でも良いというわけではないようです。
不調のサブセクターでも、全銘柄が一様に不調ではなく、好調な銘柄と不調な銘柄に2極化していることが分かります。不調となっているのは、ネット通販の影響が強く出ていると言われる百貨店(メーシーズ、ノードストロームズ、コールズ)、アマゾンが取扱商品を医薬品にも広げる計画として嫌気されたドラッグストア(ウォルグリーンブーツアライアンス、CVSヘルス)、米自動車販売の頭打ちの影響を受けていると見られる自動車部品販売(アドバンストオートパーツ、オライリーオートモーティブ、オートゾーン)などです。
一方、相対的に好調な銘柄群は、取り扱い点数の多さがネット通販に対する耐性をもたらしているとみられるホームセンター(ホームデポ、ロウズ)、立地の面で日本のコンビニに似ているディスカウントストア(ダラーツリー、ダラーゼネラル)などがあります。
図表5にリストアップした銘柄から、株価パフォーマンスが好調な銘柄を中心に業績の動向も勘案して、米年末商戦の恩恵を受ける可能性が高いアマゾンドットコム、アマゾンに対抗できる可能性があるとして市場の注目が集まっているウォルマートストアーズ、アマゾンへの耐性が比較的高いと考えられる、ホームデポ、ダラーツリー、ベストバイを注目銘柄としてご紹介いたします。
図表4:ネット小売の株価上昇が目立つ
- 注:S&P500指数の68セクター分類の業種指数によります。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:小売各社の株価パフォーマンス比較(年初来騰落率順)
サブセクター |
銘柄 |
年初来 |
3ヵ月 |
EPS |
今期予想 |
今期予想EPS |
---|---|---|---|---|---|---|
ネット小売 |
ネットフリックス |
56.1 |
16.0 |
-1.4 |
32.2 |
109.0 |
アマゾン・ドット・コム |
50.7 |
17.9 |
6.9 |
30.2 |
30.9 |
|
プライスライン・グループ |
19.2 |
-3.5 |
-0.5 |
16.8 |
13.5 |
|
エクスペディア |
9.4 |
-13.7 |
-7.7 |
15.3 |
3.2 |
|
トリップアドバイザー |
-34.0 |
-23.4 |
-1.9 |
4.4 |
-20.7 |
|
食品・生活必需品小売 |
ウォルマート・ストアーズ |
41.0 |
22.9 |
1.0 |
2.5 |
2.3 |
コストコホールセール |
11.1 |
8.8 |
0.3 |
6.2 |
10.7 |
|
シスコ |
-0.9 |
7.3 |
0.0 |
4.4 |
11.7 |
|
CVSヘルス |
-10.4 |
-9.0 |
0.3 |
3.6 |
1.0 |
|
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス |
-13.9 |
-11.0 |
1.4 |
9.3 |
8.7 |
|
クローガー |
-32.2 |
2.4 |
-0.2 |
5.6 |
-7.2 |
|
専門小売 |
ギャップ |
31.0 |
29.8 |
1.6 |
1.0 |
3.8 |
ベストバイ |
30.8 |
-6.1 |
-0.9 |
4.6 |
12.8 |
|
ホーム・デポ |
25.1 |
13.7 |
1.1 |
6.3 |
14.8 |
|
ティファニー |
22.5 |
7.7 |
0.1 |
1.9 |
5.8 |
|
ロウズ |
12.8 |
8.9 |
0.0 |
5.2 |
12.9 |
|
ロス・ストアーズ |
10.1 |
22.4 |
1.6 |
8.9 |
16.0 |
|
カーマックス |
7.9 |
8.6 |
-0.4 |
8.3 |
17.0 |
|
TJX |
-5.5 |
0.8 |
-0.1 |
7.5 |
11.3 |
|
トラクター・サプライ |
-14.9 |
17.9 |
0.8 |
6.5 |
0.4 |
|
アルタ・ビューティ |
-15.6 |
-11.9 |
-0.1 |
21.1 |
28.3 |
|
シグネット・ジュエラーズ |
-18.8 |
42.9 |
-0.4 |
-1.5 |
-4.8 |
|
オートゾーン |
-20.3 |
23.4 |
0.2 |
3.5 |
6.6 |
|
オライリー・オートモーティブ |
-20.8 |
11.4 |
0.3 |
4.4 |
10.8 |
|
Lブランズ |
-23.3 |
39.4 |
1.0 |
-0.1 |
-15.8 |
|
フットロッカー |
-42.4 |
18.7 |
1.0 |
-0.4 |
-16.8 |
|
アドバンス・オート・パーツ |
-47.2 |
-4.3 |
1.0 |
-2.3 |
-27.2 |
|
複合小売 |
ダラー・ツリー |
22.6 |
27.4 |
0.3 |
7.1 |
21.8 |
ダラー・ゼネラル |
15.4 |
15.8 |
-0.1 |
6.4 |
2.2 |
|
コールズ |
-11.5 |
17.3 |
0.3 |
-0.2 |
0.3 |
|
ノードストローム |
-14.8 |
-7.8 |
-1.7 |
3.9 |
-3.6 |
|
ターゲット |
-19.5 |
4.5 |
0.3 |
2.3 |
-9.8 |
|
メーシーズ |
-43.2 |
4.4 |
3.4 |
-4.3 |
5.5 |
- 注:S&P500指数に採用されている小売企業33銘柄です。株価騰落率は、11/17(金)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
小売主要企業から注目銘柄をご紹介 |
銘柄名 |
株価(11/20) |
1,126.31ドル |
予想PER(倍) |
70.0 |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
|
銘柄名 |
株価(11/20) |
97.48ドル |
予想PER(倍) |
20.8 |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
|
銘柄名 |
株価(11/20) |
170.45ドル |
予想PER(倍) |
20.3 |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
|
銘柄名 |
株価(11/20) |
97.11ドル |
予想PER(倍) |
18.8 |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
|
銘柄名 |
株価(11/20) |
56.35ドル |
予想PER(倍) |
13.2 |
|
---|---|---|---|---|---|
ポイント |
|
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。