ドナルド・トランプの当選で加速が予想される米国経済
11月8日に実施された米国大統領選挙で共和党のドナルド・トランプが勝ちました。
トランプは手始めに税制改革に取り組むことをシグナルしています。トランプ案が法案として成立すれば、5兆ドルもの減税になると言われています。
これとは別にトランプは1兆ドルに及ぶインフラストラクチャ投資を打ち出しています。
これらの政策は、米国のGDP成長率を加速させる効果があると言われています。
また減税は連邦政府の歳入の減少を招き、信用格付けの下落懸念も手伝って米国財務省証券(=アメリカの国債)の価格は下落、金利は上昇する雲行きになっています。実際、7月を境に米国の10年債利回りは上昇に転じています。
米国10年債利回り(%、セントルイスFRBのデータからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
このようなことを背景に、とりわけトランプが勝利した11月第2週以降、米国の株式市場では人気のセクターが、それまでの公共株、消費安定株、ネット株などから、工業株、素材株、金融株などへと移りつつあります。
そこで今日は、景気とセクター・ローテーションの概念について説明したいと思います。
セクターの人気は景気と金利に影響される
株式市場でどのセクターが人気になるか? ということは、1)景気の強弱と、2)金利の方向によって大きく影響されることが知られています。
それを図示すると、下のようになります。
景気が弱い時
景気が弱いとき、投資家は「守り」に入ります。その場合、電力会社に代表される公共株は、業績が景気に左右されませんし、配当があるので、ダウンサイド・リスクが少ないと判断されます。だから公共株が人気になります。
同様に食品、飲料、日用品などの消費安定株も不況に強いと考えられていることから、そういう局面では人気化しやすいです。
デフレ局面で好まれる株
ヘルスケアに対する需要は、景気とは全く無関係です。従ってヘルスケア株も選好されます。とりわけデフレの局面では、バイオテクノロジー株のような、製品の価格設定が景気と無関係なセクターが投資家から歓迎されます。
景気が少し上向けば
次に景気が最悪期から徐々に回復に向かう局面では、ハイテク株などに物色の矛先が向かいます。ここ数年の米国の株式市場は、ちょうどそのような局面だったと言えます。
まだ景気全体としては弱々しいため、経済そのものが成長していなくても自分のちからで独自に成長を出してゆける、ネット企業などの成長ストーリーが好まれるわけです。
デフレからインフレに変わる時
さらに景気が強くなると、今度はデフレではなくインフレの圧力がかかりはじめます。そのような局面ではコモディティ価格の上昇により恩恵をこうむるような、素材、工業株などが人気化します。
また景気が強くなる局面では、長短金利差が拡大する傾向が見られ、それは銀行の収益拡大に寄与します。だからこの局面では金融セクターも人気化します。
消費循環株とは、自動車のような高額商品、ジュエリーのような高級品などを指します。景気が良くなっている局面で、そういう商売は繁盛します。
いま投資家がすべきこと
現在の米国株が置かれた状況は、ハイテク株などの人気に陰りが出始め、それよりも画面の少し右側、すなわち金融株、消費循環株、工業株、エネルギー株、素材株などへ物色が移っている局面です。
ですから皆さんがポートフォリオを組み立てる場合、なるべくこれから人気化すると思われるこれらのセクターの銘柄を沢山組み入れることを心掛けてください。