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投資初心者ほどマーケット・タイミングを気にし、分散投資に無頓着

投資初心者ほどマーケット・タイミングを気にし、分散投資に無頓着

2021/4/12

1投資初心者ほどマーケット・タイミングを気にし、分散投資に無頓着

今日は耳の痛い話をします。それは投資初心者ほど「いま買いですか?」というマーケット・タイミングを気にし、分散投資ができていないということです。

私は投資銀行に勤めていたのですが機関投資家に訪問した際、マーケット・タイミングを気にする人は皆無でした。これはひとつには機関投資家は自分の存在意義をアピールするため、常に投資してなければいけないという職業上の理由もあると思います。しかしそれ以上に彼らが「いまは買い場か?」を心配しない大きな理由として銘柄選択やマーケット・タイミングではなく、アセット・アロケーションがポートフォリオのパフォーマンスの大きな決定要因だということを知っているからです。

1アセット・アロケーション

アセット・アロケーションとは資産配分を指します。大きく分けて現金、債券、株式の比率などを論じることがアセット・アロケーションだと思ってください。

また株式の中でも「グロース株か? バリュー株か?」、「シクリカル株か? ディフェンシブ株か?」という細かい分類があります。さらに日本株、米国株、新興国株など国別のアロケーションも問題にしなければいけないでしょう。

■現金
現金は株価のように下落する心配が無いという点では一番安心な資産です。言い換えれば損しない投資先なのです。

しかし現金には大きなハンデがあります。それは近年のような低金利時代においては銀行預金をしていても殆ど利子がつかないのでお金が全く増えないという問題です。つまり資産を現金にしておくということは他人に劣後することがほぼ運命づけられた投資判断だということなのです。

みんなが投資してリッチになってゆく過程で自分の資産だけ増えないのであればリタイアしたときに手元に残る資金は周囲に比べて自分だけ少なくなってしまいます。安心、安全を重視するあまり自分だけ富の蓄積が遅れる……これが現金の最大のリスクです。そして冒頭で述べた投資初心者はマーケット・タイミングを気にしすぎるという指摘は、この富の蓄積の遅延という意味においてゆゆしい問題です。

■債券
債券には通常償還期限があります。そしてその償還期限が来たら、大部分の債券は額面(ふつう100)で現金が戻って来ます。この額面償還という仕組みのせいで債券は安全だと考えられているのですが、それでも価格は変動しますし、たとえば債券を出している企業が倒産したというような場合は現金が戻ってこないケースも稀にあります。

値動きの面で株式と大きく違う点としては株の場合、その企業の業績がぐんぐん伸びれば株価は青天井で上昇しますが、債券価格はそのような動きはしないということです。別の表現をすれば「成長を買う」という側面は債券には無いのです。

するとポートフォリオの中身を債券中心で固めてしまうと、先にみた現金のケースと同様、富の蓄積のペースが他人より劣後するという問題に直面します。

最近は「格差問題」というようなことをよく耳にしますが、格差の問題の大部分は富の蓄積のペースに端を発しているので、自分だけ劣後することが無いよう、注意を払う必要があると思います。もっと言えば現金や債券の比率が高過ぎるポートフォリオは良くないのです。

あなたが定年を迎えるような年齢であれば貯蓄を取り崩しながら生活する必要があるので大失敗は出来ません。その場合、つまりあなたが老齢の場合はポートフォリオに占める債券や現金の比率は少し高くても構いません。

しかしあなたが若くてまだリタイアまでに20~30年もあるのなら現金や債券の多すぎるポートフォリオはダメなポートフォリオだと思います。

■株式
株式にはいろいろな種類があります。急成長している株はグロース株と言います。グロース株は値上がりも華々しい代り急落することもしばしばです。とてもリスキーな投資対象という事が出来るでしょう。

これに対し大手製薬会社のような株は値動きに乏しく退屈な場合が多いです。そのような銘柄はディフェンシブ株と言われます。つまり不況に対して防御的なのです。その代り急成長することも余り期待できません。

株式投資の極意はグロース株のようなリスキーだけど値上がりしやすい投資対象とディフェンシブ株のような比較的低リスクの株を併せ持つことで自分のポートフォリオの全体としてのリスクをちょうど良い湯加減にすることにあるのです。これが分散投資であり投資初心者が特に習得すべきスキルです。

銘柄は沢山の種類を持てば持つほど分散効果を得やすいです。すると分散という観点からは1銘柄より2銘柄の方が分散が効くし、2銘柄より3銘柄の方が分散されていると言えます。

しかしそうやって銘柄をどんどん追加してゆくと、さらに1銘柄加えることによる分散効果は漸減してゆきます。ある時点から、銘柄を加えてもポートフォリオ管理の手間ばかりが増え、リスク軽減には殆ど貢献しない局面がきます。

その場合、一気に分散効果を手に入れる方法として全米株式に投資するようなETFをひとつあなたのポートフォリオに組み込み、それにあなたの全投資資産の半分とか3分の2を割り当てることでしっかりとした核(コア)を形成するというやり方があります。これであなたのポートフォリオが他人よりも劣後するリスクは大幅に軽減することができるのです。

そして余った資金でグロース株などの個別株投資をすれば良いと思います。このようなやり方をコア・サテライト戦略と呼びます。

きちんとしたコア・サテライト戦略を採ることは、マーケット・タイミングに気を揉むよりもはるかに重要です。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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