LINEがNY市場で終値41.58ドル(始値42.00ドル、高値44.49ドル、安値40.60ドル)、公募価格の32.84ドルに対して27%高でデビューしました。本日より東京市場での取引が始まります。LINEは業種としては、「インターネット・メディア」に分類されます。そこで今回は、同業種にどのような投資対象があり、その中でLINEがどのように位置づけられるのかグローバルな視点から探ってみました。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価 (7/14) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
フェイスブック(FB) | 117.29ドル | 121.08ドル | 72.00ドル |
アルファベット(旧グーグル)(GOOG) | 720.95ドル | 789.86ドル | 546.71ドル |
ヤンデックス(YNDX) | 21.97ドル | 23.20ドル | 9.94ドル |
テンセント(00700) | 183.5HKドル | 183.5HKドル | 124.00HKドル |
NAVER(035420) | 734,000ウォン | 770,000ウォン | 458,000ウォン |
インターネット・メディアの投資機会をグローバルに俯瞰 |
LINEは東証の業種分類(33業種)では「情報・通信」ですが、もう少し細かく分類すると「インターネット・メディア」に属することになります。そこで今回は、同業種の投資機会をグローバルに眺め、その中でLINEがどのような位置づけになるのか考えてみました。
図表2は「インターネット・メディア」セクターの主要企業を「市場ごと」、「事業分野ごと」に代表的な企業を並べたものです(ご参考に関連の高いネット通販も併記しています)。黄色の塗りつぶしは米国上場、緑の塗りつぶしは米国以外の上場を示します。
市場区分が偏っている印象を受けるかもしれませんが、メディアは「情報の媒体」であるため言語が重要です。英語と同じローマ字を使う言語圏は市場の統一が進んでいる一方、英語から遠い言語では独立性の高い市場が形成されやすく、このような形になっていると考えられます。
米州・欧州市場では米国企業が席巻しており、米市場に上場している銘柄でカバーできそうです。欧米以外の重要市場では、中国のインターネット企業はその多くが米国に上場していて、米国を中心とするグローバル投資家にとって投資しやすい市場になっています。また、ロシアも同国インターネットの主力企業であるヤンデックスが米国に上場しています。
これに比べて日本はこれまでインターネット関連で米国上場企業がなく、今回のLINEが初のケースとなります。グローバル投資家は、世界3位の経済規模を誇り、独立性の高いネット市場が成立している国から、「重要な投資機会を提供する企業が上場してくる」と捉えそうです。同社に対する注目度は高いと考えられます。
図表2:インターネット・メディアとネット通販の主要企業
- 注:Bloomberg業種分類の「インターネット・メディア」および「eコマース」企業で時価総額3,000億円以上、関連売上比率30%以上の企業から選んでいます。社名下のカッコ内は7/14の時価総額です。斜線は主要な投資対象がない(サービスを行っている企業はあります)という意味です。SNS=ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
「SNS・メッセンジャー」分野で重要な位置を占めるLINE(NAVER) |
インターネット・メディアの中でも事業拡大が堅調で有望分野と考えられる「SNS・メッセンジャー」(SNS=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、「検索」分野について、グローバル市場の状況をもう少し詳しく見てみましょう。
【SNS・メッセンジャー】
図表3は世界の主要なSNSとメッセンジャーを利用者数の順番に並べたものです。まず、グローバルに展開されているサービスの上位はフェイスブックが押さえていることが目立ちます。
SNSでトップの「フェイスブック」は16億人、メッセンジャーでトップの「ワッツアップ」は10億人の月間アクティブユーザーを擁し、米州・欧州の多くの国で利用率がトップ級です。さらに、写真共有サイトの「インスタグラム」も傘下に置き、フェイスブックがこの分野で盤石なポジションを築いていることが窺えます。
その他のグローバルサービスでは、米ヤフーが買収したTumblrが5億人超のユーザー数があり、フェイスブックに追随できる可能性がありそうです。ただ、米ヤフーは買収価額の大部分を減損処理したことから、ビジネスとしてはうまくいってないようです。また、ツイッターも利用者数の伸び悩みに対して様々な施策を講じているところで、万全とは言えない状況です。
グローバルおよび欧米市場をカバーする銘柄としては、やはりフェイスブックが最も有望と言えそうです。
次に重要な市場である中国市場では、SNSの「QZone」、メッセンジャーの「QQモバイル」、「WeChat」を擁するテンセントが強固なポジションを確保しています。ただ、同社はゲーム収入が多くインターネット・メディアの収入構成比は40%であることから、この分野に注目する投資家にはアピールが弱い可能性もあるでしょう。
その下を見ると、利用率がトップ級の国があるサービスで、かつ、上場企業としては、日本のLINE(親会社のNAVER)と韓国のカカオということになります。
LINEは世界第3位の経済大国である日本のトップサービスであり、ピュアプレイ(この事業に特化している企業)だということ、さらにニューヨーク市場に上場するため香港上場のテンセントに比べてアクセスが良く、SNS・メッセンジャー市場でフェイスブックに次ぐ投資の選択肢になる可能性があると言えそうです。そのため、同社に対する米国市場参加者あるいはグローバル投資家の注目は高いだろうと考えられます。
【インターネット検索】
検索では、世界的にグーグルの一強が定着しています(図表4)。米国では競争が激しく同社のシェアは80%に達していませんが、欧州や中南米の多くの国(日本も含む)で90%以上の市場シェアを占めています。
一方、グーグルのシェアがトップでない主要国は、中国とロシアになります。
中国でグーグルは中国当局の検閲を嫌って2010年に市場から退出した経緯があります。ただ、再参入の意向があるとされ、動向が注目されます。グーグルが存在しない中、中国企業のバイドゥが長年シェアトップの座を維持しています。
ロシアについては、グーグルが2006年に進出してロシア企業ヤンデックスのシェアは一時30%台に低下していました。しかし、最近では50%台後半まで盛り返しています。グーグルと競争して過半のシェアを取ることができている世界で唯一のケースとして注目できるでしょう。
グローバルで2位の「Bing」(マイクロソフト傘下)は、欧州や米国で徐々にシェアを拡大しているものの、まだまだグーグルとの差は大きく当面グーグルの安泰が続きそうです。
グローバル市場ではグーグル(会社としてはアルファベット)、中国市場のバイドゥ、ロシア市場のヤンデックスが投資対象として注目できるでしょう。
では、インターネット・メディアをグローバルに見渡したときの注目銘柄を(3)でご紹介いたします。
図表3:世界の主なSNS・メッセンジャーサービス
SNS(緑の塗りつぶし) |
サービス提供企業 |
月間アクティブユーザー数 |
主な |
利用率が |
|
---|---|---|---|---|---|
フェイスブック |
フェイスブック(FB) |
1,654 |
16年3月 |
グローバル |
米国、米州、欧州 |
ワッツアップ(WhatsApp) |
フェイスブック(FB) |
1,000 |
16年2月 |
グローバル |
欧州・南米の国々 |
FBメッセンジャー |
フェイスブック(FB) |
900 |
16年4月 |
グローバル |
米国 |
QQモバイル |
テンセント(00700) |
853 |
15年末 |
中国 |
中国 |
QZone |
テンセント(00701) |
640 |
15年末 |
中国 |
中国 |
ウィーチャット(WeChat) |
テンセント(00700) |
697 |
15年末 |
中国 |
中国 |
Tumblr |
米国ヤフー(YHOO) |
555 |
15年末 |
グローバル |
? |
インスタグラム(Instagram) |
フェイスブック(FB) |
500 |
16年6月 |
グローバル |
? |
ツイッター |
ツイッター(TWTR) |
310 |
16年3月 |
グローバル |
? |
スカイプ(Skype) |
マイクロソフト(MSFT) |
300 |
16年3月 |
グローバル |
? |
Tieba |
バイドゥ(BIDU) |
300 |
15年末 |
中国 |
? |
ウェイボー(Weibo) |
微博(ウェイボー)(WB) |
222 |
15年末 |
中国 |
? |
LINE |
NAVER(035420) |
215 |
16年3月 |
日本・アジア |
日本 |
Snapchat |
Snapchat(未上場) |
200 |
15年末 |
グローバル |
? |
YY |
歓聚時代(ワイワイ)(YY) |
122 |
15年末 |
中国 |
? |
Pinterest(未上場) |
100 |
15年9月 |
グローバル |
? |
|
VK |
VK(未上場) |
100 |
15年末 |
ロシア |
ロシア |
バイバー(Viber) |
楽天(4755) |
100 |
14年2月 |
グローバル |
? |
ブラックベリーメッセンジャー |
ブラックベリー(BBRY) |
100 |
14年10月 |
グローバル |
? |
テレグラム |
テレグラム(未上場) |
100 |
16年2月 |
ロシア |
ロシア |
カカオトーク |
カカオ(035720) |
49 |
16年3月 |
韓国 |
韓国 |
- ※会社資料、各種報道をもとにSBI証券が作成
図表4:世界主要国のインターネット検索シェア
国 | 検索のシェア(PC) | |
---|---|---|
世界の多くの国々 |
・日本を含む大半の国でグーグルのシェアは90%以上 ・カナダは89.7%(89.2%)、イギリスは88.7%(90.6%)、香港80.3%(70.8%)、台湾80.1%(67.3%) |
|
グーグルのシェアが80%に達しない国 | ||
米国 | 1位 グーグル 78.5%(80.5%) | 2位 Bing 19.7%(17.9%) |
中国 | 1位 バイドゥ 68.8% (59.5%) | 2位 360サーチ 16.5%(16.8%) |
ロシア | 1位 ヤンデックス 45.9%(36.2%) | 2位 グーグル 45.5%(55.8%) |
韓国 | 1位 グーグル 55.6%(49.1%) | 2位 NAVER 36.1%(43.7%) |
- 注:シェアは2015年11月時点で、カッコ内は14年6月時点です。
- ※アウンコンサルティングの資料をもとにSBI証券が作成
注目銘柄のご紹介 |
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
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決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.12予 |
216 |
46% |
105 |
185% |
3.60 |
17.12予 |
349 |
34% |
140 |
33% |
4.66 |
株価(7/12): 117.93ドル |
予想PER(16.12期): 32.8倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
16.12予 |
718.4 |
18% |
232.42 |
45% |
32.97 |
17.12予 |
832.1 |
16% |
276.61 |
19% |
38.83 |
株価(7/12): 720.64ドル |
予想PER(16.12期): 21.9倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ルーブル) |
(前年比) |
純利益(億ルーブル) |
(前年比) |
EPS(ルーブル) |
16.12予 |
713 |
19% |
128 |
32% |
29.64 |
17.12予 |
869 |
22% |
183 |
43% |
44.03 |
株価(7/12): 22.77ドル |
予想PER(16.12期): 49.1倍 |
||||
|
市場:香港(メインボード) |
|||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億人民元) |
(前年比) |
純利益(億人民元) |
(前年比) |
EPS(人民元) |
16.12予 |
1.406 |
37% |
422 |
51% |
4.47 |
17.12予 |
1.792 |
27% |
541 |
28% |
5.75 |
株価(7/12): 180.90HKドル |
予想PER(16.12期): 34.9倍 |
||||
|
市場:韓国(KOSPI) |
|||||
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決算期 |
売上高(10億ウォン) |
(前年比) |
純利益(10億ウォン) |
(前年比) |
EPS(ウォン) |
16.12予 |
3,945 |
21% |
751 |
45% |
23,288 |
17.12予 |
4,523 |
15% |
982 |
31% |
30,672 |
株価(7/12): 755,000ウォン |
予想PER(16.12期): 32.4倍 |
||||
|
- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。