7/15に東京、7/14にニューヨークでのダブル上場が決定したLINEが注目を集めています。LINEは無料でチャットと通話ができることが受けて、スマートフォンの普及とともに瞬く間に広がり社会のインフラになった感もあります。海外でもLINEと同じようなアプリが普及しています。今回は世界で人気のメッセンジャーアプリをご紹介いたします。LINEを考える上でもご参考にしていただけるでしょう。
<ポイント!>
グローバルではフェイスブックのアプリが圧倒的な存在 |
日本、中国、韓国では独自アプリが席巻 |
サービスの収益化はまちまち |
図表1は、LINEと同様のメッセンジャーアプリの月間アクティブユーザー数による世界ランキングです。
世界で最も利用者数が多いメッセンジャーアプリは10億人が利用するワッツアップ(WhatsApp)です。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、サービス発祥の米国で人気が高いほか、欧州や南米の多くの国で最も人気のあるアプリです。
同アプリは14年10月にフェイスブックが190億ドル(約2兆円)で買収しました。フェイスブックはランキング2位のフェイスブック メッセンジャー(同社のSNSと連動したアプリです)と合わせて、グローバルにこの分野で圧倒的な地位を占めていると言えます。
同社の主力事業はSNSの「フェイスブック」ですが、メッセンジャーはコミュニケーションの手段という意味で近い分野にあたるため、SNSの市場ポジションを盤石とする目的で巨額の資金を投入して傘下に収めたと考えられます。
その他でグローバルにユーザーが分布しているのは、現在はマイクロソフト傘下にある「スカイプ(Skype)」、楽天が14年3月に買収した「バイバー(Viber)」、ブラックベリー社の「BBM(ブラックベリーメッセンジャー)」などがあり、利用者数は1億人を超えています。
一方アジアでは、日本の「LINE」、中国の「QQモバイル」「ウィーチャット」、韓国の「カカオトーク」と国際的な展開はさほどでもなくとも、特定の国で市場シェアの高いサービスがあります。
メッセンジャーアプリの価値を見るには、ユーザー数が重要なのはもちろんですが、同時に利用率がトップ級の国があるかどうかも重要でしょう。周りの人が多く使うほどサービスの価値が高まる「ネットワーク効果」が顕著なサービスであり、周りの人が使っているから止められないという状況(サービスの「Stickiness(粘着性)」)があるかがポイントです。
その観点からは、ワッツアップと並んで、QQモバイル、ウィーチャット、LINE、カカオトークなども盤石な基盤をもつメッセンジャーアプリとして高く評価できるでしょう。
一方、グローバルの利用者が多くても、まとまって使っている国がない場合には、なんらかの拍子に類似サービスに流れる可能性があるため、評価は低くなりやすいと考えられます。
メッセンジャーアプリの収益化については、会社によってまちまちです。
「LINE」のNAVER、「QQモバイル」のテンセント、「カカオトーク」のカカオなどアジアの会社は、メッセンジャーサービスの周辺で、広告、デジタル・コンテンツ(スタンプの販売など)、ゲーム、関連アプリなどによって収益に結び付けることに積極的で、また、実際に成果もあがっています。
一方、ワッツアップ、フェイスブックメッセンジャー、スカイプ、バイバーなどでは直接収益に結び付ける動きは比較的少ないようです。インターネットやメッセンジャーアプリに対する考え方の違いが影響しているのかもしれません。ただ、これらのサービスでも今後は収益化を進めてくる可能性もあるでしょう。
図表1:世界で人気の高いメッセンジャーアプリのランキング
メッセンジャーアプリ | サービス提供企業 | 月間アクティブユーザー数 (百万人) |
主な 展開地域 |
利用率が トップ級の国 |
|
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ワッツアップ(WhatsApp) | フェイスブック(FB) | 1,000 | 16年2月 | グローバル | 欧州・南米 の国々 |
フェイスブック メッセンジャー |
フェイスブック(FB) | 900 | 16年4月 | グローバル | 米国 |
QQモバイル | テンセント(00700) | 853 | 15年末 | 中国 | 中国 |
ウィーチャット(WeChat) | テンセント(00700) | 697 | 15年末 | 中国 | 中国 |
スカイプ(Skype) | マイクロソフト(MSFT) | 300 | 16年3月 | グローバル | ? |
LINE | NAVER(035420) | 215 | 16年3月 | 日本・アジア | 日本 |
バイバー(Viber) | 楽天(4755) | 100 | 14年2月 | グローバル | ? |
ブラックベリー メッセンジャー |
ブラックベリー(BBRY) | 100 | 14年10月 | グローバル | ? |
テレグラム | テレグラム(未上場) | 100 | 16年2月 | ロシア | ロシア |
カカオトーク | カカオ(035720) | 49 | 16年3月 | 韓国 | 韓国 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
では、図表1の銘柄からメッセンジャーアプリが事業の中心にある、または、主力事業と深い関係があると考えられる5銘柄について、以下でご紹介いたします。
フェイスブック(FB)、テンセント(00700)、NAVER(035420)は足元の業績も好調な優良銘柄で、投資先として有望でしょう。
一方、カカオ(035720)、ブラックベリー(BBRY)は業績反転の期待はありますがリスクが高く、一般向きの投資対象ではないかもしれません。
図表2:選択した5銘柄の時価総額
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
銘柄名 | 市場 | 米国(NASDAQ) | |||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
16.12予 | 260 | 45% | 104 | 183% | 3.58 |
17.12予 | 347 | 33% | 138 | 32% | 4.61 |
株価(6/21): 114.38ドル | 予想PER(16.12期): 31.9倍 | ||||
|
銘柄名 | 市場 | 香港(メインボード) | |||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(億人民元) | (前年比) | 純利益(億人民元) | (前年比) | EPS(人民元) |
16.12予 | 1,400 | 36% | 423 | 51% | 4.47 |
17.12予 | 1,778 | 27% | 541 | 28% | 5.73 |
株価(6/21): 172.90HKドル | 予想PER(16.12期): 32.9倍 | ||||
※注:予想PERは人民元建てのEPSを1.177(香港ドル/人民元)で香港ドルに換算して計算しています。 |
銘柄名 | 市場 | 韓国(KOSPI) | |||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(10億ウォン) | (前年比) | 純利益(10億ウォン) | (前年比) | EPS(ウォン) |
16.12予 | 3,945 | 21% | 751 | 45% | 23,288 |
17.12予 | 4,523 | 15% | 982 | 31% | 30,672 |
株価(6/21): 697,000ウォン | 予想PER(16.12期): 29.9倍 | ||||
|
銘柄名 | 市場 | 韓国(KOSDAQ) | |||
---|---|---|---|---|---|
決算期 | 売上高(10億ウォン) | (前年比) | 純利益(10億ウォン) | (前年比) | EPS(ウォン) |
16.12予 | 1,411 | 51% | 135 | 78% | 1,979 |
17.12予 | 1,779 | 26% | 223 | 66% | 3,192 |
株価(6/21): 93,800ウォン | 予想PER(16.12期): 47.4倍 | ||||
|
銘柄名 | 市場 | 米国(NASDAQ) | |||
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決算期 | 売上高(億ドル) | (前年比) | 純利益(億ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
16.12予 | 18.1 | -16% | -1.68 | 赤字転換 | -0.31 |
17.12予 | 16.9 | -7% | -1.79 | 赤字拡大 | -0.32 |
株価(6/21): 7.05ドル | 予想PER(17.2期): -倍 | ||||
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- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。