銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛など非鉄金属市況が上昇しています。中国経済の予想以上の堅調、インフラ投資の好調に加え、電気自動車(EV)へのシフトが新たな需要を押し上げるとの見方が浮上して、中長期での注目も高まっています。そこで、今回は非鉄金属市況上昇の恩恵を受ける銘柄を探っています。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価(8/29) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
サザン コッパー(SCCO) | 41.41ドル | 41.77ドル | 24.90ドル |
ルサール(00486) | 5.17香港ドル | 5.76香港ドル | 2.46香港ドル |
ノリリスク ニッケル(GMKN) | 9,473ルーブル | 10,457ルーブル | 7,677ルーブル |
テック リソーシズ B(TECK) | 25.23ドル | 33.76ドル | 14.56ドル |
洛陽モリブデン(03993) | 3.88香港ドル | 4.46香港ドル | 1.58香港ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
非鉄金属相場上昇は、中国需要に加えEVへの期待も!? |
非鉄金属市況の上昇が市場の注目を集めています。
銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛が揃って7月以降の上昇によって年初来の高値を更新しています。
図表2で14年からの推移を見ると、原油価格と同じタイミングで14年の半ばから下落となった後、16年前半に底入れして上昇基調に転じ、17年に入ってからは調整する局面もありましたが、7月以降は主要な非鉄金属が揃って上昇しています。
中国のインフラ投資拡大に絡み非鉄需要が膨らんでいる一方、生産は抑えられて需給関係が改善していることが背景にあると見られています。非鉄金属の世界消費に占める中国の割合は軒並み4割〜5割に達しています。
その中国経済は改善基調が続いているようです。4-6月期の実質GDPは前年比6.9%増と堅調でした。また、主要月次指標でも、固定資産投資は前年比8%台、鉱工業生産は同6%台、小売売上高は同10%台の伸びが維持されています。また、中国経済の総合的なバロメーターと言える、同国の輸出と輸入は16年初を底に回復傾向が続いています(図表3)。
ただ、中国需要だけが上昇要因の場合、中国経済が減速すると市況は下落してしまうでしょうから、投資テーマとしておもしろくありません。しかし、電気自動車(EV)の普及が非鉄に新たな需要をもたらすとの見方が浮上しており、これが本当であれば、中長期でも非鉄金属相場に注目できそうです。
必ずしもEVでなくとも、既に自動車の電装化が進みつつあることから、電気信号を伝えるための銅線需要は確実に増えると考えられます。さらに、EVへのシフトが起こるとモーター、コイル、蓄電池などの重要性が増し、これに使用される金属の需要も増えるでしょう。また、EVの普及に伴い車体の軽量化が一段と求められることで、アルミニウム需要が拡大すると考えられます。
日本株式市場では、三菱マテリアル、住友金属鉱山、三井金属鉱業、東邦亜鉛など非鉄株の上昇が目立っています。海外株式市場では、非鉄金属市況を敏感に反映する大型株が少なく、日本市場ほど目立ってはいません。しかし、金属資源関連銘柄が強い基調となっているのは日本と同じで、今後注目が集まる可能性が高そうです。
図表2:7月からの上昇が目立つ非鉄金属市況
- 注:LME(ロンドン金属取引所)の直近限月の先物価格です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:中国の輸出、輸入は回復トレンド
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
非鉄金属相場上昇の恩恵を受ける銘柄はコレ!? |
非鉄金属市況が中長期的に上昇する可能性を鑑みて、この恩恵を受ける銘柄を探ってみました。
当社取扱の外国銘柄について、(1)非鉄金属の売上構成比が30%以上、(2)株式時価総額が20億ドル以上の銘柄を図表4に抽出しています。
銅、アルミニウムについては、世の中の使用量が多いため、これを主力事業とする規模の大きい上場企業が存在します。一方、ニッケル、亜鉛、鉛などについては、これを主力とする企業は少なく、相対的に売上構成比が高い企業をリストアップしています。
非鉄金属の売上構成比、時価総額、株主資本利益率などの要素を勘案して、銅ではサザンコッパー(SCCO)、アルミニウムではルサール(00486)、ニッケルではノリリスクニッケル(GMKN)、亜鉛ではテックリソーシズ(TECK)、モリブデン・タングステンでは洛陽モリブデン(03993)を注目企業としとて選び(表中赤字でハイライト)、(3)でご紹介いたします。
尚、主要な非鉄金属について、その主用途を確認しておきましょう。
◯銅・・・加工が容易で、導電性に優れるなどさまざまな特長を持ち、世の中のいたる所で使われる汎用性の高い金属です。生産される銅の多くが電線などに加工され、自動車や電化製品等に使われています。1軒の家に100キログラムも使われていると言われます。自動車の電装化が進んでいることから確実に需要が拡大すると考えられ、電気自動車(EV)へのシフトはそのトレンドをさらに加速すると見込まれます。
◯アルミニウム・・・自動車、鉄道車両、航空機などの輸送用機器、缶や箔などの容器包装、アルミサッシなどの建材が3大用途です。EVでは、車両を軽量化する必要性が高まると見られることから、使用比率が上昇すると見込まれています。
◯ニッケル・・・食器から建材まで用途の広いステンレスの材料となります。腐食と酸化に耐性があることと見た目の美しさから、食器やコイン、建築材料にいたるまで広く使われます。EVとの関連では、その主要な動力源になると目されるリチウムイオン電池の正極材料として重要です。
◯亜鉛・・・車や建材の錆を防ぐ代表的なめっき材として使用されます。めっきすることで、対象の金属に防錆性能を付与します。自動車や建築物に使われる鋼板や鋼材の多くは、亜鉛によるめっきが施されており、さまざまな産業を下支えしています。
◯鉛・・・鉛は空気や水にはおかされにくく、柔らかくて曲げやすいので水道管やガス管に利用されます。また、スズ・アンチモン・ビスマスなどと、いろいろな合金をつくるので合金として非常に広い用途があります。また、自動車用バッテリーにも使われています。
図表4:非鉄金属を生産する関連企業
市場 |
銘柄 |
非鉄金属の売上構成比(%) |
非鉄金属以外の主要売上構成比(%) |
時価総額(億ドル) |
予想株主資本利益率(%) |
---|---|---|---|---|---|
香港 |
コウセイコパー(00358) |
銅81 |
81 |
4.5 |
|
米国 |
サザン コッパー(SCCO) |
銅79 |
315 |
18.5 |
|
米国 |
フリーポート マクモラン(FCX) |
銅70 |
221 |
19.0 |
|
米国 |
アルコア(AA) |
アルミニウム94 |
76 |
9.1 |
|
香港 |
中国宏橋(01378) |
アルミニウム91 |
65 |
18.3 |
|
香港 |
ルサール(00486) |
アルミニウム91 |
103 |
31.9 |
|
米国 |
アーコニック(ARNC) |
アルミニウム39 |
エンジニアリング製品・ソリューション46 |
113 |
12.6 |
米国 |
リオ ティント ADR(RIO) |
アルミニウム27 |
鉄鉱石41 |
849 |
17.8 |
インドネシア |
ヴァーレ インドネシア(INCO) |
ニッケル100 |
22 |
0.4 |
|
ロシア |
ノリリスク ニッケル(GMKN) |
ニッケル34、パラジウム25、銅24 |
244 |
61.6 |
|
米国 |
テック リソーシズ B(TECK) |
亜鉛34、銅22 |
石炭45 |
141 |
11.5 |
香港 |
洛陽モリブデン(03993) |
モリブデン・タングステン41、銅・金20 |
150 |
9.1 |
|
香港 |
グレンコア(00805) |
金属・鉱物37 |
エネルギー製品50 |
651 |
10.1 |
- 注:当社取扱の外国株式で、非鉄金属の売上構成比30%以上、時価総額20億ドル以上の銘柄です。株主資本利益率は、Bloomberg集計のコンセンサス予想によります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:注目企業の株価推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目銘柄のご紹介 |
市場:米国(NYSE) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
62.8 |
17% |
12.0 |
55% |
1.59 |
18.12予 |
67.0 |
7% |
13.4 |
12% |
1.84 |
株価(8/28):41.77ドル |
予想PER(17.12期):26.3倍 |
||||
|
市場:香港 |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
93.6 |
17% |
13.30 |
5% |
0.089 |
18.12予 |
96.0 |
3% |
15.67 |
18% |
0.103 |
株価(8/28):5.07香港ドル |
予想PER(17.12期)※:7.3倍 |
||||
※PERはドル建てのEPSを1ドル=7.8237香港ドルで換算して計算しています。 |
市場:ロシア |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
85.2 |
3% |
22.90 |
-15% |
14.3 |
18.12予 |
94.9 |
11% |
27.38 |
20% |
16.7 |
株価(8/28):9,289ルーブル |
予想PER(17.12期)※:11.1倍 |
||||
※PERはドル建てのEPSを1ドル=58.44ルーブルでルーブル建てに換算して計算しています。 |
市場:米国(NYSE) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億カナダドル) |
(前年比) |
純利益(億カナダドル) |
(前年比) |
EPS(カナダドル) |
17.12予 |
118.1 |
27% |
23.88 |
112% |
4.06 |
18.12予 |
108.9 |
-8% |
16.08 |
-33% |
2.84 |
株価(8/28):25.02ドル |
予想PER(18.12期)※:11.0倍 |
||||
※PERはカナダドル建てのEPSを1ドル=1.2508カナダドルでドル建てに換算して計算しています。 |
市場:香港 |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
17.12予 |
223 |
232% |
25.1 |
85% |
0.113 |
18.12予 |
232 |
4% |
29.8 |
19% |
0.152 |
株価(8/28):3.82香港ドル |
予想PER(17.12期)※:29.4倍 |
||||
※PERは人民元建てのEPSを1人民元=1.1828香港ドルで香港ドル建てに換算して計算しています。 |
- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。