

1Q(1-3月)決算速報(現地5/7引け後発表)
量子コンピュータ開発会社。メリーランド大とデューク大のコア技術をベースに、イオントラップ型量子コンピュータ(量子情報の格納にイオントラップを利用する方式)を開発します。イオントラップ方式は超伝導方式、光量子方式とともに量子ゲート方式(もう1つの分類は量子アニーリング方式)の一つで、量子コンピュータの基本演算を最も高い精度で行うことができる計算方式であり、将来的に汎用的なコンピュータに発展する可能性が高いとされます。顧客は主にクラウドサービスを介して利用します。
決算算発表後の時間外取引(日本時間9:00時点):29.75ドル(+2.09%)
売上高:757万ドル、前年同期比-0.2%(予想751万ドル)△市場予想とほぼ一致した
調整後EPS:-0.14ドル、前年同期は-0.19ドル(予想-0.14ドル)△市場予想と一致した
調整後EBITDA:-3,580万ドル、前年同期は-2,699万ドル(予想-3,220万ドル)×市場予想より不調だった
2Q会社見通し
売上高見通し(内部/外部成長問わず):1,600~1,800万ドル(予想1,693万ドル)△市場予想とほぼ一致した
通期会社見通し
売上高見通し(内部/外部成長問わず):7,500~9,500万ドル(予想8,542万ドル)△市場予想とほぼ一致した
売上高は市場予想とほぼ一致、決算発表では特段のサプライズはありませんでした
引け後の時間外取引のチャート

決算のポイント
◆財務動向
現金/現金同等物合計額:約1.6億ドル、前年同期は0.54億ドル(予想:1.18億ドル)〇市場予想を上回った
短期投資は4.29億ドル、前年同期は2.86億ドル
長期投資は1.09億ドル、前年同期は0.23億ドル
◆ハイライト
*EPBとの2,200万ドルの契約を締結。初の商用量子コンピューティングおよびネットワーキングハブを提供する
Lightsynq Technologiesの買収計画を発表。同社はハーバード大学の量子コンピューティング研究チームで、量子ネットワークの開発に貢献すると期待
DARPA(米国防高等研究計画局:Defense Advanced Research Projects Agency)の量子ベンチマーク企業のファースト・ステージに選定された
*EPB:米テネシー州のエネルギー・通信事業者。先進的光ファイバーネットワークを有する。2022年、米国初の商業利用可能な量子ネットワークであるEPB Quantum NetworkSMを設立、量子技術の商業化に取組んでいる。
経営陣の主なコメント
日本の産業総合研究所(AIST)傘下のG-QuATと覚書を締結、当社の量子コンピューティング投入を目指す。また、豊田通商と韓国のIntellianと宇宙における量子ネットワークの実現に向けたパートナーシップに関する覚書も締結した
エヌビディアのGTCでは、アストラゼネカ(*英製薬大手)社とアンシス社との協力関係をプレゼンテーションし、両社のエンジニアリング設計ソフトウェアを用いてシミュレーション時間の12%短縮デモンストレーションを行った
米テネシー州のEPBとのシステム提供契約は誇るべき案件だ。同社は超高速光ファイバー網で知られており、すでに量子ネットワーク構築にかかっている。量子ネットワークと量子コンピューティングを備えた初の商用顧客となった
1Qの営業費用と経費総額は8,320万ドル、前年同期の6,050万ドルから38%増加した。ただし、年間計画の範囲内。当社は研究開発に多額の投資を行い、研究開発人員を増強している
決算を受けたマーケットの反応
量子コンピューティングは、量子力学の法則を用いることで、従来型コンピュータにとって容易ではない複雑な問題を解決することが期待される技術です。組合せ最適化など特定の得意分野があり、一般的には従来型コンピュータを置き換えることは期待されていません。
同社は依然として開発先行の企業で利益は出ておりません。しかし数多の企業の中から、DARPA(米国防高等研究計画局:Defense Advanced Research Projects Agency)の量子ベンチマーク企業のファースト・ステージに選定されたり、EPBとの契約締結などの実績を誇り、実用化への期待が高まります。ただ技術力の見極めと事業化の進捗状況の確認は必須と言えそうです。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:40.60ドル
同、アナリスト・レーティング:5段階評価の4.29
同、相関チャート上位の同業はシースリーAI(AI)、アブポイント(AVPT)、オラクル(ORCL)
最低投資金額:4,200円(5/7終値、1ドル143円換算)