アーム(ARM)見通し慎重も死角はなし!?
2025/5/8
投資情報部 谷 健一郎


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4Q(1-3月期)決算速報(現地5/7引け後発表)
ソフトバンクグループ傘下で半導体設計の世界最大手企業。スマートフォン向け半導体設計では9割超のシェアを占めます。同社の売上高は主に半導体企業にライセンスを供与した際のライセンス収入、チップ出荷の際のロイヤルティー収入で構成されます。省電力設計に強みを有する同社。AI活用のデータセンター向けなど、大量の電力を消費するチップ用にシェアが伸長しつつあります。今後は自動運転向けなど自動車用市場の拡大が期待されます。
決算発表後の時間外取引(日本時間9:00時点):109.75ドル(-11.63%)
売上高:12.41億ドル、前年同期比+34%(予想12.33億ドル)〇市場予想を上回った
調整後EPS:0.55ドル、前年同期は0.36ドル(予想0.53ドル)〇市場予想を上回った
1Q会社見通し
売上高見通し:10.0~11.0億ドル(予想11.0億ドル)×中間値が市場予想をわずかに下回った
調整後EPS見通し:0.30~0.38ドル(予想0.42ドル)×市場予想を下回った
1Qの会社見通しが市場予想に届かず、引け後の取引で株価は急落しました
引け後の時間外取引のチャート

決算のポイント
◆事業動向
ライセンス及びその他売上高:6.34億ドル、前年同期比+53%(予想6.62億ドル)×市場予想を下回った
ロイヤルティ売上高:6.07億ドル、前年同期比+18%(予想5.68億ドル)〇市場予想を上回った
調整後売上総利益:12.21億ドル、前年同期比+35%(予想12.04億ドル)〇市場予想を上回った
調整後粗利益率:98.4%(予想97.8%)〇市場予想を上回った
米国の関税政策は当社に直接的な影響は及ばないとみている、デバイス企業へ影響しよう
1990年以降出荷されたアームベースの半導体は3,100億個に達した
4Q、エヌビディアのブラックウェルがフル稼働に入った。エッジ型のAIデバイスをターゲットとした当社プラットフォームArm v9を発表した
アーム・コンピュート・サブシステム (CSS)[注1]で設計されたチップでは自動車向けに初のライセンス契約を締結した
注1:アーム・コンピュート・サブシステム (CSS)は複数のアームIP(回路設計データ)を事前統合したサポート・システム
経営陣の主なコメント
4Qは電力効率の高いAIコンピューティング需要に支えられ、記録的な四半期だった。売上高は初めて10億ドルを突破。ロイヤルティ収入は過去最高の6.07億ドルに達した
主要な業種全てにおいてロイヤルティ収入が増加、当社はAIクラウド導入のファースト・チョイスとして注目されている。Arm v9 [注2] 設計のCPU搭載製品が好調、スマホ向けのロイヤルティ収入は前年比30%増だった
ライセンス収入は、マレーシア政府との複数年にわたるAIパートナーシップを含む新規契約の牽引により、過去最高の6.34億ドルに達した
今年はハイパースケーラー[注3]の新規サーバーチップの最大50%がArmベースになると予想している。エヌビディアのブラックウェルはフル生産中。グーグルの「Axion Arm v9」は現在、上位100社の顧客のうち40社が使用。マイクロソフトの「Cobalt 100」はシーメンスやスノーフレイク、同社サービスのTeamsやCopilotなど主要なワークロードをサポートしている。また、過去2年の新しいAWS CPU容量の50%以上がArmベースの「Graviton」によって駆動されている
自動車分野では2桁成長を維持している。IVI(In-Vehicle Infotainment:車載情報機器)とADAS(先進運転支援システム)のシェアは拡大しており、この状況は今後も続くとみている
[注2]Arm v9:2021年、10年ぶりに刷新した次世代型の基本アーキテクチャ。利益率が高い。
[注3]ハイパースケーラー:アマゾン、マイクロソフト、グーグルなど主要クラウド事業社。膨大なインフラ設備を有しクラウドサービスを展開する
決算を受けたマーケットの反応
カンファレンスコールでは4Qの実績について、ロイヤルティー収入、ライセンス収入とも過去最高を更新。事業の好調さをアピールしています。しかし、同社は「予想は控えめに」を地で行く会社。1Qの「慎重」な見通しは市場予想に届かず、引け後の取引で株価は急落しました。
今期からエヌビディアのブラックウェルがフル生産に入りロイヤルティー収入の拡大が見込めます。加えてハイパースケーラーによる、半導体内製化のトレンドはArm v9アーキテクチャの採用により、アームには追い風と言えそうです。加えて自動車用に車載向け(IVI)と自動運転向け(FSD)の拡大が見込める同社。死角はなさそうです。
Bloombergがまとめたアナリストの目標株価平均:150.94ドル
同、アナリスト・レーティング:5段階評価の3.96
同、相関チャート上位の同業はNXPセミコンダクターズ(NXPI)、インフィニオンテクノロジーズ(IFX)、STマイクロエレクトロニクス(STMPA)
最低投資金額:17,800円(5/7終値、1ドル143円換算)
インフィニオンテクノロジーズ(IFX)、STマイクロエレクトロニクス(STMPA)は欧州市場上場で当社非取扱銘柄
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