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【外国株式】ドナルド・トランプ政権の保護貿易主義が米国株に与える影響

2017/01/24

1月20日(金)に大統領就任式が終わり、ドナルド・トランプ政権が正式にスタートしました。

就任演説でトランプ大統領は経済政策に特に力を入れると述べました。また何事においても「アメリカ優先」という発想をすると宣言しました。

経済政策との絡みで言えば、これは保護貿易主義的な政策が打ち出される予兆だと思います。

そこで今日は、もし貿易戦争が起きた場合、それが米国株に与える影響について考えたいと思います。

最初に起こりそうなこと

トランプ政権が貿易ならびに経済面で最初に実施しそうなことは、すでにオバマ政権が行ってきた、特定の品目に関するダンピング課税の強化です。ちなみにオバマ政権はソーラーパネル、冷間圧延鋼板、タイヤに関税を課しました。

トランプ大統領は「中国製品には45%の、メキシコ製品には35%の関税をかける」と主張していますが、このように、ある国からの輸入品の全てに一律の関税をかけることは、実現可能性は低いと思います。

ただ限定的にダンピング課税を強化した場合でも、中国から報復措置が繰り出されることは覚悟しておいた方が良いと思います。なぜなら中国としては「あなたがやるなら、こちらもやりますよ」ということを示し、貿易戦争のエスカレートを思いとどまらせる必要があるからです。

下院共和党の税制改革案

下院共和党は去年の6月に「Better Way」と題した税制改革案を発表しました。そこでは国境税調整という考え方が示されました。

国境税調整とは、輸入品に20%の関税をかけると同時に輸出品は法人税の対象外とする措置を指します。

これにより向こう10年間で1兆ドルもの増収が期待されます。下院共和党は、この1兆ドルの増収を、所得税率の簡素化ならびに低減の原資としたい考えです。

トランプ案

これに対しトランプは「国境税調整は複雑すぎる」としています。その代りにトランプが提唱しているのは中国製品に45%の関税を、メキシコ製品に35%の関税をかけることです。

トランプ案は、議会での正式な立法過程を経ずとも、大統領の一存で、大統領令(EO)を発令することで出来ます。

その法的根拠となっているのは1974年通商法(The Trade Act of 1974)と呼ばれるものです。

そこではまずアメリカ合衆国通商代表部(USTR)が他国のやり方を不公正だと認定します。通商代表部代表はロバート・ライトハイザーで、対中強硬派として知られています。

中国側に出来る事

一方、中国は真正面からアメリカと事を構えると自らを傷つけることになるので、個々の局面で、「みせしめ」的な報復措置を講ずると思われます。

具体的にはアップルやスターバックスなどの、誰でも知っているブランドの不買運動をすることが考えられます。

実際、中国の政府系メディア、グローバル・タイムズは、「アップル、ボーイング、スターバックスをターゲットにすることもありうる」と名指しで牽制しています。

ボーイング

ボーイング(ティッカーシンボル:BA)は「中国は2035年までに1兆ドル、6,840機の旅客機が必要になるだろう」と試算しています。大型旅客機の市場は欧州のエアバスとボーイングの寡占となっているので、そのうちのかなりの部分はボーイングが納入することになると思われます。

中国政府はボーイングを業者から外すことで「みせしめ」することが出来ます。同社は去年だけで126億ドルを中国から売り上げています。

同社の製品が一時的にせよ中国から締め出された場合、シアトルなどにある同社の工場で働く15万人の職が脅かされることになります。

アップル

アップル(ティッカーシンボル:AAPL)にとって中国は最も重要な海外市場です。去年、アップルは中国から464億ドルを売上ており、これは同社の売上高の22%に相当します。

しかしそれと並び重要な点は、iPhoneの多くは中国で組み立てられているという点でしょう。またiPhoneの部品には中国で作られている基幹部品もあります。つまり中国政府がそれらの部品のアップルへの提供にストップをかければ、生産計画が大幅に狂ってしまうのです。

また下院共和党の国境税調整が可決されると、iPhoneの米国での販売価格が上昇し、消費者の手に届かなくなるリスクもあります。

スターバックス

スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)は現在、中国で、自社店舗とパートナー店舗を、合わせて2,382店舗展開しています。これは同社の総店舗数25,085店舗の9.5% に相当します。

スターバックスは中国市場でアグレッシブな拡張計画を持っており、2021年までに5,000店舗に持って行く計画です。

もし不買運動が起きると、投資家は動揺すると思います。

クウァルコム

クウァルコム(ティッカーシンボル:QCOM)の場合、売上高の半分以上が中国となっています。

同社の半導体は中国のスマートフォン・メーカーの多くに採用されています。このためクウァルコムの製品を締め出すと中国メーカーも困ります。しかし、クウァルコムの製品の多くは、代替製品が存在するので、制裁は可能だと思います。

ゼネラル・モーターズ

ゼネラル・モーターズ(ティッカーシンボル:GM)は中国にSAIC-GM、SAIC-GM Wuling、FAW-GMという三つのジョイント・ベンチャーを持っています。

中国市場は年間2,510万台が売れている世界最大の自動車市場であり、しかも2020年までに3,000万台市場になると言われています。

この巨大市場におけるゼネラル・モーターズのマーケットシェアは14.9%で、第一位です。

GMのJVは全部で5万8千人の従業員を雇用しており、ディーラー網は4,500を数えます。2015年の出荷台数は373万台でした。

同社の場合、「ビュイック」ブランドが広く中国人に認知されており、GMが高級車でドイツ車などと互角で戦える市場となっています。このためGMは中国市場ではSUVならびに高級車のセグメントに特に力を入れています。

まとめ

今後、トランプ政権の保護貿易主義は上記の銘柄に暗い影を落とす可能性があります。従って米中関係の動向からは目が離せません。


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