テスラモーターズの普及タイプ「モデル3」の生産開始やボルボ・カーの電気自動車への注力表明などで電気自動車の販売急増の可能性が注目されています。そこで今回は、電気自動車の普及で注目が高まるリチウムイオン電池の関連銘柄を探ってみました。リチウムイオン電池生産の世界最大手に加え、重要な原料であるリチウムやコバルトを供給する企業を注目企業としてあげています。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価 (7/25) | 52週高値 | 52週安値 |
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アルベマール(ALB) | 118.80ドル | 119.59ドル | 75.11ドル |
ポタシュ コーポレーション サスカチワン(POT) | 17.99ドル | 20.27ドル | 15.21ドル |
FMC(FMC) | 77.99ドル | 78.12ドル | 44.40ドル |
洛陽モリブデン(03993) | 3.69香港ドル | 3.97香港ドル | 1.58香港ドル |
サムスンSDI (006400) | 178,500ウォン | 191,500ウォン | 88,100ウォン |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
電気自動車の普及で注目のリチウムイオン電池 |
電気自動車の普及によるリチウムイオン電池の需要増への注目が高まっています。
これまで電気自動車と言えば、これに特化する米国のテスラモーターズ(TSLA)が今年7月に量産を始めた普及タイプの「モデル3」に市場の注目が集まっていました。
しかし、7/5(水)にスウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーが2019年以降に発売するすべての車種を電気自動車(EV)やハイブリッド車などの電動車にすると発表、有力自動車メーカーで「脱内燃機関」を表明したのは初で、市場では驚きをもって迎えられました。
既に多くの大手自動車メーカーが電気自動車への取り組みを表明していますが(図表2)、これが一段と加速するのではとの思惑が浮上していると見られます。そして、電気自動車の普及加速は、リチウムイオン電池の需要に大きなインパクトをもたらすと考えられます。
例えば、テスラの電気自動車には、パナソニックのリチウムイオン電池(直径18ミリ、長さ65ミリの円筒形)が数千個搭載されています。私たちが日ごろ使う、スマホ、タブレット、ノートPCなど様々な携帯機器にリチウムイオン電池が組み込まれていますが、1人当たりの使用個数は普通10個は越えないと見られます。
それが電気自動車を購入すると、一気に数千個になるわけですから、世界の自動車メーカーが電気自動車に注力することによるリチウムイオン電池需要に対するインパクトは非常に大きいと言えそうです。
車載用二次電池の調査会社B3では、17年のリチウムイオン電池の需要量は携帯端末用、電気自動車用との合計で100GWhの見通しですが、電気自動車向けのリチウムイオン電池の必要量は2021年に180GWh、2026年には450-500GWh規模になるとしています。
グローバルに米国のZEV規制や欧州のCO2規制等が電気自動車販売の牽引材料になると想定され、規制を満たすには2021年に電動車(xEVs)が900万台、2026年には1600万台が必要との前提です。
リチウムイオン電池のメーカー、素材を供給する化学会社、原材料の供給企業など、株式市場の注目が高まることが期待されます。
図表2:主要自動車メーカーの電気自動車に対する取り組み
自動車メーカー |
16年販売台数(万台) |
電気自動車に対する取り組み・構想 |
---|---|---|
テスラモーターズ(米国) |
7.6 |
電気自動車に特化。17年7月から普及タイプの「モデル3」を量産へ。 |
ボルボ・カー(スウェーデン) |
53 |
19年以降、すべての車種をEVやハイブリッドに。 |
BMW(ドイツ) |
237 |
13年から専用ブランド「iシリーズ」を展開。 |
ゼネラルモーターズ(米国) |
1,001 |
20年までに電気自動車を10車種投入。 |
フォルクスワーゲン(ドイツ) |
1,030 |
22年までに90億ユーロを投資。25年までに30車種以上のEVを投入。 |
ダイムラー(ドイツ) |
314 |
25年までに100億ユーロを投資。EVやPHVなど10車種以上を投入。 |
トヨタ自動車(日本) |
1,015 |
50年をめどにエンジン車をほぼゼロに。 |
ホンダ(日本) |
357 |
30年に3分の2をFCV、PHVを含む電動車に。 |
- ※各種報道、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:急増が続く電気自動車の販売
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
リチウムイオン電池に投資するには? |
リチウムイオン電池への需要増加をテーマに株式投資する場合、どのような銘柄が考えられるか検討してみましょう。
その前に、リチウムイオン電池の仕組みを簡単に確認しておきましょう。図表4に示した通り正極にリチウムの酸化物、負極に黒鉛等が用いられます。セパレータで区切られた電解質の中をリチウムイオンが移動することで電流が発生します。
二次電池には、鉛電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などがありますが、最も高い電圧を得られ、エネルギー密度(電池重量当たりの出力)が高いのがリチウムイオン電池で、パワーが必要な用途に広く用いられます。
リチウムイオン電池生産の世界シェア上位は、韓国のサムスンSDI (006400)、日本のパナソニック(6752)、韓国のLG化学 (051910)などです。自動車用途に限ると、パナソニックがテスラモーターズ向けに供給しているため圧倒的に大きく、5割近いシェアとなっているようです。次いで、中国でバスなどに電池を供給する比亜迪 (Byd)(01211)、韓国のLG化学などが上位を占めています。
これらの銘柄は、有力な関連銘柄として注目できるでしょう。
次に、リチウムイオン電池の素材ですが、重要なのは正極材、負極材、セパレータ、電解液などです。この分野では多くの日本の化学メーカーが活躍しています。ただ、本レポートは外国株式を中心に検討していますので、ここは日本のアナリストの分析を待ちましょう。
代わりに本レポートでは、リチウムイオン電池に重要な原材料で、かつ、希少性が高い、リチウムとコバルトについて検討しています。“リチウム”イオン電池ですから、リチウムは必ず使われます。また、正極材には、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどが使われますが、最もエネルギー密度が高いのがコバルト酸リチウムで、また、希少性も高くなっています。
【リチウム】
原子番号3、元素記号「Li」のアルカリ金属元素の一つです。リチウムは海水中など地球上に広く分布していますが、資源として経済的に回収するには濃縮されている必要があり、このためボリビアのウユニ塩湖やチリのアタカマ塩原などが主な埋蔵地とされます。
リチウムの用途はエネルギー分野が50%を占め、そのほか、ガラス・セラミックに24%、潤滑剤に10%、化学合成に6%などとなっています(16年、Bloomberg推計)。
15年の主な生産国は、オーストラリア、チリで、主な埋蔵国は、チリ、中国、アルゼンチン、オーストラリアなどです(米国地質調査所調べ)。リチウムを生産する上場企業は世界に20社以上あるようですが、米国の特殊化学品メーカーのアルベマール(ALB)、米国の総合化学メーカーのFMC(FMC)、チリの化学大手ソシエダー・ド・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)、中国のTianqi、Ganfengなどが大手です。
尚、SQM株式は当社での取り扱いはありませんが、同社株式の32%を所有するカナダの肥料メーカー、ポタシュコーポレーションサスカチワン(POT)に注目できるでしょう。
【コバルト】
原子番号27、元素記号「Co」の鉄族元素の一つです。合金材料や顔料として用いられますが、最近は電池向けの需要が拡大しています。生産量、埋蔵量ともコンゴ共和国が世界の約半分を占める重要な生産国です。
そのコンゴの銅・コバルトのテンケ・フングルメ(Tenke Fungurume)鉱山の56%の所有権をフリーポートマクモランから取得した中国企業の洛陽モリブデン(03993)が注目できます。同鉱山は、15年に1.6万トンのコバルトを生産しており、コンゴの生産量の4分の1、世界シェア13%を占める計算です。
洛陽モリブデンが取得した16年5月を底に、コバルトの価格は大幅に上昇しており、同社の資産取得タイミングは絶妙だったと言えるでしょう(図表5)。
図表4:リチウムイオン電池のしくみ
- ※各種資料をもとにSBI証券が作成
図表5:正極材料のコバルト価格は昨年後半から急上昇
- 注:コバルト価格はLME(ロンドン金属取引所)のスポット価格(週足)です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目銘柄のご紹介 |
市場:米国(NYSE) |
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決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
29.5 |
10% |
4.89 |
22% |
4.36 |
18.12予 |
31.7 |
8% |
5.59 |
14% |
5.06 |
株価(7/24):118.60ドル |
予想PER(17.12期):27.2倍 |
||||
|
市場:米国(NYSE) |
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決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
39.6 |
-11% |
5.25 |
28% |
0.62 |
18.12予 |
41.2 |
4% |
5.86 |
12% |
0.70 |
株価(7/24):17.93ドル |
予想PER(17.12期):28.9倍 |
||||
|
市場:米国(NYSE) |
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決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
26.5 |
-19% |
3.24 |
-15% |
2.4 |
18.12予 |
36.5 |
38% |
5.42 |
67% |
4.1 |
株価(7/24):76.80ドル |
予想PER(17.12期):32.0倍 |
||||
|
市場:香港(メインボード) |
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決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
17.12予 |
212 |
215% |
23.5 |
73% |
0.11 |
18.12予 |
221 |
4% |
26.7 |
14% |
0.14 |
株価(7/24):3.69香港ドル |
予想PER(17.12期):29.0倍 |
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|
市場:韓国(KOSPI) |
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決算期 |
売上高(億ウォン) |
(前年比) |
純利益(億ウォン) |
(前年比) |
EPS(ウォン) |
17.12予 |
60,454 |
16% |
6,387.7 |
黒字転換 |
9,206.46 |
18.12予 |
69,752 |
15% |
9,784.8 |
53% |
14,155.03 |
株価(7/24):180,000ウォン |
予想PER(17.12期):19.6倍 |
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- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。