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ネット通販、在宅勤務関連株のような、去年新型コロナで人気化した銘柄にもう一度注目すべき時が来た
ネット通販、在宅勤務関連株のような、去年新型コロナで人気化した銘柄にもう一度注目すべき時が来た
2021/6/28
相場は「次」を織り込みに行く
去年の2月後半に新型コロナ禍の深刻さに世界の人々が気付いた時、株式市場では「外出しなくても家に居て買い物や仕事を済ますことが出来る銘柄」が人気化しました。ネット通販のアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)、社員がネット上でコラボできるTeamsを提供しているマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)、ビデオ会議のズームビデオ・コミュニケーションズ(ティッカーシンボル:ZM)などがそれです。
しかし「そろそろ良いワクチンが完成しそうだ」ということが噂になりはじめた去年の9月以降は、このグループのパフォーマンスは劣後しはじめ、その間に市況株やリア充に関連する銘柄のほうが逆に人気を博したのです。
このように株式というものは常に「次」を求めて物色の矛先を変えてゆきます。
人々が街に繰り出した今こそ休養十分の在宅関連に注目
ワクチン打ってコロナのリスクが大きく後退したので、いま米国の人々は堰を切ったように街に繰り出しています。景気は「かーっ」と燃え上がるほど良いです。先日、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催された際、18名の連邦準備制度(FRB)メンバーへのアンケート調査、いわゆる経済予想サマリー(SEP)が公表されたのですが、それによるとコンセンサス予想は下のチャートのようになっています。
今年のGDP予想(グレー、2021年末)は7%となっています。これは極めて強い数字です。
余りにも景気が良すぎて「車載半導体が不足している!」というようなことも聞かれます。それが原因で新車の生産が追い付かず、結果として中古車の値段が高騰するという珍事すら起きているわけです。
しかしこのようなボトルネックは、いきなり来た経済の再開が原因なのであって、これは喩えて言えば去年新型コロナで皆が外出できなくなったとき、トイレットペーパーがスーパーの棚から消えたのと同じような一時的なパニックに過ぎません。数カ月先を考えればまた需給はバランスすると考えるのが自然です。だから目先のニュースに振り回されるのではなく、「次」に思いを馳せることが重要です。
その意味では、上のチャートからもわかるとおり、2022年は3.3%、2023年は2.4%という風に米国のGDP成長率はまた昔のように低成長へ戻ってゆくわけですから「トイレットペーパー騒動は永久に続く!」というような発想をしていてはダメなのです。
■長期ではデジタル・在宅トレンドは不可逆
それでは今から考える「次」とは何か? という話をすれば、それは「長期ではデジタル・在宅のトレンドはもう元に戻ることは無い」ということです。なんだかんだと言ってもやっぱり自宅からネットで買い物できるというのは便利ですし、ズームがあれば出張なんてやる意味無いです。つまり新型コロナをきっかけとして導入された新しい仕事の仕方やライフスタイルの一部は、今後も定着するのです。
米国では過半数の国民のワクチンの接種が終り、いま企業は「もうリスクは後退したので出社してきなさい!」と社員に促しています。ところがハードな仕事で有名な投資銀行や弁護士事務所のような一流の会社の職場でも入館カードのデータなどから測られる出社率は25~35%あたりをウロウロしているのだそうです。「家でも仕事できるじゃん」ということに味をしめた社員は、なかなか会社に出てこないのです。
もちろん出社率は今後上昇してゆくと思います。しかし、その場合でも「リモートでもいいよ」というフレキシブルな働き方は、もう二度と否定されることは無いと思います。その理由は、仕事がデキる社員ほど、リモートを要求するからです。もしリモートを許可しなければ、その社員はサッサと転職するでしょう。
参考銘柄
今日は相場というものは「次」を織り込みに行くという話をしました。今後米国の景気が今の不自然に高過ぎる成長から昔の成長率へと下がってゆくのであれば、低成長でもそれなりの成長をだせるネット企業に再び人気が舞い戻ってくることは十分想定できます。
一例としてアマゾンは去年の9月の高値を未だ奪還できていません。まるまる9か月も株価は横這いのままです。その間、同社の業績は凄く伸びているわけですから、これは休養十分と言えます。
同様のことはアップル(ティッカーシンボル:AAPL)にも言えます。アップルの株価も、去年9月のレーバーデーの頃の水準を奪還できていません。出遅れ感が強いです。
マイクロソフトは横這いつつもじわじわ株価水準を切り上げており、いま過去最高値とツラ合わせするところまで来ています。この銘柄にも妙味があります。
過去最高値圏ということではショッピファイ(ティッカーシンボル:SHOP)も業績の伸長に比べて株価の伸び悩みが著しかった銘柄であり、エネルギーが蓄積されている感じがします。
もちろんズームビデオ・コミュニケーションズもIPOして以来、未だ一度も決算をしくじっていない優等生であり、過小評価されています。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。