アメリカの株式市場で、「ミニマム・ボラティリティ」と呼ばれるETF(上場投資信託)が大ヒットしています。価格変動が小さくなるように組んだポートフォリオのETFで、株式市場のボラティリティ(価格変動性)上昇を受けて人気になっているようです。日本ではまだ届出されていないため同ETF自体に投資はできませんが、物色のトレンドを見る上でどのような銘柄が組み入れられているかを覗いてみるのは参考になりそうです。
今回は同ETFの組入比率が高い金融、ヘルスケア、情報技術、生活必需品、公益事業の5業種から、投資指標や株価の動向を総合的に考慮して各1銘柄を選んで、注目の5銘柄としてご紹介いたします。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(4/12) | 52週高値 | 52週安値 |
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パブリック ストレージ REIT(PSA) | 276.16ドル | 277.06ドル | 182.08ドル |
ジョンソン エンド ジョンソン(JNJ) | 109.60ドル | 109.84ドル | 81.79ドル |
オートマチック データ プロセシング(ADP) | 90.11ドル | 90.99ドル | 64.29ドル |
プロクター アンド ギャンブル(PG) | 82.83ドル | 84.20ドル | 65.02ドル |
サザン(SO) | 50.77ドル | 51.79ドル | 41.40ドル |
- ※当社WEBサイトをもとにSBI証券が作成
アメリカでは「ミニマム・ボラティリティ」のETFが大ヒット |
米国のETF市場で「iシェアーズ゙MSCI米国ミニマム・ボラティリティETF」が大ヒットしています。
ミニマム・ボラティリティとは「株価変動性が小さい」ことを指し、このような性質を目指してポートフォリオを組んだ上場投資信託(ETF:Exchange Traded Fund)です。
同ETFは1,200を超える米国上場の株式ETFを対象とした、年初来資金流入額のランキングでトップになっています(図表2)。また、ランキング7位にも同シリーズの一つで、米国およびカナダを除く先進国株に投資するETFが入っています。「ミニマム・ボラティリティ」は、米国で人気の投資「スタイル」になっているようです。
「ミニマム・ボラティリティ」シリーズのETFを紹介した米国ブラックロック社の資料によると、「株式市場のボラティリティが過去40年間を見渡して大きく上昇している一方、伝統的なセーフヘブンのキャッシュや債券は利回りが低下したことで選択肢としての魅力が低下している。そのような環境で、価格変動性を抑えた同シリーズは株式市場へ投資し続けることを可能にする商品として検討する価値があるのではないか」としています。
「iシェアーズ゙MSCI米国ミニマム・ボラティリティETF」について、過去の資金流入の推移を見たのが図表3です。米国株の変動性が高まった昨年夏から資金流入が定着し、16年初の株価急落を受けて流入が再度加速、株価が反発に転じた3月にも流入は続いています。
また、パフォーマンスも良好です。図表4の「相対株価」を見ると、12年から14年にかけての上昇局面では、同ETFはS&P500指数と同等か劣後していましたが、株価の変動性が大きくなった14年秋頃からはS&P500指数を上回る傾向が出ています。既に昨年来高値を更新しています。
同ETFは日本では届出されていないため、残念ながらこのETF自体に投資することはできません。ただし、ポートフォリオの変動性を抑えるために、どのような銘柄が組み入れられているか、昨年来高値を更新する原動力となった銘柄にはどのようなものがあるか、銘柄選択の参考とするのは有益ではないでしょうか。
尚、日本株では、ブラックロック社による「iシェアーズ MSCI日本株最小分散ETF」(1477)が東証に上場されています。同じ考え方で組成された日本株のポートフォリオであり、注目できるでしょう。
図表2:年初来「ミニマム・ボラティリティ」への資金流入が最大
- 注:米国に上場している株式ETFが対象で、年初来、4/7までのデータです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:「ミニマム・ボラティリティ」への資金流入が定着、加速
- 注:iシェアーズ゙MSCI米国ミニマム・ボラティリティETFの月次資金フローです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:14年秋より、S&P500指数をアウトパフォームする傾向
- 注:「相対株価」は「ミニマム・ボラティリティETF」÷「S&P500指数」で算出したもので、「相対株価」の上昇は前者が後者のパフォーマンスを上回って推移したことを示します。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ミニマム・ボラティリティにはどんな銘柄が組み入れられているのか? |
では、「iシェアーズ゙MSCI米国ミニマム・ボラティリティETF」にどのような銘柄が組み入れられているか覗いてみましょう。
まず、ポートフォリオ全体を見渡すと、以下のような特徴があります(4/7時点)。
(1)組入銘柄数は169と、幅広い銘柄に分散投資している
(2)業種も幅広く分散している(図表5)
・ヘルスケア、生活必需品、公益事業など景気感応度が低い業種をオーバーウェイトする一方、情報技術、一般消費財・サービス、資本財・サービスなど景気感応度が高い業種をアンダーウェイトしている。
・オーバーウェイトの金融は景気敏感に分類されるが、組み入れが多いのは「不動産投資信託」である。
(3)株価バリュエーションは、組入銘柄の平均で見ると市場平均に比べて高めである(図表5)。
(4)ベータが低い銘柄が多く組み入れられている。
次に、組入上位20銘柄について、業種ごとに並べたのが図表6です。昨年来高値を更新している銘柄が多く、株式市場の物色の流れに乗っている銘柄が多く含まれています。
短期的には利食いが出やすくなっているものもあると思われますが、世界経済の減速傾向、世界的な長期金利の低迷、グローバル化による市場ボラティリティの増大など、これらの銘柄が物色されている背景は継続する可能性が高そうです。中期的にも注目できる銘柄群と見られます。
今回は組入比率が高い5業種から、投資指標や株価の動向を総合的に考慮して各1銘柄を選んで、注目の5銘柄(赤字でハイライト)としてご紹介いたします。
図表5:ディフェンシブな業種をオーバーウェイト、投資指標は高め
- 注:S&P500指数とiシェアーズMSCI米国ミニマム・ボラティリティETFの、4/7時点の業種ウェイトです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表6:「ミニマム・ボラティリティ」の組入上位20銘柄
- 注:iシェアーズ゙MSCI米国ミニマム・ボラティリティETFの4/7時点の組み入れ上位20銘柄です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
物色の流れに乗る注目銘柄はコレ!? |
銘柄名 | 株価 (4/12) |
276.16ドル | 予想PER (倍) |
40.3 | |
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ポイント |
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株価チャート(週足2年) |
銘柄名 | 株価 (4/12) |
109.60ドル | 予想PER (倍) |
16.8 | |
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ポイント |
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株価チャート(週足2年) |
銘柄名 | 株価 (4/12) |
90.99ドル | 予想PER (倍) |
28.0 | |
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ポイント |
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株価チャート(週足2年) |
銘柄名 | 株価 (4/12) |
84.20ドル | 予想PER (倍) |
23.1 | |
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ポイント |
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株価チャート(週足2年) |
銘柄名 | 株価 (4/12) |
50.77ドル | 予想PER (倍) |
17.9 | |
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ポイント |
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株価チャート(週足2年) |
- ※株価チャートは当社WEBサイトを通じてにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。