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大型ハイテク株神話への警鐘
大型ハイテク株神話への警鐘
2024/12/13
いま世界の投資家は「米国株に投資しておけば安全で、とりわけ大型ハイテク株はポートフォリオから外すわけにはいかない」という、大型ハイテク株神話を信じています。
私はエヌビディア、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、テスラ、メタなどの経営がおかしくなってしまい没落するというシナリオは全く考えていません。これらの優良な企業は今後も末永く存在すると思っています。
しかしこれらの企業が安泰だということと、だから株価は永遠に上がり続けるということは同義ではありません。会社はしっかり存続しても、株価のパフォーマンスは冴えないというケースが今後出てくると思います。
その理由は「べらぼうなバリュエーションにつけるクスリは無い」からです。
みなさんは;
エイボン・プロダクツ
バクスター・インターナショナル
ブラック&デッカー
イーストマン・コダック
ジレット
ルブリゾル
ポラロイド
レブロン
シアーズ・ローバック
ゼロックス
などの会社名を知っていると思います。これらはいずれもニフティフィフティ(Nifty Fifty)銘柄です。今で言えば「GAFAM」のような、株式投資家の間で好んで使われた呼称です。
これらの企業の中にはイーストマン・コダックやポラロイドのように消滅してしまったところもあるけれど、現在も生き残っている企業も沢山あります。
しかしこれらの企業がかつてのような栄光を今日も維持しているか? と言えば、それはそうではありません。
「成長が続いている限り、株価がどんなに上がろうともその株は買いだ!」というのがニフティフィフティの投資哲学でした。
そして投資家は「これらの企業は素晴らしい経営がなされているので成長性は永続する!」と信じて疑いませんでした。「一度買ったら…絶対に売るな!」が合言葉になりました。
ニフティフィフティ企業は業界のリーダー企業であり、経営者は尊敬されていました。国際的にも名前が通っていました。しかし一部の企業は株価収益率で30倍から40倍という高いバリュエーションで取引されていました。
ひるがえって現在、冒頭で言及した7社が米国の株式市場全体の27%を占めています。そしてPERは;
エヌビディア 52倍
アップル 37倍
マイクロソフト 37倍
アルファベット 26倍
アマゾン 48倍
テスラ 167倍
メタ 29倍
です。
ニフティフィフティの場合、(これらの銘柄の成長率は思ったほど高くないぞ!)という認識が投資家に広まるにつれ-30%から-50%も下落する銘柄が続出しました。
教訓としては;
高成長の永続性を過信してはならない
いま業績が安定しているからといってそれが未来も安全な投資とは限らない
どんな成長企業も大企業となり成熟すれば普通の会社になる
どんなに素晴らしい銘柄でもべらぼうなバリュエーションで買ってしまったら適切な投資とはいえない
ということだと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。
