11/25-12/2の香港市場は調整しました。新型コロナの新たな変異種「オミクロン株」に対する警戒に加え、米国のテーパリング加速懸念も加わり、リスク回避の売りが強まりました。ほぼ全面安のなか、半導体関連銘柄や海運株は逆行高となりました。
今回は、オミクロン株に関する情報をまとめたうえで、経済や相場への影響を探ってみたいと思います。また、オミクロン株の影響で株価パフォーマンスに顕著な差がでたカジノ株と海運株の動向も、確認してみたいと思います。
図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
注:12/2(木)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。
図表2 香港市場の業種別指数騰落率(12/2(木)までの騰落率によります)
ハンセン総合指数業種別騰落率 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
ハンセン総合 | -3.7% | -3.2% | -8.6% |
エネルギー | -0.7% | -4.4% | -2.8% |
工業 | -1.3% | 2.1% | -12.4% |
公益 | -1.5% | -0.5% | -5.3% |
電気通信 | -2.0% | -3.4% | -4.0% |
金融 | -2.7% | -3.7% | -5.0% |
一般消費財 | -3.1% | 1.9% | -5.0% |
コングロマリット | -4.3% | -4.5% | -16.1% |
生活必需品 | -4.6% | -2.7% | -4.5% |
不動産 | -4.8% | -3.1% | -14.5% |
情報テクノロジー | -4.9% | -6.4% | -10.2% |
ヘルスケア | -5.0% | -2.5% | -15.1% |
素材 | -5.6% | -4.7% | -18.1% |
注:業種別騰落率はハンセン総合指数が母集団です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(12/2(木)までの騰落率によります)
ハンセン指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
02331 | 李寧 [リー・ニン] | 2.8% | 8.9% | -11.0% | 大手スポーツ用品メーカー。大手証券会社が2022年の販売拡大を予想し、「買い」を推奨したことが、買い手掛かりとなったもよう。 |
00968 | 信義光能[シンイー・ソーラー] | 2.6% | -7.2% | -22.9% | 太陽光発電用ガラスメーカー。ファンド系の大株主が持ち株比率を引き上げた。 |
00939 | 中国建設銀行 [チャイナ・コンストラクション] | 1.7% | -0.8% | -7.1% | 中国4大銀行の一角。住宅ローンの回復期待で買われた。現地紙によると、主要都市の不動産販売が足元で回復している。その理由として、銀行による住宅ローンの審査期間が短縮されていることを指摘した。 |
01398 | 中国工商銀行 | 1.2% | -0.2% | -2.1% | 中国4大銀行の一角。住宅ローンの回復期待で買われた。現地紙によると、主要都市の不動産販売が足元で回復している。その理由として、銀行による住宅ローンの審査期間が短縮されていることを指摘した。 |
00669 | 創科実業[テクトロニック・インダストリーズ] | 1.2% | 4.0% | -2.3% | 大手電動工具メーカー。大手証券会社が投資判断「買い」でカバーを開始。需要が堅調のなか、同社は一段のシェア拡大ができると分析した。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
09988 | アリババ・グループ・ホールディング | -9.5% | -24.1% | -28.3% | EC大手。市場予想を下回った決算を発表後、下落基調が続いている。大手証券会社による目標株価の引き下げも嫌気された。 |
03690 | Meituan | -9.6% | -8.6% | -2.3% | フードデリバリー最大手。7-9月期決算が市場予想を下回り、売られた。中国当局が配車各社に対し、運転手への社会保険拡充や合理的な手数料の採用を求めたことも売り材料となった。 |
06862 | Haidilao International Holdi | -10.9% | -16.7% | -46.4% | 火鍋チェーン最大手。オミクロン株に関するニュースが外出控えにつながるとの懸念で売られた。 |
00027 | 銀河娯楽 [ギャラクシー・エンターテインメント] | -13.9% | 2.4% | -17.3% | カジノ大手。オミクロン株の感染拡大に対する警戒、VIP市場の収縮懸念で売られた。(詳細は本文の「今回のトピックス」をご参照願います) |
01928 | 金沙中国 [サンズ・チャイナ] | -18.7% | -2.3% | -33.7% | カジノ大手。オミクロン株の感染拡大に対する警戒、VIP市場の収縮懸念で売られた。(詳細は本文の「今回のトピックス」をご参照願います) |
ハンセンテック指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
01347 | 華虹半導体[フアホン・セミコンダクター] | 6.8% | 27.3% | 14.7% | 半導体受託生産大手。世界半導体市場統計(WSTS)が2022年の半導体市場予測を引き上げたことが好感された。証券会社による目標株価の引き上げも買い手掛かりとなった。 |
06690 | 海爾智家[ハイアールスマートホーム] | 4.7% | 10.6% | -3.5% | 大手家電メーカー。同社のA株がFTSE中国A50指数に組み入れられることとなった。(12/17引け後から) |
00522 | ASMパシフィック・テクノロジー(ASMPT) | 3.6% | 2.5% | -9.0% | 半導体装置メーカー。世界半導体市場統計(WSTS)が2022年の半導体市場予測を引き上げたことが好感された。 |
00981 | 中芯国際集成電路製造 [SMIC] | 0.9% | -0.2% | -7.9% | 半導体受託生産大手。世界半導体市場統計(WSTS)が2022年の半導体市場予測を引き上げたことが好感された。 |
00992 | 聯想集団 [レノボ・グループ] | 0.8% | -6.6% | -4.8% | パソコン大手。調査会社の英Canalysが、西ヨーロッパのPC市場はサプライチェーンの混乱にもかかわらず、2022年も安定成長を維持するだろうと予測した。西ヨーロッパでの3Q販売実績は、レノボが2位だった。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
01024 | Kuaishou Technology | -13.9% | -15.8% | -4.6% | ショート動画大手。メタバース関連株が調整するなか、動画配信も全般的にさえなかった。中国版Tiktok「抖音」やビリビリからの競争激化懸念も売り材料となったもよう。 |
00909 | Ming Yuan Cloud Group Holdin | -14.0% | -14.9% | -27.2% | 不動産会社向けソフトウェア大手。競争激化懸念でソフトウェアが全般的に軟調だった。株価の異常変動について、同社は原因不明としたうえで、開示情報もないとの公告を出した。(SBI証券取り扱いなし) |
00285 | 比亜迪電子(国際) [BYDエレクトリック] | -14.8% | 19.8% | -17.0% | BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。中国当局が電子タバコ産業に関する意見公募を開始。規制強化をめぐる不透明感で電子タバコ関連が全般的に軟調。iPhone需要が年末前に鈍化すると、アップルがサプライヤーに伝えたことも売り材料となった。 |
02013 | Weimob Inc | -15.7% | -28.6% | -29.7% | ソフトウェア会社。中小企業向けのクラウドサービスを提供。テンセントのメッセージアプリ「微信」がアリババの「淘宝」向けにサービスを開放することは、同社にネガティブに働くとの懸念で売られた。同社は「微信」に依存しがら成長してきた。 |
09626 | ビリビリ* | -15.8% | -21.0% | -27.2% | 動画配信大手。市場予想を下回った決算を発表後、下落基調が続いている。大手証券会社による目標株価の引き下げも響いた。(SBI証券取扱なし。米国上場のビリビリ ADR(BILI)は取扱銘柄です。) |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。ビリビリ(09626)はSBI証券では取り扱っておりません。株価騰落率は香港上場のビリビリ(09626)ですが、リンク先は米国上場のビリビリ ADR(BILI)となっております。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。
今週の中国株市況
香港のハンセン指数とハンセンテック指数は週間で(12/2まで)、それぞれ3.8%下落、5.4%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は、9.6%下落(同)しました。新型コロナの新たな変異種「オミクロン株」に対する警戒に加え、米国のテーパリング加速懸念もリスク回避の売りを誘いました。11月29日はナイジェリアから香港に入国した男性が隔離期間中にオミクロン株に感染していたことが明らかになり、売り材料となりました。なお、現時点(12/2)で、香港の市中感染は確認されていません。
主要指数の中でもナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の下落が目立ちました。オミクロン株やテーパリング加速懸念に加え、ADRの上場廃止リスクも売り要因となりました。米証券取引委員会(SEC)が12/2に、外国企業に米当局の会計監査受け入れを義務付ける新規則について、導入に向けた最終的な計画を発表しました。中国企業が米当局の会計監査を受け入れない場合、米国から上場廃止となる恐れがあります。それを嫌気し、中国ADRは12/2にそろって下落しました。
ただ、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数の下落率をみると、12/2の下落率は、オミクロン株やテーパリング加速懸念を受け、下げた時の下落率よりは小さいです。ADRの上場廃止リスクは全く新しい材料ではないことに加え、仮に上場廃止となった場合は“すぐに”というより「3年以内」となっていることが背景です。また、多くの中国企業が上場廃止リスクに備え、香港市場に重複上場している(重複上場を進めている)ことも下支え要因となっています。
なお、11/25-12/2の香港市場は業種別では、素材と情報テクノロジーが大幅安となりました。素材は、オミクロン株の感染拡大懸念が響き、景気動向にもっとも敏感な銅の関連株(コウセイコパー(00358)やツージンマイニン(02899)など)が下げを主導しました。
情報テクノロジーは、主に以下の要因で下落しました。
1)米国のテーパリング加速懸念。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が11/30に、大規模な債券買い入れプログラムの縮小(テーパリング)加速を検討すべきだと述べた。それを受け、米ナスダック指数が大幅調整し、香港市場もリスク回避の売りが広がった。
2)規制強化懸念。一部の海外メディアが、中国当局は「変動持ち分事業体(VIE)」の仕組みを用いた企業の海外上場を禁止する方針だ、と報じた。しかし、中国の証券当局は12/1に、“VIEの海外上場禁止”報道を否定した。
3)アリババ(09988)やビリビリ(09626)が市場予想を下回る決算を発表した後、証券会社が両社の目標株価を引き下げた。1)と2)の要因で地合いが悪いなか、アリババとビリビリはいずれも大幅続落となった。
なお、情報テクノロジーのうち、華虹半導体(01347)やASMパシフィク(00522)など半導体関連株は逆行高となりました。世界半導体市場統計(WSTS)が半導体市場の予測を引き上げたことが好感されました。WSTSは、2022年の世界半導体市場予測について、6月時点の5,734億ドルから6,014億ドルに引き上げました。公表文でWSTSは、「足下は一部の電子機器生産が弱含んでいるものの、エンドマーケットの需要は引き続き強いとの見方から特段の反動減を想定せず、2022年は更なる成長が予測されるものと思われる。」としました。華虹半導体については、一部証券会社が目標株価を引き上げたことも買い手掛かりとなりました。
今回のトピックス
今回は、新型コロナの新たな変異種「オミクロン株」の影響を確認してみたいと思います。オミクロン株については、南アフリカでの急速な感染拡大や変異の数の大きさから、世界各国が素早く対応し、渡航制限を強化しました。各国の対応の速さはデルタ株の経験が生かされたものとみられます。各国の渡航制限やオミクロン株に関する情報不足も相まって、世界株式市場はリスク回避の動きが強まりました。
以下は、時系列でオミクロン株に関するまとめたものです。(12/2時点。各種報道をもとにSBI証券が作成したものです。)
1)11/9:南アフリカでオミクロン株の最初の感染例が確認された。
2)11/9-11/30:南アフリカの新型コロナの感染者数は11月9日は245人だったが、11月30日には4,373人に達した。南アフリカの経済・政治の中心地であるハウテン州では、11月30日に3,140人以上の新型コロナ感染者が報告されたが、専門家はそのうち9割がオミクロン株によるものと推定している。なお、南アフリカのワクチン接種率は約2割となっている。
3)11/23:オミクロン株の変異部分は50カ所以上あることが明らかになった(変異の数が多いだけで必ずしもより強力なウイルスになるとは限らないと指摘する専門家もいる)。
4)11/26:世界保健機関(WHO)はオミクロン株を“懸念される変異株”に指定した。同じく“懸念される変異株”に指定されているのは、デルタ株(2020年10月発見)に加え、ベータ株(2020年5月発見)、アルファ株(2020年9月発見)、ガンマ株(2020年11月発見)となっている。そのうち、デルタ株が世界的大流行をもたらしていることから、オミクロン株が「デルタ株以上」となるかどうかが注目されている。
5)ワクチンや経口薬の有効性について、各社およびWHOの発表は以下の通りだ。
11/29:ファイザーのCEOは、「現在のワクチンの効果がもし低下するのであれば、新たなワクチンを作らなくてはならない」と発言した。
11/30:モデルナのCEOは、「デルタ株と同じレベルの効果が得られることはないと思う」とコメントした。
11/30:ビオンテックのCEOは、ファイザーと共同開発のワクチンがオミクロン株に対しても、重症化を防ぐ効果がある可能性が高いとの見方を示した。
11/30:メルクは、開発中の新型コロナ経口治療薬はいかなる新変異株に対しても同様の活性を持つと発表した。
12/1:WHOの主任科学者は、オミクロン株による重症化はワクチンで防げる公算が大きいとの見方を示した。
オミクロン株の感染力やワクチン・経口薬の有効性については、まだはっきりしない部分もあるため、今後の動向に注意が必要です。一方、4)でわかるように、最初に新型コロナが感染急拡大した2020年3月以降、デルタ株を含めて新しい変異株が次々と出現しました。しかし、振り返ってみると、世界経済や株式市場への影響は薄れています。新たな変異株が従来に比べてたとえ感染力は強くても致死率は低下していること、およびワクチン接種が進んでいることが背景にあると思います。また、各国の経済対策に加え、変異種が出てもロックダウンを導入しない国が増えていることも、経済回復を支えています。
このような状況が続けば、世界経済や中国の輸出、および株式市場に対する影響は限定的にとどまる可能性が高いです。他方、一部の産業は打撃を受ける可能性があります。たとえば、人々が外出を控えるようになれば、外食や百貨店などは影響を受けると予想されます。また渡航制限が長引く場合、観光や航空は回復がさらに遅れる可能性が高いとみられます。
11/25-12/2の業種別パフォーマンスでは、その懸念を織り込む動きが顕著でした。オミクロン株の報道を受け、エアチャイナ(00753)を筆頭に航空株が大幅安となったほか、金沙中国(01928)や銀河娯楽(00027)などカジノ関連銘柄も、急反落しました。カジノ関連銘柄は、“ジャンケット”事業を手掛ける太陽城集団(01383)の周会長が中国地方政府に逮捕されたことも響きました。上客をカジノに案内する“ジャンケット”事業は、マカオのVIP市場の約7割を占めています。最大手の太陽城集団はVIP市場の約3割を占めます。よって周会長の拘束で、VIP市場の収縮が警戒されました。そのタイミングが、オミクロン株や渡航制限のニュースと重なったこともあり、投資家心理は一気に悲観に傾きました。
オミクロン株に関してまだ情報が少ないため警戒が必要ですが、VIP市場に対する懸念はやや行き過ぎだと思います。その理由として、まず、マカオのカジノ市場におけるVIP市場の比率低下が挙げられます。VIP市場の比率は、2011年は73%と高かったですが、その後は年々低下しています。直近ではコロナ前の2019年が46%、2020年は43%に低下しました。一方、大衆市場は、2011年は18%に過ぎませんでしたが、2019年は41%、2020年は45%に上昇しました。主に習近平・国家主席が進めてきた腐敗撲滅が影響しているとみられます。中国本土で腐敗撲滅が実施されてから、マカオのカジノ大手はVIP市場への依存を減らすため、大衆市場を強化してきました。
2番目の理由は、カジノ収入(売上高)でなく利益でみた場合、VIP市場の比率はさらに低いです。たとえば、コロナ前の2019年、VIP市場はカジノ収入の半分弱を占めますが、EBITDA(支払利息・税金・減価償却費控除前利益)ベースでは15%に過ぎません。VIP市場より大衆市場のほうが利益率が高いからです。したがって、カジノ会社の利益を考える際、VIP市場よりも大衆市場の回復状況がより重要になってきます。
大衆市場の回復状況は、マカオ政府が毎月公表している訪問者数やカジノ収入が参考になります。オミクロン株が相場に衝撃を与える前まで、マカオの訪問者数やカジノ収入は回復基調にありました。背景には、マカオと中国本土の間で隔離検疫を免除し、往来を再開したからです。直近発表された11月のカジノ収入は、前年同月比55%増でした。今後は、その回復基調が続くかどうかが注目されます。
なお、中国本土やマカオでは今のところ(12/2時点)、オミクロン株の感染事例は報告されていません。しかし、中国当局が新型コロナに対して“ゼロ容認”姿勢を貫いていることを考えると、もしマカオで感染が確認された際、中国当局はマカオとの往来を規制する可能性があります。したがって、オミクロン株に対する警戒が和らぐまで、カジノ関連銘柄は軟調が続くかもしれません。他方、オミクロン株が「デルタ以上」にならない可能性も十分あり、「リベンジ旅行銘柄」としてカジノ関連銘柄は再び注目される可能性があります。
オミクロン株への警戒でほぼ全面安となっているなか、株価上昇が顕著だったのは、コスコシッピング(01919)を筆頭とした海運株でした。上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)が11月26日に3週連続で上昇したほか、オミクロン株の影響で需給ひっ迫が一段と強まる可能性が出てきたからです。
実際、新型コロナの感染拡大以降、海運の需給ひっ迫は続いています。主な要因は、予想外の需要急回復に対し、湾岸処理能力は逆に低下したからです。処理能力の低下は、海運取扱量で世界最大の中国と2位の米国でともに発生しています。中国の場合、新型コロナに対し、“ゼロ容認”姿勢を貫いていることが影響しています。たとえば、中国の湾岸で新規感染者が確認されると、港や港をつなぐ高速道路・高速鉄道は一時すべて閉鎖されます。オミクロン株の感染が世界で広まると、中国はさらに厳しい措置を導入される可能性があります。米国の場合は、湾岸労働者の不足や湾岸・陸運の混雑が原因です。米国政府は問題解消に向け、対策を打ち出していますが、オミクロン株の影響で感染が再拡大すると、解決にさらなる時間を要する可能性があります。
足元の情報を確認するかぎり、オミクロン株が「デルタ株以上」になる可能性は低いと思います。一方、「デルタ株以上」にならなくても、オミクロン株に対する警戒が続く場合、海運の需給ひっ迫の改善はさらに時間を要する可能性があります。ただ、中国の海運株は上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)の動きに大きく左右されやすく、SCFIの変動には気を配る必要があります。SCFIのデータは下記の公式サイトでご確認いただけます。
図表4 上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)の推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5 言及銘柄に関するデータ
銘柄コード | 銘柄 | 株価 12/2 (香港ドル) |
52週高値 (香港ドル) |
52週安値 (香港ドル) |
来期予想 増収率 (%) |
来期予想 増益率 (%) |
01347 | 華虹半導体[フアホン・セミコンダクター] | 51.80 | 64.65 | 36.30 | 30.14% | 26.90% |
00981 | 中芯国際集成電路製造 [SMIC] | 22.05 | 31.95 | 18.08 | 16.96% | -14.21% |
01919 | 中遠海運控股[コスコ・シッピング・ホールディング] | 13.28 | 17.48 | 5.07 | -16.38% | -43.13% |
02866 | 中遠海運発展[コスコ・シッピング・デベロップ] | 1.45 | 1.94 | 1.12 | * | * |
00316 | 東方海外国際 [オリエント・オーバーシーズ] | 150.30 | 180.50 | 43.69 | -11.44% | -30.12% |
00027 | 銀河娯楽 [ギャラクシー・エンターテインメント] | 42.60 | 80.30 | 38.30 | 85.14% | 741.09% |
01928 | 金沙中国 [サンズ・チャイナ] | 17.28 | 40.55 | 14.64 | 85.75% | 黒字転換 |
注:予想PER、予想増収率、予想増益率はBloomberg集計のコンセンサスによります。なお、中遠海運発展(02866)はアナリストがカバーしておらず、コンセンサス予想がありません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。