ロシアは原油価格変動の影響を特に受けやすい国として知られています。そうした中、ロシア株式は原油価格の底入れを受けて反発機運が高まっているようです。原油価格に連動して大幅下落となってきた通貨ルーブルの反発が期待できる上、6倍台と非常に低い予想PERにも水準訂正が期待できるでしょう。GDPはマイナス成長が続くものの最悪期は脱したと見られ、原油価格の反発を受けて見通しの上方修正も期待できそうです。
ロシア企業への投資を考えるにあたり、同国で時価総額上位の代表的企業を下記(図表1)にてご紹介しています。なじみの薄い市場だという向きには、市場全体を買うETFでの投資もあります。ロシア株式への投資、これを機会に検討してみてはいかがでしょうか。
図表1:言及銘柄のリスト
注:個別銘柄は3/7です(ロシア市場休場のため)。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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原油底入れで反発するロシア株式
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原油価格の底入れを受けてロシア株式の反発機運が高まっているようです。ロシア経済は、輸出額の7割を燃料・エネルギー製品が占め、GDPの約1割を鉱業セクターが占めるため、世界の主要国の中で原油価格の影響が最も大きい経済の一つと言えます。
ロシアの代表的な株価指数には、ルーブル建のMICEX指数とドル建のRTS指数がありますが(図表2)、日本からの投資では為替の動きも反映されたRTS指数が投資実感に近いものと言えるでしょう。
ロシアルーブルが対ドルで下落したため、14年半ば以降、2つの指数には大きな乖離ができています。図表3の通り、ルーブルの対ドルレートは原油価格の動向に連動してきたことがわかります。原油価格が安定する可能性が高まる中でルーブルの戻しも見込まれることから、RTS指数には反発が期待されるでしょう。
株価指数ベースの予想PERはMICEX指数が6.6倍、RTS指数が6.8倍と非常に低くなっています。原油価格が急落したほかにも、ウクライナ問題以降、経済制裁を受けているという政治的なリスクが反映されてのことと考えられます。
しかし、少なくともロシア側には欧米諸国との関係を改善したいとの意思が見られ、これ以上悪化する可能性は低いと見られます。予想PERの水準訂正が進む可能性が高いと考えられます。
尚、MICEX指数採用企業の業績は、16年12月期に売上25%増、営業利益7%増、EPS46%増が見込まれています。
図表2:大きく乖離しているルーブル建とドル建のロシア株指数
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:原油価格に連動するルーブル(週足)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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最悪期脱出のロシア経済
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ロシアのファンダメンタルズについて、確認してみましょう。
まず、図表4の実質GDPの成長率は、経済的結びつきの深い欧州経済の低迷を受けて13年に大幅低下、14年もウクライナ問題による経済制裁の影響も受けて低迷が続き、15年からは原油価格下落の影響を受けて大幅なマイナス成長となっています。
一方、今後は15年4-6月の4.6%減を底に前年比のマイナス幅が縮小して、16年の10-12月には前年比トントンまで回復する見通しとなっています。
月次指標で産業景気の動向を見ると(図表5)、鉱工業生産も前年比のマイナスは徐々に縮小しつつあり、ビジネスコンフィデンスも16年1月、2月は急速に改善しています。
図表6の小売売上高では、15年の1月から4月にかけて急速に悪化したため、前年のハードルの低さから今後はマイナス幅の縮小が見込まれるでしょう。実質賃金も同様の動きとなっています。
以上見たとおり、ロシア経済は最悪期を脱しつつあると見られます。ここに原油価格の底入れ、反発が加わるとGDP見通しの上方修正も期待できそうです。
図表4:GDPの前年比マイナスは縮小見通し
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:産業景気は最悪期を脱した?
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表6:消費の落ち込みは縮小へ!?
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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ロシア株式への投資を考える
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ロシアの株式というと、普通はなかなかなじみがないため、まず、株式市場全体を買えるETF(上場投資信託)での投資が考えられるでしょう。
当社では冒頭の図表1にリストアップしたロシアの株式市場への連動を目指すETF(上場投資信託)を取り扱っています。連動を目指す対象指数はいずれもルーブル建ですが、ETFはドル建のため通貨ルーブルの反発も併せて狙うことができます。
個別銘柄でという向きには、時価総額上位企業から代表的なものをご紹介いたします。図表7は、ロシアの上場企業(当社取扱い)で、時価総額5,000億円以上の企業を、石油・ガス、鉄・非鉄、銀行・その他事業会社に分けてリストアップしたものです。
この中から世界トップシェアやロシア最大などグローバル投資家が投資対象としそうな銘柄を選んでご紹介いたします。
世界最大のガス供給企業のガスプロム(GAZP)、ニッケルの世界トップ企業であるノリリスク ニッケル(GMKN)、ロシア最大の小売チェーンで意欲的な店舗展開を行っているマグニト(MGNT)、ロシアおよびCIS(独立国家共同体)諸国で事業展開する携帯電話大手のモバイル テレシステムズ(MTSS)、ロシア最大の商業銀行であるズベルバンク(SBER)です。
図表7:ロシアの主要企業
- 注:円ベースの時価総額は、3/7の1ルーブル=1.5833円で換算しています。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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- 天然ガスの生産・供給で世界最大の企業です。93年に旧ソビエト連邦ガス工業省が転換してできた会社で、ロシア政府が株式の50%を保有しています。世界の天然ガス埋蔵の17%、生産の12%を占め、17万キロのパイプラインを保有(ロシア国内)、ロシアの電力の15%、ロシアの熱供給の24%、欧州のガス消費の30%を供給しています。
- 14年の売上構成は、ガス販売が53%、石油製品の精製が29%、発電・熱供給が8%、原油およびガス生産が4%、ガスの輸送が3%などです。地域別には、欧州諸国が52%、ロシアが46%などとなっています。
- 15年1-9月期業績は前年同期比5%の増収・営業増益でした。予想PERは2.9倍と非常に安くなっています。
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- ニッケルとパラジウムで世界シェアトップ、銅、プラチナ、コバルト等の生産も手掛ける非鉄金属生産企業です。ニッケルの世界シェアは13%、パラジウムは44%です。売上構成比(14年)は、ニッケル43%、銅23%、パラジウム21%、プラチナ8%、その他5%です。
- 金属鉱業セクターの時価総額では、BHPビリトン、リオ・ティント、グレンコアに次ぐ世界的大手で、ロシア市場のほか、ニューヨーク市場、ロンドン市場にも上場しています。
- 15年1-6月期はニッケル相場の下落を受けて14%減収ですが、米ドル高と出荷数量増を受けて利益率が拡大したため、EBITDA(利払い、税引き、償却前利益)は8%増でした(同社の決算は米ドル建です)。主力のニッケルはステンレス鋼が主用途で、中国の需要動向が重要です。15年12月期の決算発表は3/15の予定です。
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- 94年創業のロシア最大の小売チェーンです。15年末時点で12,089店(コンビニ9,594、ハイパーマーケット219、ファミリー・ストア155、ドラッグストア2,121)を展開、店舗数は過去5年で3倍に拡大しています。
- 15年12月期決算速報(監査前)は、売上が25%増、EBITDA(利払い、税引き、償却前利益)が21%増、既存店売上は6.2%増と好調でした。15年10-12月期は既存店売上が前年比トントンまで減速していますが、売上は店舗拡大が牽引して18%増、EBITDAは14%増を確保しています。
- 16年はコンビニ900-950店、ハイパーマーケットとファミリー・ストア80店、ドラッグストア1,200店と引き続き積極的な出店が予定されています。
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- ロシアの通信大手で、携帯電話サービスを中心に提供しています。人口1億4,300万人のロシアで7,600万件、ウクライナ、アルメニア、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベラルーシで3,000万件の携帯電話契約を保有しています(15年9月末)。持株会社のシステマ(公開企業)が株式の51%を保有しています。ニューヨーク市場にも上場しています。
- 15年1-9月期はロシアでの加入者増加が牽引して売上は5%増でした。一方、調整後営業利益は、ローミングや国際通話増加や店舗網の拡大による費用増加で2%減でした。
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- ロシアおよび中東欧で最大の商業銀行です。1841年に設立されロシア国内に約16,500ヵ所の支店・営業所を保有します。個人預金では45%、個人向け貸出で38%、企業向け貸出で32%の市場シェアを有します。中東欧中心に22ヵ国に展開して、収益に占める海外比率は14%まで増加しています。
- 15年12月期の決算速報によると、金利収入が3%、非金利収入が28%増えて収入は12%増でしたが、信用コストが25%増えたため、純利益は8%減でした。信用コストの増加は、ルーブル下落の影響が出ている外貨建の借入れがある企業に対する引当金の増加によります。15年12月期の決算発表は3/15の予定です。
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※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。