ETFとは?
ETFとはエクスチェンジ・トレーデッド・ファンズの略です。エクスチェンジとは取引所を指します。つまり「取引所で取引されるファンド」という意味です。
もう少し言葉を足して説明すれば、それは投資信託の一種類であり、ちょうど株を売り買いするのと同じ感覚で、きわめてカンタンに市場経由で購入できるファンドということになります。
ETFは大ヒット商品
ETFは大ヒット商品です。下は米国の投資会社協会(Investment Company Institute)(ICI)が公表しているETFの純資産残高です。2014年末の時点でETFの純資産残高は1.97兆ドル(約244兆円)でした。
米国のETFの純資産残高(10億ドル、ICIのデータからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
米国で最初のETFが認可されたのは1993年のことですから、わずか20年余りで急成長したことがわかります。
運用会社はETFの人気を見て、次々に新しいETFを出しました。このため2014年末の時点で1,411銘柄のETFが存在します。
ETFは米国で最も普及しています。世界のETFの純資産残高の実に73%はアメリカの運用会社となっています。
世界のETF市場(%、2014年、ICIのデータをもとにコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
ETFは費用比率が低い
ETFが人気になっている理由は、まず費用比率が低い点にあると思います。
下は世界で最も純資産の大きいトップ10のETFのリストですが、右端の費用比率に注目してください。たとえば米国で最もポピュラーなETFであるSPDR S&P500 ETFの費用比率は0.0945%です。
名称(コード) |
純資産(10億ドル) |
費用比率(%) |
---|---|---|
SPDR S&P500 ETF (SPY) |
177.7 |
0.0945 |
iシェアーズ・コアS&P500 ETF (IVV) |
66.07 |
0.07 |
iシェアーズ MSCIEAFE ETF (EFA) |
55.96 |
0.32 |
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF (VTI) |
54.28 |
0.05 |
バンガード S&P500 ETF (VOO) |
39.98 |
0.05 |
パワーシェアーズ QQQ信託シリーズ1 (QQQ) |
36.72 |
0.2 |
iシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF (AGG) |
32.54 |
0.08 |
バンガードFTSE エマージング・マーケッツETF(VWO) |
31.79 |
0.15 |
SPDR ゴールドシェア(GLD) |
28.34 |
0.4 |
バンガード米国トータル債券市場 ETF (BND) |
28.11 |
0.07 |
- (各社ウェブサイトからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
ETFは購入タイミングが自由
つぎにETFは株式とおなじように注文を入れることが出来るので、買いたいときに、いま取引所で付いている値段で購入することができます。つまり購入タイミングが自由ということです。
これに対して従来の投資信託は一日に一回だけ基準価格が発表されます。その関係で、その値段でしか買えません。
さらに問題なのは伝統的な投資信託の場合、注文を入れた時点では、自分が幾らの値段でそれを購入しようとしているのかを厳密に知ることはできないという点です。
これは少し細かい説明を要すると思います。
いま、ある日、相場を眺めていたらマーケットが急騰したとします。その場合、もし前日の基準価格でその投信を購入することができれば、これほど美味しい話はありません。でもそれが許されると、既にその投信を購入し、保有し続けてきた投資家に不公平になってしまいます。
そうした配慮から、日中に投資信託の買い注文を入れた投資家は、その日の引け後に計算される、急騰後の値段でしかそのファンドを買うことができないというルールになっています。その場合、日中は自分が買い付ける際の基準価格が未だわからないうちから注文をいれることになります。そのためこれを「ブラインド(盲目)方式」と呼びます。
ブラインド方式では、相場が急騰したからといって慌てて注文を入れても、マーケットが上がった後の値段でしか買えないのです。
逆に相場急落局面では、慌てて投信を解約しても、その日のマーケットが下がった後の値段でしか逃げることは出来ません。
これと対照的にETFはそれが上場されている株式市場が開いている限り、すぐに約定できるのです。
ETFは銘柄リストが毎日公表されている
次にETFはポートフォリオを構成している銘柄リスト(=これのことをポートフォリオ・コンポジション・ファイルといいます)が毎日公表されています。そのことは自分が今、保有しているポートフォリオの内訳を、デイリー・ベースで正確に知ることができることを意味します。
もちろん従来の投資信託もタイムリーな運用状況の開示には力を入れていますが、デイリー・ベースでポートフォリオの構成を公表するところまでは行っていません。
ETFは運用の段階でキャピタル・ゲインが発生しない
最後のポイントとして、従来の投信ではポートフォリオの入れ替えをした場合、キャピタル・ゲインが発生し、それは課税の対象となります。
このため投信の投資家はキャピタル・ゲインに対する税金を払う目的で、しぶしぶそのファンドを一部解約し、納税するということが起きます。
すると運用会社はそのような解約に備えてキャッシュ・ポジションを少し高めに維持する必要が出ます。これはファンドのパフォーマンスが劣後する原因になる可能性があります。
これに対してETFはポートフォリオの維持を外部化している関係で、運用の段階でキャピタル・ゲインが発生しない仕組みになっています。(ただし皆さんがETFに投資し、それが利喰いになった場合のキャピタル・ゲインは、また別です)
この点に関しては次回に説明したいと思います。